第26話 ホーカの参戦

 ー 千雪の部屋 ー


 そこでは,ホーカと千雪がピロートークをおこなっていた。


 千雪「ホーカ,あなた,ピアロビ顧問と戦うの手伝ってくれる?あなたの体,超頑丈だから,どんな攻撃でも跳ね返すでしょう?」

 ホーカ「いいでーーす。なんか,戦いのために,ここに来た気がします」

 千雪「ホーカの記憶,何か思い出せないの?」

 ホーカ「なんか,ぼーーっとしてて,霧がかかった感じなんです」

 千雪「そうなの?なんか。魔法使える?」

 ホーカ「記憶ないのでわかりません」

 千雪「ホーカは,何なんでしょうね。人間ではないし,ゴーレムでもない,死体でもない,うううー,わからん」

 ホーカ「ホーカもわかりませーん」

 千雪「その頑丈な体で,敵をたたけばいいから」

 ホーカ「はーい」

 千雪「その蛇の体,人の脚に変更できないの?」

 ホーカ「人型になっていた記憶もあるような感じなんですけど,どうやってなっていたかわかんないんです」


 千雪「じゃあ,もう約束の時間だから,戦いに行くよ。わたしの傍に来て。戦いの場所,朝日公園に転送するよ」

 ホーカ「はーーい」


 ーーー

 朝日公園

 

 千雪とホーカは,朝日公園に転移した。まだ誰もいなかったので,公園のベンチで待っていた。


 ほどなくして,ピアロビ顧問と立会人の娘であるマレーベリ,およびα隊隊長が来た。


 α隊隊長「千春さん,立会人として来ました。ピアロビ顧問の娘さんと後方に下がっております。よろしくお願いします」

 千雪「はい,よろしくお願いします。

 ピアロビ顧問「では,準備しますので,少々お待ちください」


 ピアロビ顧問は,亜空間収納領域から,高純度魔力結晶を大量に出した。小さなバケツ1杯分だ。これは,5階建てマンションの大きさに相当する量の魔鉱石から精製したものだ。ピアロビ顧問は,この結晶と指輪を接触させて,指輪にお願いした。


 ピアロビ顧問「ドラゴンの指輪よ。この高純度魔力結晶を使って,ドラゴン100体を出現させてください。1体の大きさは体長2Mくらいにしてください。そして,合体魔法で,1体のドラゴンに収束させてください。よろしくお願いします」


 指輪から魔法陣が形成され,ドラゴンが次から次へと出現した。それに伴って,高純度魔力結晶も徐々に少なくなった。100体のドラゴンが出現したあと,別の合体魔法陣が出現して,1体のドラゴンに変わった。ドラゴンと言っても,人と同じ体付きで,顔と尾はティラノザウルスによく似ていた。戦闘型ドラゴンだ。


 ピアロビ顧問「はい,お待たせしました。このドラゴンと戦ってもらいます。魔界語は通じますので,降参です,と言ってもらうと,戦いを止めます。ほかに質問はありますか?」

 千雪「はい,私の隣にいるのは,ホーカといいます。彼女は,魔界語がわかりません。彼女は敵にかなわないと思ったら,逃げるように言っています。ですから,逃げた場合は,追撃しないでください」

 ピアロビ顧問「わかりました。(魔界語)ドラゴンさん,逃げるものは,追わないで攻撃しないでください。よろしくお願いいたします」


 合体ドラゴンは,頭を下げて,了解した,と短く返答した。


 ピアロビ顧問「なお,私は,戦闘に参加しませんし,私の戦闘力では,とても千雪さんにはかないません。もし,合体ドラゴンを倒した後,私を殺したいと思ったら,どうぞ遠慮なく殺してください。覚悟はすでにできております。もっとも,霊体は無事なので,肉体の死だけになってしまいますが」

 千雪「その意味では,お互い死闘をしたところで,実りはないような気がします」

  ピアロビ顧問「ふふふ。でも,この決闘は,わたしにとっては,大統領から権益を得るため,あなたにとっては大金を得るため,お互い,割り切って,死闘を行いましょう」

 

 その言葉に,千雪は納得している。


 千雪「わかっております。ピアロビ顧問を殺すかどうか,その時の気分で決めましょう。 」

 ピアロビ顧問「では,始めます。(魔界語)ドラゴンさん,では,あの女性2名を倒してください。相手が降参というか,もしくは逃げるまで戦ってください。場合によって,殺すことになってもかまいません。では,戦いを初めてください」


 合体ドラゴンは,了解した,とまた短く返事した。ドラゴンの周囲の背景がボヤーとぼやけて見えた。魔力が溢れ出ていた。合体ドラゴンの周囲がゆがんで見えるのは,魔力がどんどん蒸散しているからだ。過剰に魔力を詰め込んだため,余分な魔力は勢いよく蒸散して消失した。


 バッシューー!!!

 ドーーン!!


 ドラゴンは,高速で移動し,ホーカを足蹴りにした。ホーカは,ほぼ無抵抗で数十m先まで飛ばされた。


 ホーカは頑丈なので,これくらいでは,びくともしないけど,やっぱり,使えないなあ,と千雪は感じた。


 合体ドラゴンは,すぐ,千雪に向かって第2撃目の足蹴りをした。千雪は50倍速で躱した。合体ドラゴンは,千雪が躱したのをみて,速度をアップさせた。50倍速で,再度,第3撃目の足蹴りを回した。千雪は,100倍速に速度を上げて回避した。だが,ギリギリの回避だった。


 合体ドラゴンは,50倍速でも回避されるを知っておどろいた。この100体の合体ドラゴンを操る霊体は,特別に,この合体ドラゴンの体のためだけに存在する。前回,この霊体が合体ドラゴンの体を操ったのは,もう2000年以上前のことだが,それでも3回ほど経験がある。その少ない経験の中で,50倍速を避けられたのは初めてのことだ。


 合体ドラゴンは,100倍速に引き上げて,第4撃目の足蹴りを加えた。千雪は,200速でその攻撃を躱した。


 千雪は,100メートルをなんと60秒かけて走ることができる。いや,実質,10メートルくらいしか,走ることができないが,100メートル換算でなんとか60秒かけて走ることができる。千雪は,200倍速が使える。それでも,100メートル0.3秒でしか動けない。


 一方,合体ドラゴンも,実は,意外と足が遅い。100メートルを30秒くらいでしか走ることができない。つまり,100倍速で,0.3秒で走ることができる。つまり,千雪の200倍速と,合体ドラゴンの100倍速が,ほぼ同等の速度ということだ。


 合体ドラゴンは,100倍速でも躱されたことから,今度は,自己最高の200倍速で動くことにした。


 合体ドラゴン「千雪,さすがだな。その重たい胸をひっさげても,わたしの100倍速に対応するとは恐れていった。では,今度は,自己最高の200倍速でいく。では,参る!!」


 バシューーーーン!!


 ダーーン!!


 千雪は,合体ドラゴンの200倍速に追いつけず,蹴りをまともに食らって,何十メートルも飛ばされた。


 ダイヤモンドよりも3倍硬いといわれているカルビンに相当する硬度を実現する防御を持っているので,その攻撃は,直接的なダメージにはなっていない。しかし,勢いは殺せずに,蹴飛ばされてしまった。


 このような高度にハイレベルの戦いになると,火炎を飛ばすなどの放出系魔法攻撃はあまり意味を持たない。魔力で形成される火炎,電撃などの速度は充分に早いのだが,しかし,10倍速以上の動きを持つレベルでは躱されてしまう。


 そのため,自己の体に火炎もしくは電撃を帯びて攻撃して,相手に接触させて電撃攻撃を行うのが実践的だ。


 バババババーーー!!


 合体ドラゴンは有り余る魔力を消費させて,自己の体を膨大な電撃の塊と化した。


  千雪はゆっくりと起き上がった。だが,合体ドラゴンが,膨大な電撃の塊になっていることを知り,これはかなりまずいと感じた。


 その威力はSS級などというレベルではない,その1000倍以上ものパワーがあるようだ。S級の10000倍以上だ。


 千雪は,この状況を充分に予想していた。こうなってしまうと,いくら防御層の性能を引き上げても無駄だ。ダミー体を構築して,実体を透明化して隠れるなどの手法しかない。千雪は,それをすぐに構築した。


 何十mも吹き飛ばされたホーカがやっと,千雪の傍にやってきた。


 ホーカ「あーー,びっくりした。すっごく早い攻撃でびっくりしちゃったーー」


 千雪の実体は,ダミー体から3メートル離れた場所にいて,そこから声を出した。

 

 千雪「ホーカ,怪我はない? もともと怪我する体していないから,心配していないけどね」

 ホーカ「怪我はしてないよ。大丈夫だよ」

 千雪「合体ドラゴンを見てちょうだい。膨大な電撃攻撃が来るよ」

 ホーカ「そうなの?」


 そんな会話をしてる余裕はなかった。200倍速の合体ドラゴンのスピードは,一瞬でホーカの体の後ろに回り込み,ホーカを抱くようにして,自己の膨大な電撃をホーカに与えた。


ババババーーー,ビビビーーー(雷撃がホーカの体に走る音)


シューー,シューー(ホーカの体から黒煙が出てくる音)


 ホーカの体は,立ったままの姿勢で,一瞬で全体が黒焦げに焦げて,黒煙が湧き出た。


 合体ドラゴンは,いったん10メートルほど離れた。合体ドラゴンは,騎士道精神が旺盛だった。絶対強者としてのプライドだ。倒した相手に対しては,礼を施す。

 

 合体ドラゴンは,ホーカに対して礼をおこなた。死者へのいたわりの気持ちだ。


 千雪は,ホーカはまだ死んでいないとすぐにわかった。オーラの色がまったく変化してしない。この攻撃でさえもホーカにはまったく影響していないと即断した。


 ピカーーーーー!!


 ホーカの黒ずんだ外殻に,ひびが入り,その裂け目から光線が放出された。その光線は一瞬にして黒ずみを消し飛ばした。


 ホーカが着ていた赤のジャージはすでに消滅して,Cカップの美しい胸が露わになった。また,美しい緑色の蛇状の体は一層鮮やかさを増した。ホーカは,顔つきが厳しい顔に変わっていた。


 敵が合体ドラゴンであると認識した。


 ボボボーー!!(変身してヒト型に変化する音)


 ホーカの体が金色の色を帯び始めた。上半身が女性で下半身が蛇状の体が,完全な人型に変化した。


 ホーカは,完全なヒト型に変身した。その後,また変化が起きた。彼女の体は,外の景色の色に同化して,あたかも透明人間のようになった。


 ドドドーーーン,ドドドーーーン!!


 その瞬間,ホーカは500倍速の超速度で移動し,合体ドラゴンに第1撃目の足蹴りを加えた。今度は,逆に合体ドラゴンが,何十mも吹き飛ばされた。


 ホーカは,保護色を解き,美しい裸体を晒した。そして,合体ドラゴンが起きあげるのを待った。彼女もまた,合体ドラゴンに対して騎士道精神のお返しをしたのだ。


 合体ドラゴンは,ゆっくりと起きあがった。そして,ホーカに向かって魔界語で言った。


 合体ドラゴン「あなたは,いったい,何者?なぜ,そんなに高速で移動できる??」


 ホーカは,同じく魔界語で答えた。


 ホーカ「私は,300年後の未来から召喚された霊力生命体です。私の霊体は,300年前の,つまり,現代の千雪様の一部から作られました。先ほどの電撃攻撃で,記憶のベールがすっかり取り除かれました。その意味では感謝しております。私は,数千倍の速度でも行動できます。かつ,300年後の未来の魔法技術も有しています。もうあなたに勝ち目はありません。


 合体ドラゴン「300年後??まったくSFの世界だな。でも,そうか。それなら,私の負けは確定だろうな。でも,あなたのような強者と戦うのは,めったいにない機会だ,ぜひ数手お手合わせ願いたい」


 そう言って,合体ドラゴンは,自己最高速の200倍速で,攻撃を再開した。ホーカは,保護色にはならずに,合体ドラゴンの攻撃を受けた。


 シューーー,シューーー,シューーー


 合体ドラゴンが攻撃をして,ホーカの体に接触するたびに,合体ドラゴンの魔力がホーカの体に吸収されていった。5回ほどの接触によって,合体ドラゴンの魔力は,ほぼすべて吸収された。


 合体ドラゴン「なるほど,,,あなたに接触するたびに,私の魔力が吸われてしまうのか。あれほどあった魔力がこうも一瞬でなくなるとは驚きだ。完敗だ。負けを認める。透明にならずに戦ってくれたこと,感謝する」


 ホーカ「あなたは,この現代では,この地球界に限らず,魔界,新魔界であろうと,最強と呼ぶにふさわしい強者です。自信を持ってください」

 合体ドラゴン「そうか,,,現代では最強か,,,フフフ。それを聞いて少し安心した」

 ホーカ「その魔力量では,指輪に戻ることもできないでしょう。奪った魔力を少し返しましょう」


 ホーカは,合体ドラゴンの体に触って,吸収した魔力の一部を,彼に戻した。魔力を回復した合体ドラゴンは,ホーカに軽く一礼して,ピアロビ顧問のものに移動した。


 合体ドラゴン「ピアロビ様,申し訳ありません。わたしは,負けてしまいました」

 ピアロビ顧問「いいのですよ。あなたは,この時代なら最強の戦士です。千雪に勝っていました。でも,まさか,あのヘビ女が未来から来たとは驚きです。では,わたしの指輪に戻りなさい」


 合体ドラゴンは彼の指輪の中へ戻っていった。

 

 ホーカは,透明化している千雪のそばに寄って日本語でしゃべった。


 ホーカ「千雪さま。記憶が完全に戻りました。私は,千雪さまの霊体の一部を核にして,霊力だけで作られた霊力生命体です。この300年間,千雪さま,2代目千雪さま,3代目,と変遷し,20代目の千雪お姉さまと,肌を重ねて,霊力を吸い続けてきました。300年後では,すでに,私は神に近い能力を身に着けてしまいました。ですから,300年後の20第目の千雪お姉さまは,私に,女媧の姿になって,全世界の人の信仰を集めなさいと言われました。ときどきは,神の力を示しなさいともいわれました。


 初回の召喚では魔力量が足りず,失敗すると思ったのです。それで,あわてて,大事な記憶をガードしました。2回目の召喚でも,肉体は召喚されたのですが,記憶のガードを解くほどの霊力はありませんでした。


 今回の合体ドラゴンによる雷撃攻撃は,本当に助かりました。そのパワーを取り込むことが出来て,やっと記憶のガードを解除することができました。


 その後の合体ドラゴンとのバトルで,膨大な魔力を取り込むことができました。千雪さまの指輪の力を借りなくても300年後の世界に戻れます。なぜその指輪が私をここに呼びつけたのか,,,今になってみれば,よくわかります。千雪さんが,『千雪さん』であるうちに,一度私に見せたかったのでしょう。


 千雪「それは,どういう意味?」

 ホーカ「もうすぐ,千雪さんが千雪さんでなくなる,ということです」

 千雪「よくわかんないのですけど?」


 ホーカ「わからなくてもいいです。私がこの世界に長くいると,未来に悪影響を与えます。千雪お姉さま,あまり,愛欲に溺れないで,しっかりと修業してくだい。そして,私を,私の母体を創ってくださいね。私を創る前の,『純粋な千雪さま』,そして,私のオリジナルに会えてほんとうによかったです。


 私の300年にも亘る記憶のページに,さらに新たな1ページを加えることができました。千雪さま,あんまり胸を大きくしてはだめですよ。強欲もだめですよ。名残惜しいですけど,未来に戻ります。千雪さまは,もうすぐ私に会えるのですから,寂しがらないでくださいね。では,失礼します。


 ヒュルウルルルルーーー!!


 ホーカは,一人で勝ってにしゃべって,時間流動魔法陣を起動して,300年後の元の世界に戻っていった。


 ーーー

 千雪は,あっけにとられて,ぼーぜんとしていた。ピアロビ顧問,合体ドラゴン,そして立会人のピアロビ顧問の娘マレーベリとα隊隊長がやってきた。


 千雪は,ダミー体を回収して姿を現わした


 ピアロビ顧問「千雪さん。私の負けです。どうしますか?私を殺しますか?生かしますか?

 千雪「殺す理由はありません。5億円もいただいたのですから。でも,あの合体ドラゴンは強かったですね。ホーカの記憶が戻らなかったら,やばかったです」

 ピアロビ顧問「あのホーカって子は,300年後の未来から来たのですね。いやーー,予想外でした。そんな助っ人がいるとは,考えもしませんでした」

 千雪「私もです。ほんと運がよかったです」


 ピアロビ顧問「ところで,千雪さん,千雪さんに模した人形を渡していただけますか?」


 千雪「はい,わかりました」


 千雪は,2日前に届いた自分とそっくりの,そして等身大の人形を亜空間収納領域から取り出した。胸サイズは,21kgにもなるzカップだ。制作費用は3億円。燃焼させるのを前提にしているので,金属素材は使用していない。かわいらしく女性らしい服装を着ていた。


 マレーベリ「きゃー,そっくり。燃やすのもったいないわー-」

 α隊隊長「これで何百人もの慰霊に対して,少しでも有益になるなら,いいのかもしれん」

 ピアロビ顧問「では,私の亜空間領域に入れさせていただきます。あとは,私のほうで対応いたします。すでに慰霊碑は建設済みです。そこに,霊媒師の方を呼んでおります。この人形を渡せば慰霊の儀式が開始できるようになっています。今回は,貴重な対戦をしていただき,ありがとうございました。では,失礼させていただきます」


 ピアロビ顧問たちは,その場を去った。千雪も,教団の宿泊施設である新しい千雪邸に戻った。


ーーー

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