第11話

「サラマンダーと言っても、火を噴くトカゲなんだな」


「サラマンダーを瞬殺して行くのは、ヘーキチさんだけニャ」


 たいした脅威ではなかった。そして、いつも通りの突っ込みだった。

 連続では火を噴けない。その間隙を縫って、近接戦闘で仕留めて行く。

 ミルキーは毒矢だ。痺れる毒があるらしく、動きを止めてくれる。そして、一対一であれば、倒してもいた。短剣で急所を突いている。熱さ対策として、動きも素早くなって来た。一撃離脱のお手本の様になっている。

 訓練を積んでいたのか? 知識だけ持っていた? この数日で急激に成長した?

 とてもありがたい、バディーだな。



「ボスは何処かな?」


「ニャ、ニャンですと? ボスの討伐まで行うのかニャ?」


 私の索敵には、残り十匹だが、どれがボスかは分からなかった。


「……サラマンダーが集まっていますニャ。ボスもいますニャ。それと、進言ニャ。性急過ぎるので、一度山を降りて作戦を立てた方がいいニャ」


 確かに、一ヵ所に集まってはいる。

 各個撃破される危険を回避する知能はあるのか……。


「包囲して来るのか、もしくは突撃か……」


「……聞いてないのニャ」


 まあ、どちらでもいい。

 殲滅するだけだ。私達に油断などない。不意打ちすら、避けれるだろう。


 私達は、歩を進めた。





 すぐ隣で、溶岩が流れている。

 肺が焼けそうなほどの気温。

 私は訓練を受けているが、ミルキーはどうかな?

 ミルキーを見ると、辛そうだが、なにも言わずに着いて来てくれる。見上げた根性だ。


『この娘は、大成する』


 この数日で確信した。

 この娘は心が強い。成功するのは、心の強い者だ。


 そしてサラマンダーの群れが視認できた。

 相手も私達を警戒している。

 そして、それが目に付いた。


「あれが……、『異次元の扉』か。魔力溜まりに魔物が住み着くと生成されるという。私が、この世界に来た理由……」


 扉の近くには、人骨らしきモノが転がってもいる。

 私も、異世界転移場所が、この火山であったなら、若干危なかったかもしれない。

 素手で、数百℃の魔物に急襲されれば、怪我を負う恐れもある。

 初戦闘は、住み慣れた森での、虎で良かったと思えた。


 私は、ライフル銃で狙撃することから始めた。


 ――パン、パン、パン、パン、パン、パン……

 ――バタ、バタ、バタ、バタ、バタ、バタ……


「残り四匹」


 もっと連射できるアサルトライフルとかが、欲しいな。

 そうすれば、終わっていた。

 ここで不利を悟ったのか、サラマンダーが近づいて来た。


 トカゲの速度など、たかが知れている。

 それをミルキーが吹き矢で迎撃した。

 痺れて動けなくなるサラマンダーを、私が叩き潰して行く。頼もしい以外の言葉がない。単独ソロであったならば、無傷とはいかなかっただろう。


「残り一匹」


 最後の個体は、『異次元の扉』の前で鎮座していた。


「あれが、ボスニャ……。撤退を進言しますニャ!」


 そうなのか? 私の索敵には他の魔物との違いが分からなかった。多少大きいくらいだ。

 ミルキーは、敵を見破る目を持っているんだな。

 『鑑定』とか言ったか?


 だが目的を目の前にして戦闘も行わず撤退とは……。慎重すぎやしないか?

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