第21話
「リッカは、どんなことができるのだ? スキルビルドとやらを教えてくれ」
「回復魔法が、中心です。解毒や、解呪も得意です」
聖女と言うだけあって、後衛タイプか……。
「戦闘面は? 攻撃方法が知りたい」
「……正直運動音痴でして、苦手です」
「その杖は? 刃もついていないようだが、武器として成り立つのか?」
「お飾りです。聖女らしく振舞えと……、持たされました」
ふむ……。方向性が決まったな。
魔物と戦わせてみるか。眠っている、何かが目覚めるかもしれない。
何事も経験だ。
それと、苦手なことは少ない方がいい。私みたいな、オールラウンダーが一番生き残る可能性が高いのだ。これは、もうシミュレーションで計算されている。
私は、〈索敵〉を発動させた。
「近くに、トロールがいるな……。北西に8キロメートルと言ったところか。行くぞ!」
「……えっ?」
◇
――ガン、ドサ、ゴロゴロ……
「あ、あ……」
「座るなリッカ。諦めたらそこで終わりだぞ! そんな杖ではなく、拳を握るんだ!」
リッカは、トロールと対峙している。一合で飛ばされて、地面を転がり全身傷だらけだ。
私は、後方より、叱咤激励を行う。
トロールは、フルプレートアーマーで全身を覆っている。武器は、剣だ。
剣を躱して、鎧の隙間に魔法を撃ち込めばいいと思うのだが……。ダメだな。萎縮して、本来の実力が発揮できていない。
どうやって意識改革を行うか……。
「ここまでだな。手本を見せるか……」
私は背後より、トロールに近づいた。
そして、戦斧を振るう。頭からお尻までトロールを一撃で真っ二つにした。ギルドで購入した武器だが、切れ味はなかなかだ。
リッカを見る。
全身トロールの血を浴びて、放心状態だった。まあ、泥だらけであり、全身擦り傷だらけでもあるか。
「こうやるのだ。トロールの防具など、鉄でできた紙と思え! それと、腕力に頼る必要などない。リッカは、魔法で再現するのだ! 身体強化魔法くらいは習得できているのだろう?」
リッカは、目に光がなく、焦点も合っていない。話は、通じているのだろうか?
全身血まみれで、震えている。
◇
近くで小川が見つかったので、体を洗わせる。それと、洗濯だな。固まる前に血を洗い落としておいた方がいい。
私は、覗きなどしない。〈索敵〉で周囲を警戒するだけだ。それと、食事の用意だな。
リッカが、入浴を終えて、戻って来た。替えの服に着替えてもいる。
食事を差し出すが、手を付けようとしない。
「どうした? 無理してでも食べろ。体が持たんぞ?」
「……どうしたらいいのでしょうか?」
さっきの、トロール戦で自信をなくしたのかな? この娘は、心が弱いな。
死地に立って、動けなくなるのは致命的だ。さてどうやって、自信を取り戻させるか……。
「まずは、防御だ。回避でもいい。負傷をしないため、防御を最優先で覚える。まずは、それからだな」
「……わたしは、スピードがないのです。それにスタミナも。魔力特化のスキルビルドなので」
うむ。これで、方針が決まったな。
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