第51話 堕ちる巌
「ハハッ、世界樹の欠片も燃えていく。無様なことだよ、天使ルーライも。民のためを思って植えた世界樹を、その民の手によって灰にされたんだからな! 不戦の戒律など授けるのが悪い。奴など、所詮は身勝手な理想論を押し付ける狂人だったというわけだ」
レテはルーライを侮蔑しながら哄笑する。
「同感だわ、レテ。私の愛しい眷属よ。私の祝福を受けぬ子孫などより、あなたの方がよっぽど信頼に値する。やはり信頼できるものは横の繋がり! 仲間との絆こそ最強の力ね!」
ベルルはそんなことを口にした。
世界を滅ぼしかけた邪神が、仲間の大切さを語るか。全く以て狂っている。
大聖女リベラを殺されたことに端を発した怨嗟の連なりが、ここまでの凶事を引き起こしたか。
「さて、あの汚れた血の偽聖女の象徴も、やがて地に墜ちまする」
実際、頭上に浮かぶイエラさんの【月の眼】は閉じ、落下してくる。【ムーンフォール】とかいうスキルによるものだろう。
「リベラ様の聖なる血を汚し、彼女を死に追いやったあの男の威信も、地に墜ちるわね!」
かつてのカルネス卿こと、カルネス一世のことだろう。彼に対するベルルの憎悪は、そこまで大きいということか。
「いつまでもグチグチと過去のことばかり話すな。見苦しいんだよ。シャルロッテ・ルーラオム」
オリヴィアさんはこんな絶望的な状況でも、挑発をやめない。
「私を!」
どうやらベルルの逆鱗に触れたようだ。
「私をその名で呼ぶなぁッ! 忌々しい天使の名がついた名など、二度と口にするな!」
「ハハッ、元気がいいな。その調子で頼むよ、小娘」
さすがの貫禄。オリヴィアさんの方が若く見えるというのに、圧倒的な余裕を感じる。
「老害には退場いただこうか。オリヴィア・アイレスフォード」
「私の故郷の名を覚えて頂いていたとは、光栄だね」
アイレスフォード……神代の理想郷、エルフの棲む土地の名だ。おとぎ話の中でしか聞いたことがない。彼女は、オリヴィアさんは、悠久の歴史の体現者そのものだ。
絶対にここでは死なせない。
それよりもまず、月をどうにかしなければならないが……
「【メテオストライク】!」
イエラから受け継いだ隕石魔法を連発し、ミカエラは月の迎撃を試みる。
だが、焼け石に水。月の落下は止まらない。
「星屑ごときで、月を止められるとは思わんことだ」
ゼストの脳はとっくに焼き切れているらしく、目鼻口から血を流している。
あれだけスキルを連発し、さらにこれだけ強力なスキルを維持しているのだ。無理もない。
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