第21話

「リッカは、どんなことができるのだ? スキルビルドとやらを教えてくれ」


「回復魔法が、中心です。解毒や、解呪も得意です」


 聖女と言うだけあって、後衛タイプか……。


「戦闘面は? 攻撃方法が知りたい」


「……正直運動音痴でして、苦手です」


「その杖は? 刃もついていないようだが、武器として成り立つのか?」


「お飾りです。聖女らしく振舞えと……、持たされました」


 ふむ……。方向性が決まったな。

 魔物と戦わせてみるか。眠っている、何かが目覚めるかもしれない。

 何事も経験だ。

 それと、苦手なことは少ない方がいい。私みたいな、オールラウンダーが一番生き残る可能性が高いのだ。これは、もうシミュレーションで計算されている。

 私は、〈索敵〉を発動させた。


「近くに、トロールがいるな……。北西に8キロメートルと言ったところか。行くぞ!」


「……えっ?」





 ――ガン、ドサ、ゴロゴロ……


「あ、あ……」


「座るなリッカ。諦めたらそこで終わりだぞ! そんな杖ではなく、拳を握るんだ!」


 リッカは、トロールと対峙している。一合で飛ばされて、地面を転がり全身傷だらけだ。

 私は、後方より、叱咤激励を行う。

 トロールは、フルプレートアーマーで全身を覆っている。武器は、剣だ。

 剣を躱して、鎧の隙間に魔法を撃ち込めばいいと思うのだが……。ダメだな。萎縮して、本来の実力が発揮できていない。

 どうやって意識改革を行うか……。


「ここまでだな。手本を見せるか……」


 私は背後より、トロールに近づいた。

 そして、戦斧を振るう。頭からお尻までトロールを一撃で真っ二つにした。ギルドで購入した武器だが、切れ味はなかなかだ。

 リッカを見る。

 全身トロールの血を浴びて、放心状態だった。まあ、泥だらけであり、全身擦り傷だらけでもあるか。


「こうやるのだ。トロールの防具など、鉄でできた紙と思え! それと、腕力に頼る必要などない。リッカは、魔法で再現するのだ! 身体強化魔法くらいは習得できているのだろう?」


 リッカは、目に光がなく、焦点も合っていない。話は、通じているのだろうか?

 全身血まみれで、震えている。





 近くで小川が見つかったので、体を洗わせる。それと、洗濯だな。固まる前に血を洗い落としておいた方がいい。

 私は、覗きなどしない。〈索敵〉で周囲を警戒するだけだ。それと、食事の用意だな。


 リッカが、入浴を終えて、戻って来た。替えの服に着替えてもいる。

 食事を差し出すが、手を付けようとしない。


「どうした? 無理してでも食べろ。体が持たんぞ?」


「……どうしたらいいのでしょうか?」


 さっきの、トロール戦で自信をなくしたのかな? この娘は、心が弱いな。

 死地に立って、動けなくなるのは致命的だ。さてどうやって、自信を取り戻させるか……。


「まずは、防御だ。回避でもいい。負傷をしないため、防御を最優先で覚える。まずは、それからだな」


「……わたしは、スピードがないのです。それにスタミナも。魔力特化のスキルビルドなので」


 うむ。これで、方針が決まったな。

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