日々を壊し決意する、そんな男女2人のお話

@SINTARO1994

日々を壊し決意する、そんな男女2人のお話

「また眠れない」

まだエアコンをつける必要もない初夏

風が吹いてないのが、また暑さを引き立たせる

「どうしたん?また眠れへんの?」

横で寝ていたはずの君が、声を掛けてくる

「大丈夫、暑さで起きちゃっただけだから」

「良かったわ、また夢見悪うして起きたんかと思ったやん」

「あの頃からは立ち直ったの」

「あの頃は酷かったよな~」

他愛もない思い出話で盛り上がる

会社勤めで、心身がボロボロになりきってた昔の私

あと1歩、踏み込んで電車にぶつかってれば

こうやって君と笑いあうことも無かったと思う

「せや、外涼しそうやし散歩せぇへん?」

君の言葉に私は頷く

急いで準備して外に出ると、夜風は吹いている

散歩中も他愛もない思い出話で盛り上がる

君の笑い声は大きくて、この夜の深い景色に吸い込まれていく

「そんなんボロボロの状態で生きてけるんか!?」

あの時、助けてくれた君が掛けてくれた言葉

ふと思い出す

会社に勤めてた時代に色んな人に言われた言葉

「大企業なのに、辞めるなんてねぇ・・・」

「使えねぇんだよ!こんなことも出来ないのかよ!」

「五月蝿いんだよ!」

「なんで辞めねぇんだよ!」

こんな心無い言葉に責められて崩れてた心、

少しずつ優しくしてくれた君、

少しずつ後押ししてくれた君、

少しずつ肯定してくれた君、

そんな君を少しずつ好きになっていった

「・・・どうしたんや?俺ん顔になんか付いてるん?」

「んん、内緒」

横顔をじっと見つめてたのがバレてたみたい

「それよりも見て!日の出だよ!」

思い出話に華を咲かせ過ぎたかな

いつの間にか夜が明けそうだった

~ねぇ、昔の自分~

~確かに辛いよ~

~だって、もう死にたいっていっつも思ってたもん~

~けどね、助けてくれた人が居たよ~

~昔の人はよく言ったよね~

~明けない夜は無いって~


俺がお前を助けたんだ!だから他の人にも救いの手を差し伸べてやれ!」

俺が尊敬する人の言葉

だいぶ理不尽言うとった気がしたが

あの人、ずっと口煩う言っとったな

・・・確かにあの人の目の前で死のうとしてたで

止めてくれんかったら、俺は今ここに居れへんやろなぁ

あの頃は、自分で自分を信じれんかった

だからこそ行くとこまで行ったんや

道なんか見えんかった

がむしゃらに進んどったら、あの人っていう光に会ったんや

あの人が見てた景色を一緒に見たかった

だから自分を信じたんや

必死に走ったんや

挫折したりもした

気付いたらあの人を抜いとった

生き方が分からんくなった

けど必死に歩いてく

「こんなんじゃ、いつまで経っても逝けねぇな」

「どういう意味です?」

「こっちの話だよ」

あの人は、あの時から必死に隠してたんや

自分を迷わせんように

常に追い抜く目標として立っといてくれたんや

あの人の、人としての器に、デカさに、

いつまで経っても頭上がらへん

あの人が居らんくなっても

時間は進んでいくんや

「まぁ考えてもしゃあないしな、とりあえず家に帰ろうか」

~・・・なんであの人の事、ふと思い出したんやろなぁ~

~電車乗り場に辿り着く~

~ふと、辺りを見渡す~

~なんか線路に踏み込みそうな女性が居らへんか?~

~・・・!?、本当に踏み込みよったで!?~

~身体は反応してくれた~

~すぐ腕を引っ張る事が出来た~

「他の人にも救いの手を差し伸べてやれ!」

頭ん中にあの人の言葉が聴こえた気がした


助けた彼女は引き寄せた腕の中で泣き始めた

見た目はスーツを着てるからOLさんやろ

とりあえず事情を話して、警察に来てもろた

彼女はずっと裾を掴んだままやった


その後は、警察に事情を聞かれ~

~助けてくれた人は、「何かあったら、連絡しぃや」と~

~連絡先を貰った~

~警察からは、なんで線路に飛び込もうとしたのか~

~大丈夫ですか?と心配もされた~

~会社からは、おびただしい数の不在着信が入ってた~

~それと一緒に両親からの不在着信も入ってた~

~警察から連絡が行ったらしい~

~その後の事は良く覚えてない~

~実家に戻り、自室に引き籠もっていたから~

~ご飯を食べ、薬を飲む~

~そんな日々の繰り返しだったから~

~会社とは揉めたけど、何とか辞めれた~


あんな漫画みたいな出来事から数年後

まさか助けてくれた人と一緒に暮らしてるなんて思わなかった

目に映る日の出と、君は一緒なんだよ

幸せって今は分かんなくなって

精一杯私は私を生きていく

もう死にたいなんて思わないよ

・・・少しは後ろを振り向くかも

だけど前を向くよ


~だって、私の人生なんだもん~

~終わらないよ~

~一生私は私らしく、生きて征くよ~















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