街明かりとコンタクト

檸檬焼酎

花火

「うわ!」

 花火大会の帰り道、彼女がふと声を上げる。


「どうしたの?」

「コンタクト取れちゃった……」


 やらかした、という顔をしながら彼女は呻く。人通りの多い夜道ではきっと見つけられない、見つけたとしても目に入れるのは無理だろう。


「はー。まぁもう帰るだけだからいいけどね」


 花火見れたし、なんてあっけらかんと言う。それにしたってろくに目がみえないのは危ないだろうとそっと彼女の手を取る。


「わぁ! 恋人っぽいことするねぇ」

冗談交じりに彼女は笑う。


「ぽいんじゃなくて恋人でしょう」


 いつまで友達気分でいるのと、少し怒ったように返してみると、そうだったねと彼女はそっぽを向いた。そっけないような、なんでもないような素振りをしているけれど、頭の上まで結わえた髪では赤くなっている耳が丸見えだ。


「ふふ」


 ふと彼女が楽しげな声が耳に入る。


「今度はどうしたの?」

「コンタクトを外すと視界がぼやけて、街の灯が花火みたいに滲んで見えるの」


 あの信号なんてさっき打ち上がってた花火にそっくり、彼女は笑って呟いた。私は視力がいいから彼女のその感覚はわからない。けれど、彼女の瞳に星のように映りこむ街の灯はとても美しいと感じた。


「綺麗だね」


 街明かりを眺めながら彼女は言う。私はその横顔を眺めながら、


「そうね」


と答えた。

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街明かりとコンタクト 檸檬焼酎 @lem_shochu

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