第22話
「はあはあ……」
「走れ、リッカ! 心肺機能を限界まで鍛えるのだ!」
次の日に、私はリッカを朝から晩まで走らせることにした。まずは、防御力かと思ったが、体力作りからとしたのだ。体を鍛えて、ついでに精神の成長も促す。
「リッカは苦手な物が、なにかあるか?」
並走しながら話しかけてみる。
「はあはあ……。昆虫が……苦手です」
食事の改善のために聞いたのだが……。思わぬ収穫だ。
私は、大きなバッタの魔物を連れて来た。等身大の昆虫は、私も気持ち悪いと思う。そのバッタを見たリッカの表情が凍り付いた。
「いや~~!」
おいおい……。
リッカが、今までの倍以上の速度で走る。それを追いかけるバッタ。思った以上の効果が表れた。今まで手を抜いていたとは思わないが、眠っていたなにかが発現したのだな。だが残念なことに、リッカはスタミナがないので、止まってしまう。
リッカに襲いかかるバッタ……。
「いや~いや~いや~!」
まずリッカは、杖でバッタの目を潰し、その後、首の関節肢に杖を刺している。あれは、中枢神経に届いているんじゃないか?
バッタが翅を広げたら、リッカは瞬時に翅に傷をつけ……、飛べなくさせる。バッタは、次々に選択肢を奪われて、動けなくなって行く。なんて的確な攻撃なのだろうか。
最終的には、リッカがバッタの頭を潰して追いかけっこが終了した。
……正直、凄いな。
「いいぞ、リッカ! 素晴らしい攻撃だった!」
「……」
もう、色んな汁を垂れ流しだな。昆虫の体液まみれでもある。
これは……、続ける価値があるな。
次に私は、カブトムシ、そして、ゴ〇〇リを連れて来た。
リッカが、凄い速度でレベルアップして行くのが分かる。後衛かと思ったが、アタッカー……、前衛の才能もあったようだ。攻撃が的確過ぎる。
例えるなら全ての攻撃が、クリティカルヒットだな。昆虫限定なのかもしれないが。
特に、ゴッ〇ーだ。中長距離魔法で迎撃してしまった。攻撃魔法を覚えたようだ。いや、目覚めたか? 現時点で、優秀な前衛だと誰もが認めるだろう。
夜になり、食事を出すが、リッカは吐いてしまう。
こうなると、点滴だな。ブドウ糖を直接血管に注入する。それと、大量のタンパク質だ。この世界に来て、大豆イソフラボンが手に入ったのは大きかった。私も毎日飲んでいる。リッカは、水に溶いた大豆イソフラボンは、飲み干して吐かなかった。ココア味だったのが良かったのかもしれない。今は、固形物を受け付けないんだろう。胃腸の強化も必須だな。
食事の後、リッカはすぐに寝てしまう。まあ特訓初日なのだ、休ませてやろう。
「トロールはちょっと、レベルが高かったか? だが、現状の自分の実力を知れたのは大きい。一週間後が見ものだな」
私は、希望に満ちた未来を想像して、にやけてしまった。
◇
一週間、リッカは走り続けた。スピードが落ちたら、昆虫を連れてくる。だが、2~3日で慣れてしまったのか、一撃で倒すようになってしまった。レベルが上がったらしい。もっと、強い昆虫はいないものだろうか……。
途中で、筋断裂が起きるが、自分で修復している。面白い魔法の使い方だな。
肺の炎症や、胃潰瘍も治せると言っていた。素晴らしい回復魔法の使い方だ。人間が持つ身体能力向上機能を魔力で時短するのか。
それと、胃潰瘍が治ると、食べ始めた。なんだ、病気だったのだな。神経質な性格だったのか。
リッカも逸材だったな。いや、ダイヤモンドの原石と言える。
それと、ウサギの魔物など、瞬時に捕まえて、素手で千切っていた。筋力も育っているようだ。そして、心も強くなっていると思われる。
胃も強くなって来たらしく、大量の食事もとれるようになった。肉8割、穀物1割、野草1割で体を作って行く。やはり、肉中心の食生活がいいだろう。
リッカは、見る見る逞しくなって行く。
この数日で何センチメートル背が伸びたのだ? 足首まであったスカートが、今や膝上になっているぞ。
それと、胸が膨らんでないか? 幼児体型からモデル体型に変わっていないか?
もちろん、ボディービルダー体型だが。
服もボロボロだ。後で買いに行こう。
「魔力を使っているとはいえ、フルマラソンの距離を、1時間で走れるスタミナは、誇れるぞ。体作りは、ここまでとしよう。次は、攻撃方法の取得から始めるか」
「……はい」
ミルキーと同じだな。もう、目に光がない。ここからだ、ここから急成長する!
私は知っている。確信がある!
レベル? 経験値? ステータス? そんなものは関係がない!
「魔法と、攻撃の融合を考えようか。まず、拳に魔力を纏わせるところからだな」
「それなのですが、考えていました。銃を使いたいです。返り血や昆虫の体液には、辟易しています」
ほう?
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