第12話 書き出し案件1
1
「前進! 目標 顎3 右手1」。
掛け声と共に、迷彩服装の若者がやってくる。
SIENNA色の埃道の右側は丘陵全面、ヒマワリの明黄色で塗りつぶされている。
左手の樫の巨木も混じった広葉樹林から
セミのGee音響の求愛曲。
ヒマワリの最敬礼に見送られながらモリはもう一度。
「前進! 目標 顎3 右手1!」。
志願兵の訓練を終え、この基地に送られてきた6人の内生き残っているのはモリだけだ。
何度も戦闘参加を願い出たが全て却下。
理由は上からの指示とのこと。
現在、彼の正式任務はエンバーミング(embalming)
遺体を消毒保存処理、必要に応じて修復。
もちろん彼は助手役でプロが内臓や血液処理をするのでモリは化粧や髭剃りを担当。で顎が無いと仕事を完遂できないので、前日遺体の欠如パーツ
の探索を前線基地へ依頼しておいたので、うまくいけば今日中に回収し仕事は終える予定だ。
2
もう一つの公式でない任務は時々見る夢のお告げを情報官に報告すること。
例えば敵が最近投入してきた最新兵器、爆風が顎だけ直撃してくる奇妙な爆弾が敵陣営にも少なからずの損害を出しているらしいとの夢のお告げを報告すると、
「自分たち側も損害出しているにも拘らず爆弾使用続行している裏の意味を夢見で探れ、今直ぐ就寝せよ」。
「上官殿。夢見のお告げは深夜のみの現象です」。
スムーズな戦争遂行の為には兵士はチェーン状態に補充が出来るようになっているのがいい。
一兵士の死を統計上だけで済ますためには出来る限り遺体は自然死状態に近い方がいい。
戦場に行くということには戦死は充分以上想定内にあったはずなので、一般社会の一市民の死が巻き起す死因追求、検死、警察介入、司法介入、容疑者逮捕。。等のプロセスは必要では無く。唯、葬儀のプロセスの円滑さのために、遺体は中立的で静観な顔つきが望まれる。
遺族はその永眠状態の表情に癒され諦観さへの流れに乗って行くのだ。
制服、国旗、礼砲、遺族の涙。 次の出兵式。
白い十字架群(一人じゃ無いよ)。 次の出兵式。
3
顎の無い遺体の続出はこの円滑な葬儀進行を
妨げ始めた。
顎欠如で遺体の喜怒哀楽が読み取れなくなるのは
仕方ないにしても、あの厳粛な静観顔が演出不可に成ってしまった。
一応書き出したけれど、続かない。此れでは無い気がする。
いや、此れでは無い。
説明が多すぎる。
テンポが遅い。
森を出ると十字路で前方はヒマワリ畑
ミディは畑を中央で分ける一本道。
蝉の生態説明
後の紙魚の説明
その他の昆虫の説明
大先輩を強調。
理由は テーマが浮上してない状況。
何を書き表出したいのか?
終わりは?
???が多すぎる?
「宇宙と一体感になり同時に射殺される」が
ヴァージョン1。
顎が無いとその兵士が最後の瞬間死を受容していたのかを判断できないから。。。
至福感への洗脳された兵士は戦死を受け入れる?
書き出しさえ書ければは、ダメなのか?
テーマ!!!!
「僕はこの意識をどうしたいのか?」
ラスコーの動物群が出現した時
意識たちは如何リアクトしたか?
意識はどこから来てどこへ行くのか
「死の都市」の丸木船。
西方には約束の場が?
説明はもう十分だ。
指標を示せるのか?
宇宙に問え。
道標は?
死は想定内。
自死勿論OK.
ミディの死は脚本通りだ。
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