第30話 霊魂王の末路
温泉旅館の部屋では,花子は,強烈な悪寒を感じていた。花子と葉子の前に,ある霊魂が出現した。花子だけはその霊魂を目視できた。
花子「えっ?この悪寒は何?こんな強烈な悪寒を放つ霊魂,逢ったことがないわ」
葉子「わ,わたしでも,感じるわ。もう,オシッコちびりそう!!」
花子と葉子の前に,出現した霊魂は,念話が使えた。
霊魂『花子,わしが誰だかわかるか?』
花子は,頭の中に言葉が飛び込んできてびっくりした。
花子「え?言葉が飛び込んで来た??」
霊魂『これは,念話と呼ぶそうだ。やっと,わしにも使うことができた。わしは,花子の体に触って,死亡したものたち1000人が合体した霊魂だ。花子の腹に侵入して,突かれ叩かれてて,ぎゅうぎゅうに圧縮されて合体した霊魂だ。合体霊魂,名付けて『霊魂王』だ』
いくら強烈な悪寒を放っていようと,『霊魂王』と自分を称するのは,あまりに仰々しいと花子は思った。
霊魂王『それにだ。お前たちをガムテームで拘束した男たちは,わしが殺して,やつらの霊魂に地獄の苦しみを与えている。どうだ? わしは強いだろう?』
当時,花子は,意識が失っていたが,膣の中に拷問を受けたかのようにテレビリモコンを突っ込まれて,何度も何度も膣の奥に叩きつけられたことは,体が覚えている。
花子「『霊魂王』?そんなことより,強烈な冷気を放つのはやめてくれる?悪寒が走ってしょうがないわ」
霊魂王『まだ,この膨大な力を制御できない。でも,花子の腹の中なら,少しは抑えることができるかもしれん』
ヒューーーン!
霊魂王は,花子の腹の中に潜り込んだ。それにともなって,多少は冷気が抑えられた感じだ。
花子「少しは冷気が少なくなったようね。でも,霊に耐性のない普通の人間なら吐き気を催すでしょう」
霊魂王『そんなことはどうでもいい。花子に呪詛を施したのは誰だ!我が恨み,花子は一番最後に処罰する。まずは,呪詛をほどこしたやつが先だ』
花子「え?あなた,千雪やマリアに勝てる自信あるの?」
霊魂王『俺は,霊魂王だ!!この世で,わしよりも強い霊魂など存在せん。ガツハハハハ』
霊魂王は,絶大なパワーを得て有頂天になっていた。花子としても,霊魂王の霊体のパワーなら,千雪人形やマリアの霊体に勝てるだろうと思った。
その夜,旅館の周囲を散策することにした。夜なら,他の旅行客に会う可能性は低いし,男どもに襲われる事態になっても,霊魂王がやっつけてくれる。
葉子「お姉さん,見て,満月がきれいよ。それに,霊魂王という護衛もいるなんて,わたしたち,めっちゃついていますね」
花子「霊魂王は,わたしに復讐したいのよ。千雪やマリアを殺したら,その次は,わたしが殺されるのよ。なんとかしてよ」
葉子「でも,ほんとうに千雪を殺せるのかしらね。いくら霊魂王でも,ちょっとね,,,?」
花子「でも,霊魂王を信じましょう」
そんな会話をしながら,満月の元,旅館に隣接した緑豊かな庭園を散策した。
すると,先方から3人ずれの旅行客が歩いてきた。年老いた老人夫婦と若い女性だ。その女性は,少しお腹が膨らんでいた。妊婦だった。
葉子「老夫婦と妊婦さんが,こっちに来るわ。ちょっとまずいんじゃない?冷気の影響があるかもよ」
花子「そうね,,,引き返しましょう」
だが,その判断は遅かった。
最初に冷気に反応したのは,老爺だった。
老爺「なんだ?この冷気は?うっ,気持ち悪い。ゲーー」
その老人は,その場で,せっかく食べたご馳走を吐いてしまた。そのすぐ後,老婆も同じく吐いてしまい,その場に倒れた。
老夫婦連れの妊婦は冷静だった。老爺や老婆を介護するのは後回しにて,この怪異現象の原因を探った。その妊婦は,まだ若く16歳だった。老爺たちは,この妊婦をフララと呼んでいた。
フララは,すぐに元凶を発見した。なんと,ZZZカップもある40kgもの胸をした女性のお腹から,禍々しい冷気を放っていた。
フララは,花子に駆け寄った。
フララ「あなた!お腹,悪者!敵!殺す!!」
フララは,覚えている月本語の単語を並べた。でも,それで花子に通じた。花子は直感で悟った。この少女,超やばい霊能力者だと。でも,逆にいい機会だと思った。
花子「霊魂王!この少女,やばいわ!!あなたをやっつけるつもりよ。こんなところで負けるようなら千雪やマリアに勝てないわよ。あなたの力を示しなさい!!」
霊魂王『ハハハ,任せておけ。わしの強大なパワーを見せてやろう』
ゴオオオーー!
花子の子宮から霊魂王が飛びだしてきた。彼は,最大の冷気,恐怖,畏怖などの負のエネルギーを放出した。
その負のエネルギーは,霊にある程度耐性を持っている葉子をしても,その場で転倒させて,嘔吐をさせるに十分だった。倒れている老爺と老婆は,すでに意識を失った。逆にそれが幸いした。それ以上,負のエネルギーの影響を受けなかった。
花子も,気分が悪くなった。その負のエネルギーの放射方向は,フララに向かっていたので,花子や葉子への影響はさほど強くなかった。
フララは,その負のエネルギーをまともに浴びても,なんら変化はなかった。
フララはニヤッと笑った。魔界語で叫んだ。
フララ『フフフ,中途半端な攻撃だこと。では,死になさい!! 『霊体攻撃派』!!』
バシューーー!!
『霊綾正典』から発射された霊体への攻撃派は,霊魂王に直撃した。所詮,つけやいばで合体した霊魂だ。この攻撃により,1000体の霊体がバラバラに飛び散った。
なんとも,はかない合体期間だった。だが,合体したことにより,バラバラになった霊体でも,霊的パワー,つまり,魂力は多少はアップした。それらは,個々に,フララの霊体に体当たり攻撃をしかけた。それしかできなかった。
いくら強力な霊体でも,1000体が体当たりすれば,無傷ではすまない,,,はずだった。
ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!ーーーーーーー
バラバラになった1000体の霊体が,フララの霊体に向かって,体当たり攻撃をしたけた。だが,かれらの攻撃は,まったく無駄な攻撃だった。フララの霊体は,それらを,カエルがハエを食べるが如く,毎年6月中旬に,小笠原島でイエシロアリの羽アリが大量発生しても,それらがことごとくオオヒキガエルに食べられてしまうが如く,1000体の霊体は『霊綾正典』によってなんなく吸収されてしまい,霊体の持つ霊魂エネルギー,つまり魂力を吸収されてしまった。
魂力を失った霊体は,肉体がミイラになるのと同じ意味を持つ。つまり霊体のカスと同じようなものになってしまう。
霊体が見える花子は,合体霊魂がバラバラにされたことに驚愕した。しかし,それ以上に,1000体の霊魂による体当たり攻撃をまったく意に返さずに,1000体の霊魂を消滅させたことに腰が抜かすほど驚いた。
花子「あっ,あっ,あっ,あっ,あなたは誰?霊体を消滅させた?あなたは,悪魔ですか?!」
フララは,独り言を言った。
『力のない合体霊体がいるものね。でも,この月本国で霊体攻撃をすると,必要以上に魂力を消費してしまったわ。幸い,おつりができるほど,やつらの霊体から魂力を補充できたらよかったわ』
フララは,腰を抜かしたZZZカップの花子を見た。
フララ「悪魔? そう,,,悪魔。 あなたのおっぱい,昔のわたしと同じ。あなたを殺す,,,しない,,,感謝して」
花子は,この悪魔のような能力者の名前を知りたかった。
花子「あ,あの,,,あなた,あなた様,悪魔大魔女様! お名前を聞かせてください」
フララ「わたし?そうね,,,雪生,,,いや,フララかな? フララ,うん,フララ」
フララは,そう言って,倒れている老婆と老爺のもとにいき,霊力の腕を伸ばして2名を小脇に抱きかかえる感じで,持ち上げて,来た道を引き返していった。花子は,老婆と老爺が空中に浮遊しているようにしか見えなかった。
花子は,フララの後ろ姿を見た。そのオーラを見ると,明らかに人間ではない。マリアとも違う。でも,千雪やマリアに匹敵するパワーを感じた。
花子『見つけた!!とうとう見つけた!!千雪やマリヤに対抗できる人を。いや,悪魔大魔女を!!』
このように独り言を言って,花子は,フララに庇護されて,幸せなバラ色の未来を夢見た。
ーーー
ーーー
花子は,葉子の回復を待って,部屋に戻った。花子は,旅館の職員に賄賂を渡してフララの泊まっている部屋を特定し,フララの宿泊費や飲食代,すべてを花子がカバーするようにし,かつ,老婆と老爺の見舞いという名目で,フルーツ詰め合わせや,豪華な食事を提供していった。
そして,なんとか花子と葉子は,フララの部屋に顔を出すことに成功した。
花子「昨日は,大変失礼しましたーー!!」
花子と葉子は,土下座した。そして,スペアの銀行のキャッシュカードを差し出した。
花子「どうぞ,このキャッシュカードを自由にお使いください。5億円は入っています。このお金の名義は,親戚の名前なので,警察にも簡単にはばれないと思います。これは,昨日のお詫びということで納めください」
フララは,まだキャッシュカードの使い方は,わからない。でも,言葉の半分程度は理解できたので,お金を引き出せるものだと理解できた。
花子は,さらにキャッシュカードの暗証番号を伝えた。
花子「暗証番号は,xyzx です。1回に50万円まで引き落とせます。毎日,50万円引き落とせば,1ヶ月で1500万円,引き落とすことができます」
フララも,金の力に弱かった。事実,この国に来て,お金に窮していた。
フララ「ありがとう」
フララは,キャッシュカードを受けとった。
この行為によって,花子と葉子は,フララの庇護下に入ったと確信した。花子は,自分の置かれた状況,千雪に対しておこなった行動や,千雪側の魔法使いの情報,さらに,自分の体に施されている位置定位魔法陣,呪詛,反転呪詛などについても,詳しく説明していった。
3時間もかかってしまった。だが,千雪関連の情報なので,すべてをしっかりと聞いた。
フララは,ところどころ,月本語が理解できなかったので,何度も聞き直した。そのため,必要以上に時間がかかった。
花子の言う千雪という人物が,自分の体を作ったあの千雪だとやっと理解した。今の千雪は,霊体が損傷して,魔界に治療に行っていることも知った。ならば,やはり,自分の子供の生んでから,千雪の元に戻るのがいいと判断した。
フララ「あなたの体の魔法陣,呪詛は,消える,,,できる。皮膚,,やぶる。しかし,回復魔法で元通り。その後,わたしと一緒」
その言葉を聞いて,花子と葉子は,涙が出るほど嬉しかった。
花子や葉子には,実のところ,帰るべき家はもうない!!
千雪のもとで,ラブドールのビジネスを成功させたのはいいけれど,その顧客全員が死亡した。1000人が死亡したのだ。絶対に,警察の追っ手が来るに決まっている。α隊やSARTが襲ってくるかもしれない。千雪たちは,花子や葉子が犯人だと言うに決まっている。だから,千雪のもとに帰れば,犯人として突き出されて,強制的に死刑にされて人生の終わりだ。花子や葉子に反論の余地はない。
でも,でも,やっと,やっと,身を寄せることができる場所を得たのだ!!!
事件は,まだ,明るみになっていないはずだと思い,葉子は,一足先にコンビニを巡って,現金を引き下ろした。キャッシュカードを使うと,足がつくが,今ならまだ指名手配はされていないはずだ。
その後,花子と葉子に植え付けられた魔法陣や呪詛は,すべてフララの手によって,強制的に破壊された。背中の皮と胸が破壊された。
フララは,回復魔法は得意ではないが,最低限の回復魔法はできる。ぎりぎり止血して,背中の皮膚を回復させ,花子と葉子の胸も,AAカップの胸に回復させた。
その後,老爺と老婆は体調を取り戻したので,フララは,彼らの家に,花子と葉子を引き連れて戻ることにした。そこで,子供の出産のため,これまで同様に静かに暮らすことにした。
老爺と老爺の家は,深い山奥の1軒家だった。そこで,フララ,老爺,老婆,花子,葉子の5名の共同生活が始まった。
花子と葉子は,千雪人形とマリアの追ってから,やっと逃ることができた。
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