第2話

「いや~、ヘーキチさんは、オールラウンダーですね」


 おだてて来た。

 元々、単独ソロの猟師だったんだ。

 全てが熟せないと、生きて行けなかった。

 幼少期から森を駆け回り、父親と祖父の背中を見て育った私には、狩猟など、当たり前のスキルだ。


「……前の世界と何ら変わらない。弱肉強食の世界。しいて言うのであれば、銃がないくらいか」


 この世界は、異世界になるのだと思う。あり得ない動物……、魔物がいるのだから。

 そして、銃はなかったが、魔力があった。


 少し前の話になるが、森で迷ったら、この世界にいた。

 戻ろうと大森林を散策したが、諦めてこの世界で生きて行く事を決めた。

 幸いにも食料となる魔物と呼ばれる動物が多かった。

 私には、とても恵まれた環境だったのも大きい。

 まあ、初日に虎と格闘を行い、銃弾三発とナイフ一本で撃退したのはいい思い出だ。いや、最後は、岩で頭蓋骨を叩き割ったか。


 時間ができれば、元の世界に帰ることも考えたい。

 公共料金とかが気になる。追徴課税とかは、避けたい。

 山奥に住んでいたが、手紙が溜まっており、捜索願が出されているかもしれない。


「特殊部隊を除隊してから、地方都市での生活に飽きて、山奥に引き籠ったが……。 まさか異世界転移とはな」


 ネットでの転職サイトに登録したら、ある民間会社から、スカウトが来た。

 人命救助だと聞いたのだが、仕事の内容が余りにも異なったので、契約破棄を一方的に叩きつけて出て行った。

 まあ、私を捉えようとして来たので、会社ごと叩き潰したのだが。


 その後、外の世界が知りたいと思い、街での生活を始めたのだが、続かなかった。

 全てを諦めて、祖父の家に帰ると、待ってくれている人は誰もいなかった。


 狩猟生活は、私にあっていた。

 自給自足の生活……。電気もガスも水道もないが、なに一つ困らなかった。

 しかし、それ以上の生活になるとは……。


 愚痴っていてもしょうがない。

 今を生きよう。



「ヘーキチさん。素材の回収が終わりました」


「助かるよ」


 ジュブスは、マジックバッグの持ち主だ。大量の素材であっても運んでくれる。

 ジュブスが、飲み水を渡してくれた。

 ありがたく飲む。


「ふう~。もう一狩り行くか」


「「「いやいや!?」」」


 三人に反対されてしまった。

 まだ、陽が高いと思うんだが……。


「では、帰るのか?」


「「「換金しましょうよ。ミスリルラビットで一年は遊べますよ」」」


 先ほど言っていたのとは、異なるな。まあ、魔物の種類が予想外だったのだろう。


「分かった。ウィアイスの街に戻ろうか」


 その後、熊の魔物に遭遇した。三人は不意の遭遇エンカウントで混乱している。

 熊が咆哮を上げるが、その威嚇は隙だらけだ。私は、神速の突きで熊の心臓を抉った。

 熊は、混乱しているみたいだ、動けていない。いや、動いたら傷口が広がるか。

 銛なので、抜けない。腕に力を入れる……。

 捻って心臓を無理やり抉り出す。


「ふん!」


 熊の心臓だったモノとその周辺の部位が、抉り出された。

 熊は蹲り、うつろな目で私を見ている。


「安心しろ。必ず私の血肉にしてやる」


 熊が息絶えた。その表情は、驚愕の表情を浮かべていた。言葉は伝わらなかったのだろうか……。まあ、人語を理解している訳もないか。


 後ろを振り返る。

 三人は、絶句していた。

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