失踪ドリル

回転するドリルは行方知らず。歯が欠け、油は差されず、酷使されてはサビだらけ。お見舞いに研磨剤を差し入れしたのですが届きません。タングがぐずぐずになって台座から外れたとお聞きしました。良く回って良く削ったものですが、それも時間が経ってしまえばメンテナンスをされる機会が減ってこんなことになるなんて。あなたはいつもは非常に硬いアオダモの木を削っていましたね。そのほとんどは楽器になるのでした。私はその楽器達がどんな音色をさせるのか(させたのか)想像することしかできませんでした。あなたが木材に関わることはあなた自身の生きることなのでしたね。あなたがそれが無理だと思うようになったのであれば失踪もやぶさかではないと思えてきました。

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