第28話 千雪,魔界に治療に行く

 音も無く,一瞬で2名の女性が姿を現した。マリアの転移魔法だ。マリアは千幸を連れていた。その場所は,花子のアパートの玄関前だ。香奈子が,その場所の座標点を測定して連絡した。


 千幸「あっ,もう着いたの? マリアさんの転移ってすごいわね。天才ね」

 マリア「お世辞はいいわよ。霊媒師の家って」

 千幸「向かいの喫茶店で,香奈子が待っているわ」

 マリア「香奈子は後回しでいいわ。座標点を測定してもらったので,彼女は充分に役立ったわ。じゃあ,いきましょうか」


 マリアと千幸は,アパートのリビングルームに入った。そのとき,血の臭いが漂ってきた。


 千幸「何,これ,血の海じゃないの。汚い。靴が汚れるわ」

 マリア「あとで,火炎魔法で,全部焼き払いましょう」


 その部屋で,マリアと千幸は,2人の女性を見つけた。花子と葉子だ。


 マリア「あなたは,花子さんですか?そしてあなたはその助手の葉子さんですね?」


 花子と葉子は,マリアたちが千雪の仲間だとは,まだ認識していなかった。 


 花子「ええ,そうですけど?あなた方は?」

 マリア「答える必要はありません」


 マリアは,花子と葉子を千雪御殿の監禁室に転送させた。


 その後,監視カメラの本体を爆裂魔法で破壊して,リビングルームの部屋を火炎魔法で焼却してから,凍結魔法で消火させた。


 千幸「マリアさんの魔法って,美しいわ。うらやましい」

 マリア「わたしの年になれば,茜さんも,これくらい使えるわよ」

 千幸「そうだと嬉しいんだけど。でも今回は,千雪様は,危機一髪だったそうね」

 マリア「そうそう,その辺の経緯,まだ,教えてもらっていないのよ」

 千幸「さっさと帰って,詳しく聞きましょう」

 マリア「それよりも,香奈子と合流して,ちょっとお茶しましょう」


 マリアは,簡単な仕事が終わったので,向かいの喫茶店に行って,香奈子と合流することにした。その際,マリアが一番気にしていることを千幸に聞くことにした。



 ー 喫茶店 ー


 マリアは,わざと千幸と向かって座った。


 マリアは,茜の霊体が支配したゴーレムの千幸を,以前から気になっていた。どうみても,月本国の人間の霊体ではないからだ。マリアは,オーラを見ることはできないが,千幸の体で,魔法を上手に使いこなすなど,月本国の人間の霊体が即席でできることではない。


 マリア「茜さん,ちょっと,あなたのこと,もっと詳しく知りたいの。あなたの家族のこと,教えてもらえる?」

 千幸「えーー?でも,秘密でもなんでもないですから,いいですよ。わたし,捨て子だったんですって。もう,12年も前かな?8歳頃だったと思うんだけど,それ以前の記憶がないんです。わたしが倒れていたところに,石ころがあって,頭を石にぶつけたんじゃないかって,育ててくれた家の人は言ってました。それに,その時,わたし,変な言葉を話していたらしいんです。千雪様やサルベラ様たちが話す言葉,なんか聞き覚えがあって,魔界語って,言ってましたっけ。わたし,それ,聞き取れるんです」


 マリアは,目から,涙が流れて来た。


 12年間,一時も忘れたことのなった娘。龍子の姉。そして,魔界から転移して来た時,見失った長女。それが,目の前にいる。茜の体は,毎日,千雪に抱かれて妊娠している体で,日々,巨乳,巨尻に変化中だが,それは,間違いなく,マリアが生んだ子供だ。


 マリアは,涙を拭って,香奈子に席を外してもらうように依頼した。香奈子は,わけがわからなかったが席を外した。


 香奈子が席を外したのを確認して,マリアも自分のことを少し話した。


 マリア「わたしは,女の子を2人産んだの。12年前,当時,長女8歳,次女4歳,そしてわたしは,決死の覚悟で,ある人の助けを借りて,魔界からこの月本国に次元転移してきたの。でも,恐れていたことが起きたわ。無事に月本国に転移してきたけど,3人とも離ればなれになってしまったの。幸い,次女は,すぐに見つかったけど,でも,長女は,どうしても発見できなかった。それから,,,12年。1日も長女のこと,忘れたことはなかった」


 マリアは,こぼす涙の量がさらに多くなった。ここまで話してきて,千幸は,つまり,茜の霊体は,目の前にいるマリアが,母親であることを理解した。


 千幸「マリアさん,,,は,お母さんなの?」

 

 マリアは,激しく頭を上下に振った。そして,返答した。


 マリア「そうよ。あなたのお母さんよ」


 千幸は,決して嬉しいとは思わなかった。それよりも,当時,どうしてわたしを見つけてくれなかったと,恨む気持ちのほうが大きかった。


 千幸「お母さんが,こんなに近いところにいたのですね,,,嬉しい気持ちもあるけど,,,それ以上に恨む気持ちもあります。12年前の次元転移したとき,どうして,わたしを発見できなかったのですか?どうして,もっと,もっと,探してくれなかったのですか!」


 千幸は,高ぶる怒りを少し抑えた。コーヒーを1口飲んでから,言葉を続けた。


 千幸「いまさら,お母さんを非難しても始まらないのはわかっています。わたしは,もう,過去のことはもういいです。生みのお母さんが見つかったのは嬉しいけど,でも,今,わたしにとって大事なのは,これからの人生です」

 マリア「まだ,千雪様には言っていないけど,わたしたちは,千雪様の力を借りて,祖国に,つまり,魔界に帰りたいと思っています。茜の人生にも大きく影響します。でも,今は,少しずつでいいから,一緒にいる時間を見つけてちょうだい。少しでも,12年間の空白を埋めたいの」

 千幸「・・・,そうですね。祖国のこと,少しずつ,教えてもらうのもいいかもしれません」


 香奈子がしびれを切らして,マリアと千幸のもとに戻ってきた。


 香奈子「あなたたち,もういいからしら?コーヒー2杯分の時間は,もう使ったと思うのだけど?」

 マリア「ごめん,ごめん。もういいわ。ありがとう。戻りましょう」


 マリアたちは,店を出て,人目のつかない場所に移動して,転移で千雪邸に戻った。

 


 ー 千雪の部屋 ー


 千雪の部屋では,サルベラが,千雪人形の対応をしていた。


 千雪人形は,紙に自分の身に起こったことを書いていった。サルベラは,それを見て,何が起こったのかを把握した。


 マリアたちが戻ってきて,花子と葉子を捕獲できたという報告を受けたので,サルベラは,カロックや,マリア,千幸,香奈子,アカリ,龍子のいわゆる千雪軍団の幹部連中に,千雪が受けた被害状況を詳しく説明することにした。メーララは,教団にいて忙しいそうなので,のちほど報告することにした。


 サルベラ「この千雪人形の中に,千雪の霊体が閉じ込められてしまいました。今では,千雪の霊体を移動させることもできません。でも,この千雪人形の中には,霊力で満ちています。その霊力を使ってこの人形を動かすことができるそうです。しかし,声をあげることはまだできません。声帯をまだ作っていないからです。


 さて,このような状況になった原因ですが,それは,霊媒師の花子は,霊体,もしくは,霊魂のカスを捕まえることができるという,特殊能力に依存するものです。


 花子は,もともとは,千雪人形の中に閉じ込められた霊魂のカスを,千雪様の体内に流し込むという約束で,千雪様に,千雪人形とキスをしてもらったそうです。


 霊魂のカスが,千雪様の体内に流れ込めば,その霊魂のカスは,一瞬で霊力によって,消滅させることができるそうです。


 さて,そこからです。千雪様の行動も,そして花子の行動も,ともに約束と違うことをしたのです」


 千幸「え? 何々? サスペンスみたくなってきた。ワクワク」

 マリア「ほんとね。最近のテレビドラマは面白くないから,今回の千雪様の危機一髪事件は,いい気分転換になるわ。サルベラさん,面白く説明してください」


 マリアとしても,時には,サスペンスを楽しんで,気分展開をしたい。


 龍子「あっ,千雪人形が,ノートになんか書いてる。えーーと,『人の不幸を,ドラマ代わりに楽しむものではありません』だって」


 ハハハー


 ここにいる誰もが笑った。まったく,緊張のかけらもない。

 

 サルベラ「話を続けます。まず,千雪の行動からです。千雪は,人形にキスしたときに,思ったそうです。わざわざ霊魂のカスを自分の体内に入れてもらう必要はないんじゃないかと。


 つまり,霊力を人形の中に入れれば,それで霊魂のカスを消滅させることができるはずだと。


 それで,キスと同時に霊力を大量に人形の中に流し込みました。つまり,千雪の体にある霊力のほぼすべてを千雪人形に移し替えたと言ってもいいそうです」


 カロック「へーーー」

 マリア「そんなこと,できるんですね。魔力を人形に移すことなんて,わたしにはできないわ。ちょっとだけなら,なんとかできるかもしれないけど」

 龍子「わたしは,ちょっとでもできないかな」


 サルベラ「わたしも魔力を人形に移すなんてできないわ。でも,千雪は,霊力を人形に移すことに成功しました。さて,話を続けましょう。


 次に,花子の行動です。花子は,霊魂のカスのことは目もくれず,千雪の霊体を掴みました。そして,グイッと霊体を引き剥がそうとしました。


 しかし,掴んだのは,霊体の一部分でした。その一部の霊体を,無理矢理剥がそうとしたのです。そうしたら,なんと,掴んだ霊体の部分だけがちぎれてしまって,霊体が分離してしまいました」


 千幸「霊体が分離?」

 カロック「なんとも,これはこれは」

 アカリ「それって,どういうこと?」


 などなど,よく意味が理解できない状況だった。


 香奈子「あのーー,質問です。霊体がちぎれたって,どの割合でちぎれたのですか?それに,霊体って,よくわかんないのですけど」


 この質問は,もっともだ。実は,だれもよくわかっていない。


 サルベラ「千雪人形の中に取り込まれたのは,もとの大きさの4割程度のようです。霊体の性質については,よくわかっていません。神の領域ですから。


 でも,電話でメーララを捕まえて,聞いたところ,その4割の霊体があれば,時間さえかければ,もとにもどるそうです。自己修復機能がもともとあるそうです」



 「へーー!!」


 この場の全員が,そんなものかと感嘆した。


 サルベラ「つまり,千雪人形は,千雪の一部の霊体を核にして,そして霊力を肉体の変わりにした生命体,といっていいでしょう。


 もともと千雪は,霊力で自分のコピー体を造る能力があります。でも,今回は,この千雪人形の外殻があるので,声帯を造るだけで事足ります。ちぎれた霊体でも,それくらいはできると思います。いや,それをしてもらわないと困ります」


 龍子「この人形って,もしかしたら,未来から来たっていう,あのホーカのことなの?今,この千雪人形が,いずれはホーカになるの?」


 この質問に,千幸が返答した。


 千幸「千雪様から聞いたことがあります。たぶん,そうだと思います。『もうすぐホーカに会えるから寂しくしない』って,千雪様に言ったそうです」

 サルベラ「それって,ピロートークで?」


 千幸は,顔を赤くして下を向いた。


 龍子「ふーん。じゃあさ,あの霊媒師は,ある意味では,ホーカの生みの親なのかもしれないね」

 サルベラ「そうとも言えますね。千雪が目覚めたら,花子に罰を与えるのでしょうけど,もしかしたら,殺さないかもしれませんね」

 龍子「じゃあ,私も自分の分体,創ってもらおうかな?」

 マリア「肉体はどうするのよ?」

 龍子「魔力でできないの??」

 マリア「魔力だと,飛びやすい性質があるから,長期間肉体を維持させるには不向きよ」

 龍子「私も今から霊力の修行しようかな。それよりも,千雪様から霊力を分けてもらおうかな?」

 マリア「ますます,千雪様の言いなりにならないとダメになってしまうわね」


 サルベラは,マリアたちの話を遮った。


 サルベラ「話を続けます。いま,千雪人形の中には,ちぎれた千雪の霊体の一部と,その霊体をつかんでいる霊媒師由来の特別な手のようなものがある状態です。そのため,その霊体は,移動することができません。ですが,それが返っていい結果を生んだようです」


 龍子「よくわかんないでーす」


 サルベラ「そうでしょうね。私もサルベラから説明を受けたのですが,理解するのに苦労しました。たとえ話をしましょうか。ここに,あんこの入ったもちがあるとします。半分だけ,グイッとにぎって引きちぎるとどうなりますか?」

 龍子「はーい。先生,わかった」


 サルベラ「はい,龍子さん,答えてください」

 龍子「それはね。グイッと握ったほうでは,あんこはもちにつつまれて出てこないけど,引きちぎられた方は,あんこが出てしまいます」


 龍子「よくできました。正解です。千雪人形の霊体は,霊体としては,その量が少ないのですけど,傷がふさがった状態で引きちぎられたのです。ですから,意識がある状態で人形の中に入りました。そしてすぐに霊力を使うことができました。


 一方,引きちぎられた千雪お姉さまの霊体は,霊体の破損がひどくて,意識を失いました。霊体の修復については,私たちにはまったく知識がありません。いつ,お姉さまが意識を回復するのかもわかりません。その点については,あとで詳しくメーララやピアロビ顧問のドバイスを受けたいと思っています」


 マリア「なるほどね。千雪人形は,意識もあるし,霊力も使える状態だったのね。だから,千雪さんを犯そうとしたスケベなやつを瞬殺するのも容易だったわけね。でも,あの花子の部屋には,血の海だったけど死体はなかったですよ」

 サルベラ「それはわたしたちがグズグズして,千雪人形からの命令をすぐに実行しなかったからでしょう。すでに死体はだれかの手によって片付けられただけです」


 龍子「あっ。また分体がノートに何か書いている。えーーと,『今度,私の命令を今回みたくグズグズして実行に移さなかったら,重い罰を受けてもらいます』だって」


 サルベラは,千雪人形に向かって弁明した。


 サルベラ「千雪,それは無理ってもんですよ。『すぐに霊媒師の花子ところにいって,彼女と助手の葉子を捕まえてこい』だなんて。無茶ですよ。テレビドラマでクライマックスの部分を見ていたんですから!それに,マリアも龍子の世話で忙しかったし。カロックも,千幸に魔法を教える口実で,千幸のおっぱい触ってセクハラしていたし」


 この話を聞いて,アカリがカロックを睨んだ。カロックは,あっちの方角を見て知らんぷりしていた。千幸は下を向いていた。魔法を教えてもらう以上,ゴーレムの体を触られるくらい,どうってことはない。もっとも,触られると,実際の人間の体に触られるよりも何倍も感じてしまうのだが,,,


 サルベラは,千雪人形に向かって聞いた。 


 サルベラ「千雪人形の中で,霊力はあとどれくらい保つの?」


 千雪人形は,その答えを紙に書いた。


 龍子「分体さんの書いた内容読むね。『普通の生活を送るだけなら3ヶ月くらい。霊力を何かに使うと,1-2週間』だってさ」

 サルベラ「じゃあ,千雪本体の霊体が回復して目覚めるまでは,霊力を消費できないわね」


 その後,メーララがやって来た。


 サルベラ「状況は電話で説明した通りよ。千雪本体の方は,千雪の霊体がちぎれて,霊体の殻が塞がっていないのよ。どうすればいい?」

 メーララ「困ったわね。魔界に連れていくしかないと思うわ」


 メーララは,そっけない返事をした。実は,メーララには,千雪の霊体を治療できる能力がある。せっかくメーララの能力を花子に一時的に与えて,千雪にギャフンと言わせることができたのだ。おいそれと治療などする訳がない。


 一方,千幸は,α隊隊長経由でピアロビ顧問とコンタクトをとることに成功し,ラインの映像チャットを起動した。


 千幸「サルベラさん,ピアロビ顧問とラインで映像チャットできます。どうぞ話てください」

 サルベラ「ピアロビ顧問,急に連絡を取らせていただいて申し訳ありません。千雪が,意識不明の重体に陥ったのです。そこで,ピアロビ顧問なら,何かお知恵をお借りできないかと思いまして,連絡した次第です。


 今,ここにいる千雪人形には,霊媒師によって引きちぎられた千雪の霊体の一部分が収まっています。幸い,引きちぎられた方の霊体は意識があります。ですが,千雪本体の霊体は,破損がひどく,千雪は意識がもどりません。何か,アドバイスをいただければと思います。


 千雪人形は,まだ喋れませんので,ノートに書いた内容を,私が読み上げることで,ピアロビ顧問と千雪人形がスムーズにコミュニケーションがとれるようにします。よろしくおねがいします」


 ピアロビ顧問「なるほど,霊媒師は,そんな大それたことをしたのか。メーララでもお手上げなら,そうだな,,,魔界の精神科の女医なら,なにか知っているかもしれん」


 サルベラは,千雪人形が書いているノートを読み上げた。


 千雪人形「魔界に行く方法を教えてください」

 ピアロビ顧問「そろそろ,うちの娘が魔界に帰る予定だ。一緒に連れて行ってもらえればいい」

 千雪人形「本体は,意識がありません。だれかが付きそう必要があります。そうすると3名になります」

 ピアロビ顧問「それは無理だ。せいぜい2名が限界だ」

 千雪人形「ここから,直接,魔界の尊師のところに転移することは可能でしょうか。あとのことは,尊師にお願いすればいいと思うのですが」

 ピアロビ顧問「あとで,娘に確認するが,確か,尊師の転移座標点に到着するはずだ。だから,それは,大丈夫だろう」

 千雪人形「魔界往復の費用は,いくらくらいになりますか?」

 ピアロビ顧問「そうだな,,,10億円くらいかな?」

 千雪人形「了解です」

 ピアロビ顧問「では,あとで,銀行口座を連絡する。それと,千雪さんのいる転送座標点を連絡してくれ。そこに娘を転送する。魔界に帰る日については,あとで連絡する」

 千雪人形「ありがとうございます」

 ピアロビ顧問「いやいやこちらこそ。では,失礼する」



 ピアロビ顧問との会話が終わったあと,引き続き,サルベラは,千雪人形が書いているノートを読み上げた。


 千雪人形「アカリは,ピアロビ顧問の口座に,10億円振り込込む手配をしてちょうだい。それと,リンリン。お金がいろいろと必要になってくるわ。うちの巨乳たちをどんどん出演させてアダルトビデオを作っていきなさい」


 リンリン「えーー?」

 千雪人形「巨乳のトップバッターとして,茜をアダルトビデオに出演させます。一番ボインだし,本番もしてもらいます!」

  

 その話を聞いて,茜の霊体が支配した千幸が叫んだ。


 千幸「えーー!!わたし,巨乳になったのは,千雪様に抱かれるためであって,アダルトビデオに出演するためじゃありません!」

 千雪人形「こっそりカロックと浮気してるの,知っているのよ! わたしに近づくの禁止です」


 千幸は,千雪人形に嫌われてしまった。千幸とカロックが,ときどき浮気をしているのを密告したのはアカリだ。


 超嫉妬深いアカリは,カロックが千幸とあやしい関係であることにとっくに気づいていた。でも,直接,カロックに言うことはできない。嫉妬深いと思われて捨てられてしまったら,もう終わりだ。そこで,証拠写真をこっそり撮って,千雪に時々見せていた。


 千雪は,霊体が正常なときは,なんら気にしていなかった。それに,見せられた写真は,服の上からおっぱいを触っている程度のものだ。


 しかし,実際は,カロックと千幸は,野外で魔法の実習と称して,野外で逢瀬を重ねていた。


 さすがに,千雪邸内では,カロックは,服の上からしか千幸を触らなかった。


 千雪人形は,正常な千雪とは異なり,さらに寛容さが欠落していた。嫉妬深さが顕著に現れた。その反動で,千雪人形は,茜を愛でる対象から外した。


 この爆弾発言のあと,やっと,千雪人形は,会議を終了させた。


 千雪人形「解散。ただし,マリアは,残ってちょうだい,相談あるから」


 千雪人形は筆談で,マリアと会話した。 


 千雪人形「霊媒師は捕まえた?」

 マリア「捕まえたわ。霊媒師の助手らしい人も一緒よ。監禁室に転送したわ」


 千雪人形「じゃあ,しばらくそこで軟禁してちょうだい」

 マリア「監禁するのはいいけど,食事の世話とか大変よ。千雪様得意の標的魔法陣を二人に植え付ければいいんじゃない? どこにいようが,いつでも転移で連れ戻せるわよ。分体さん,やっぱり,頭の回転がちょっと遅いわよ。早くもとにもどってよ」

 千雪人形「なるほど,,,でも,わたしの霊力は使いたくないわ。マリアの知っている魔法で,どこにいようが,いつでも転移で連れ戻せるようなものはないの?」

 マリア「そうね,,,位置特定魔法陣なら可能よ」

 千雪人形「では,それを彼女たちに植え付けたら,解放していいわ。追って,罰を考えるわ。あっ,それと,ハルトも同行さして。禁呪をがっちり植え付けなさいって」

 マリア「了解よ」


 マリアは,訓練から戻ったハルトを連れて,監禁室に移動した。すぐに彼女らを気絶させてから裸にして,背中に位置特定魔法陣を植え付けた。その後,ハルトは,彼女らの体に禁呪を施した。


 その後,マリアは,彼女らを,彼女らの家の玄関前に転送させた。


 しばらくしてから,彼女らは目覚めた。


 花子「あれ?私たち,家の前にいるわ。どうして全裸なの?だれかに見られた?」


 ちょうど,玄関前は,通りから死角になっていて,全裸の彼女らは,付近を通る人たちから見えなかった。


 彼女たちは,そそくさと家の中に入っていった。幸い,玄関のカギは壊されていたので,スムーズに入れた。


 葉子「なんか,わたしたち,殺されなかったみたいね。どうしたんだろう?」

 花子「これは,何か裏があるわね。千雪が私たちに復讐しないわけがないわ。今は,復讐できない事情があるかもね。でも,私達を放置するって,どういうこと?」

 葉子「つまりさ,いつでも捕まえれるってことじゃないの?どこに逃げてもだめかもね」

 花子「そう考えるのが妥当なところね。ピアロビ顧問に相談してみるわ」


 花子は,携帯でピアロビ顧問を呼びだした。ピアロビ顧問に,事情を詳しく説明して,アドバイスを求めた。


 ピアロビ顧問「なるほど,なるほど,,たぶん,位置特定魔法陣を植え付けられたのだろうね。どこに逃げてもだめだろうな。今,千雪さんは,意識がもどならいから,霊媒師さんの処分を保留にしているところだろうね」

 花子「その魔法陣は,解除できないのですか?」

 ピアロビ顧問「その手の魔法陣は,パスワードがかかっててね。それがないと解除ができないようになってる。無理やり,引き剥がす方法はあるけど,背中の皮膚も剥がれてしまう。回復魔法を2,3回かければ,回復するけどね」

 花子「ぜひ,その方法でお願いします。1億円,いや2億円支払いますから」

 ピアロビ顧問「ここは人間界だよ。霊媒師さんのその魔法陣を消せる人物は,千雪の仲間以外,私しかいないことになる。ということは,私が霊媒師さんを助けたことがすぐばれるよ。つまり,千雪さんの敵になってしまの,わかる? 私も命がおしい。いくら金を積まれても無理だね」

 花子「何か他に方法はないのですか?ピアロビ顧問が千雪さんの敵にならず,かつ,私たちが生き延びる方法が?」

 ピアロビ顧問「そんな虫のいい話はないですよ。あの千雪さんに手を出した以上,諦めが肝心だと思うよ」

 花子「私,処女です。私の処女を差し上げます」

 ピアロビ顧問「ははー,なるほど。もう一度,目覚めたときの状態をいってくれる?全裸だったの?それとも上半身だけ裸だったの?

 花子「全裸でした」


 ピアロビ顧問「なるほど。たぶん,霊媒師さんは,ほかの男性とはもうそのような行為はできない体になってるね。霊媒師さんの体を触る人は,必ず死ぬという呪法が施されたのだろうね。

 あのテレビでやっていたでしょう。動物を胸につけたら,すぐに気絶したっていうやつ。7日後には死んでしまうってやつよ。一度,ペットで試したら? 霊媒師さんの体は,何の価値もないよ。悪いけど力にはなれない。では,失礼するよ」


 ここで,電話は切れた。霊媒師の希望は絶たれた。


 葉子「どうするの?これから。逃げても無駄。ピアロビ顧問も助けてくれない。私たちに触れた人は死んでしまう。わーん。わーん」

 花子「泣いても無駄よ。とにかく,今は,いつ死んでもいいように,贅沢三昧しましょう。北から南に向かって,有名所の温泉めぐりをしていきましょう。そのうち,いいアイデアが浮かぶかもしれないわ」


 開き直った花子は,葉子をつれて温泉巡りの旅に出た。



 ーーーー

 翌日,


 千雪人形は,霊力で声帯を構築した。すでに何回も,千雪自身の複製体を構築した経験があるので,数時間かけて生成した。


 千雪人形は,声を取り戻した。


 その後,高純度の魔力結晶も入手した。千雪人形は,千雪本体の左手の指輪に高純度魔力結晶を接触させた。指輪は,どんどんとこの魔力結晶を吸収して,またたく間にすべての魔力結晶を吸収しつくした。


 千雪人形は,指輪に語りかけた。


 千雪人形「指輪さん,指輪さん。まもなく,千雪本人は,魔界に行って,霊体を修復してもらいます。うまくいくはどうか不明です。でも,魔界で,千雪本人を守ってください。いざっという時,千雪本人の力になってください。お願いします」


 このお願いが聞き届けられたかどうかはわからないが,今,千雪人形ができる精一杯のことだ。何かあっても,次元転移してもらえると期待した。


 数日後に,ピアロビ顧問の娘マレーベリが千雪邸に来た。千雪本体を魔界に連れ帰るためだ。


 千雪人形「忙しいのに,すいません。こちらが千雪本体です。霊体が引きちぎれてしまって,破損がひどいようです。尊師にその旨お伝えください。後は,尊師にお願いしたいと思います。もし,尊師が不在の場合,女性の弟子が4名います。千春,千夏,千秋,千冬といいます。彼女らに預けてもいいかと思います」

 マレーベリ「わかりました。任せてください。どうせ直接,尊師のところに転送されるのですから,ぜんぜん手間ではありません」

 千雪人形「それは助かります。謝礼については,改めて,お礼させていただきますので」

 マレーベリ「いえいえ,そんなの必要ありません。父との戦いで,父を生かしてくれただけで充分なお礼になっています。それと,父がいっていたのですが,たぶん,治癒に使える霊体の抜け殻が必要になるだろうと言っていました。そのようなものをお持ちでしょうか?」

 千雪人形「はい,たくさんあります。どうぞ持っていってください」


 千雪人形は,本体の指輪側の亜空間収納領域から,霊体格納瓶を取り出した。それをマレーベリに渡した。


 千雪人形は,中身を確認してから渡すべきだった。千雪人形は,注意力が少し欠如していた。それがリスベルの霊体そのものであることを知らずに渡した。


 実は,リスベルは,ゴブリン大陸にいた。そこに,千雪の命令で,小雪が行くことになった。小雪は,いろいろあって,リスベルの霊体を千雪の元に送ることに成功した。その霊体を間違って渡してしまった。しかし,小雪は,ゴブリン大陸から生還できなかった。いったい,今頃,何をしているのか???(第3節,参照)


 千雪人形「霊体の抜け殻を収納した瓶です。どうぞお持ちください」

 マレーベリ「確かに受け取りました。後は,おまかせください」

 

 ピアロビ顧問の娘は,霊体格納瓶をポケットに入れた。そして千雪を抱きかかえた姿勢で,その場から姿を消した。


 ーーー

 ーーー


 千雪人形は,やっと落ち着いた。


 そうなると,考えることはひとつだ。花子と葉子への罰だ。彼女らに罰を与えなければならない。千雪人形は,マリアを呼んだ。マリアは,千雪人形を,千雪と呼んだ。本体がいないので,区別する必要がないからだ。



 マリア「千雪さま,何でしょう?」

 千雪人形「そろそろ花子さんに罰を与えようと思ってね」

 マリア「千雪様は,そんな時間あるのですか?正妻,妾1号,2号,3号などなど,ハーレムのみんなが,千雪様の愛をほしがっているわ。もっとも,正妻は追放されたようですけど」


 千雪人形「義務は果たしているんだけど,,,そんなの,今は,どうでもいいのよ。花子と葉子をここに召喚してちょうだい!」

 マリア「はいはい」


 マリアは,位置特定魔法陣で,彼女らの位置を特定して,この部屋の転移座標点に強制転移させた。


 ーーー

 遡ること数時間前,花子と葉子は,北海道の玄関口である千歳飛行場に着いていた。


 葉子「やっと,千歳に着いたー。飛行機に乗っている時間って,結構長いのね。でも,やっと温泉に入れるよ」

 花子「まだまだよ,ここからタクシーで1時間かかるのよ」

 葉子「でも,ここまで来たら,なんか,どうでもよくなるわ。おもいっきり贅沢しましょうよ」

 花子「そのつもりよ。一泊30万円だからね。ふふふ。期待しましょう」


彼女らは,タクシーで1半時間かかって,洞爺湖温泉に着いた。


 運転手「はい。着きました。料金は3万円になります」

 花子「運転手さん,はい,5万円。2万円はチップでいいわ」

 運転手「あ,これはこれは,ありがたいです。気前がいいですね。これからいいことがあるように願っています」

 花子「そうね。そう願いたいわ」


 彼女らは,チェックインして,最高に豪華な部屋に案内された。


 葉子「きゃーー,すてきな部屋。とーーても広い。見てみて,きれいな湖,景色も最高よ,お姉さま。早速,着替えて,温泉に入りましょう。この部屋専用の露天風呂よ。それに,食事も全部揃ってるわ」

 花子「まずは,温泉だわね。温泉に来たら浴衣姿が鉄則よ。まず浴衣に着替えましょう」


 彼女らが浴衣に着替えるのが終わった時だった。彼女らの背中が光った。そして,彼女らは,その場から消えた。


ーーーーー


 ー 千雪の部屋 ー

 

 花子と葉子は,千雪の部屋に転送された。


 千雪人形「花子さん,葉子さん。ごきげんいかが?あれ?もしかして,温泉旅行でもしていたの?優雅な身分だわね。千雪の本体が意識不明の重体だっていうのに」

 マリア「確かに,そうね。わたしだって,温泉にいきたいわ。あっ,そうだ!千雪,彼女らの転送前の場所はわかるから,すぐいけるわよ。私たちが楽しみましょうよ。彼女らの拷問はその後でもいいんじゃなない?」

 千雪人形「そうね。花子さん,葉子さん,浴衣脱ぎなさい」


 花子と葉子は,もじもじしていた。しかし,抵抗は意味がなかった。やむなく,彼女らは浴衣を脱いだ。


 マリアは,裸になった彼女らを監禁室に転送させた。そして,浴衣を着たマリアは,同じく浴衣を着た千雪人形をつれて,花子たちのいた温泉の部屋に転移した。


 マリア「きゃーー,すてき。大きな部屋。それに,露天風呂もこの部屋専用よ。彼女ら,超贅沢だわね」

 千雪人形「ほんと。温泉なんて,行ったことないわ。わたしって,寂しい人生送ってるのね」

 マリア「部屋に備え付けの露天風呂なら,浴衣も不要でしょう。このまま裸になって入りましょう。千雪の人形の体は大丈夫なの?」

 千雪人形「大丈夫よ。温泉くらい」

 マリア「でも,料理もすごいよ。千雪は食べれるの?」

 千雪人形「まだ,味覚や,食事の消化機能まで造っていないわ。千雪のコピー体造るの,結構たいへんなのよ。でも,2時間もあれば,味覚と消化機能は造れるわ。温泉に入りながら,造っていくわ。


 千雪人形は,味覚を感じるようにし,さらに,消化機能を造っていった。


 マリア「ちょうどお腹すいていたの。先に一人で食べるわね。千雪の分は,のこしてあげる」


 マリアは,ひとりで食事を楽しんだ。


 2時間後,,,


 千雪人形は,味覚と消化機能を獲得した。


 千雪人形「わたしも,食べよう!」


 千雪人形は,豪華な料理を楽しんだ。完全に味覚を感じることはできないが,そこそこ感じることができ,食事を味わうことができた。


 千雪人形「ふーーー。このからだ,だんさんと霊体のコピー体に近づいていくわね」


 千雪人形は,なんか,大事なこと忘れていると思った。あっ!!花子たちを拷問するの,忘れていた!!


 千雪人形は,マリアに,まず,花子をここに転送させるように命じた。


 出現した花子は全裸だ。胸はCカップで,均整のとれたきれいな体をしている。彼女は20歳。まさに,女性として最高に美しい年代だ。


 花子「え?ここは?温泉旅館?」

 千雪人形「そうですよ。花子は,温泉に入りたいんでしょう?入っていいわよ。わたしも入るから」

 

 花子は,その意味を理解できなかった。


 千雪人形「もう一度,いいます。その露天風呂に入りなさい!すぐ行動しないと,首が胴体から離れますよ」

 花子「はい,はい,すぐに入ります!」


 花子は,慌てて,露天風呂の中に入った。


 その後,千雪人形は,自分の服を脱いで全裸になった。千雪人形の胸おもZカップだ。本来なら21kgもあるのだが,この千雪人形の場合,軽量の材質を使っているので10kgくらいの重さだ。


 千雪人形も,露天風呂に入った。ちょうどいい湯加減だ。だが,花子には,それをのんびりと味わう精神的余裕はなかった。


 花子は,チラッ,チラッと千雪人形を見た。その大迫力のある胸は圧巻だ。でも,千雪人形には,普通の女性にはない部分があった。霊力で形成したぶらさがっているものだ。


 花子は,その見慣れない大きなものに驚いた。


 千雪人形は,自分のおっぱいのところに花子を抱き寄せた。


 でも,自分の手は使わなかった。Zカップが邪魔になって,花子をうまく抱けなかった。そこで,霊力の腕を2本展開して,花子の両肩をがっちりと掴んで,自分の体に接触させた。


 花子「千雪さん? なに?なに?なにするの?」

 千雪人形「男と女がすることはひとつよ」


 マリアは,部屋ごしに,花子が犯されていて,露天風呂が赤く染まっているのを見た。このままだと花子は死ぬ可能性もあった。本体の千雪が意識を取り戻した時,花子に復讐できなくなる。


 マリアは,止めに入ることにした。


 マリア「千雪,それ以上やると死んでしまうわよ!」


 その声に,千雪人形は,はっと,意識をしっかり取り戻した。


 千雪人形「え? そっか,,,マリア,回復魔法かけてちょうだい」


 マリアは慌てて,花子を風呂から出して花子の陰部を中心に,全力で治癒魔法をかけた。


 マリアの魔法は,どれも美しかった。その治癒魔法も,ほれぼれするほど美しかった。花子の裸体全体が金色に輝いたかと思うと,血の気の引いた青みがった体色が,みるみるうちに血の気を取り戻し,回復していった。


 治癒魔法では,金色に輝かせる必要はないのだが,獣人国の王族出身者としては,常に人に見せるということが大事であり,どの魔法も無駄に美しさが際立った。


 この美しい魔法は,龍子には伝わっていない。龍子は,実用主義で,無駄な美しさは追求しなかった。禁呪や魔法陣の習得に忙しかった。


 マリア「ふーー,もう大丈夫かな?千雪様! しっかり状況を理解しなてください」

 千雪人形「まだ,霊体が不安定なのかな?自分ではしっかりしているつもりなんだけど,,,」


 マリア「今度からは,私と一緒にいるときにしてください。千雪様,あなたは,当面の間,自分がまだ子供だと認識したほうがいいと思います。8才の子供だとして,行動してください。今後,このような危険な行動するときは,大人同伴で行ってください。わかりましたね?」

 千雪人形「はい,『お母様』 いいつけに従います」

 マリア「はいはい,そういってくれるほうがいいわ」


 千雪人形「お母様,花子には,当面の間,体の体重を重くして,身動きできないような罰を与えたいです」

 マリア「それくらいならいいわ。じゃあ,胸に高位の回復魔法をかけて重くさせていきましょう。立ち上がれないほどに」


 花子は,Cカップの美しい胸をしていた。しかし,マリアの施術によって,乳房の重さが両方で10kgものOカップに変化した。


 花子の次は,葉子だ。葉子も同様の処罰を受けて,同じょうな体型にさせられた。

 

 千雪人形「今日はここまでよ。じゃあ,楽しく温泉楽しんでちょうだい」


 マリアは千雪人形をつれてその場から消えた。この行為を経て,花子と葉子の体に植え付けれた呪詛魔法陣は,その形状が変形してしまい,その機能を発揮できなくなってしまった。


 葉子「お姉さま,私たち,生きてますよね。殺されなかったですよね」 

 花子「今はね。人形の方だから,千雪本人に遠慮しているのでしょうね」

 葉子「私,感じじゃった。陰部も胸もむちゃくちゃされたのに,なぜか感じるの。おかしくなったのかな?」

 花子「わたしもよ。最初は,痛くて痛くて死にそうだったけど,その後は快楽の世界だったわ」

 葉子「でも,見て,この胸,片方だけで5kg,両方で10kgもありそうよ。もう,男たちの羨望の的になるわ」

 花子「私も同じよ。でも,千雪本人が来るまでは,私たちは殺されないと思うわ。なんで,巨乳にしたのかよくわからないけどね。それに,呪詛は破壊されているかもしれないわ」

 葉子「え?そうなの?」

 花子「猫で試してみましょう。体に接触させて眠らなかったら,呪詛が解除されてるわ」

 葉子「でも,解除されてもね,,,肝心の相手がいないし,,,」

 花子「とにかく,このまま,温泉旅行続けましょう。ジタバタしても始まらないし」

 葉子「そうね。見てみて,まだ食事が半分残ってるよ。これだけ残ってれば,二人で食べてもお腹いっぱいになるわ」

 葉子「はーーい,ボインのお姉さま」


 彼女たちの受難は,始まったばかりだった。


 彼女たちは3日ごとに,マリアによって,千雪の部屋に呼び戻された。そして,その都度,胸の重量は5kgずつ増加していった。9日目には,千雪人形とほぼ同じ大きさの20㎏になった。


 しかし,千雪人形は満足しなかった。花子は『もうこれ以上大きくしないで。もう歩けなくなる!』と頼んだが,無駄だった。それが目的だからだ。


 花子は,せめて,この千雪邸にいさせてとお願いしたが,それもだめだった。葉子は20㎏までだったが,花子はその後も処罰が続き,2週間後には,両方で40㎏にまでなり,本当に歩くことができない状況にさせられた。



 ー 花子のマンション ー

 花子は,自分のベッドから2本足で立ち上がることはできなかった。胸が重たすぎる。四つ這いになって,かろうじて動ける状態だ。


 この状態でも,花子は頑張った。脚と腕の筋肉をなんとか強化しようと頑張った。そうしないと,ほんとうに動けなくなる。


 せめてトイレには自分で行きたかった。胸が40㎏に達してからは,千雪邸に転送されることはなかった。


 どうしてか,妊娠していないはずなのに,母乳が出始めた。葉子も同様に母乳が出始めた。所詮,乳房は母乳を生成する器官だ。これだけ大きいと出て当たり前なのかもしれない。



 花子は,筋トレに励んだ。プロテインも飲んだ。40㎏の胸を支えるに足る体を創るためだ。人間としての基本的な動きを取り戻すためだ。そして温泉旅行を再び楽しむのだ。


 汗を流せば,多少は脂肪分を燃焼させることができると考えた。ほとんど胸の重さを減らすことはできなかった。しかし,2週間もすれば,2足歩行をなんとかできるようになった。


 葉子「お姉さま,やったー。歩けるようになったのですね。いやーー。家事全部,私ひとりでして,しんどかったですーー。私の胸もかなり重たいので,大変なんですから」

 花子「歩き方にもコツがあるようね。もっと,筋肉つけるから,もっと楽に歩けると思うわ」

 葉子「これで,もう拷問はこれで終わりのかな?」

 花子「そう願いたいわね。もう少し歩けるようになれば,温泉旅行も楽しめるようになるわ。こんなことでへこたれないわ。千雪本人が意識を取り戻したら,ほんとに私たち終わりよ。今度は,近場の熱海温泉に行きましょう」


 彼女らは,熱海温泉に行くのを楽しみにした。

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