第3話 仇討ち
霊力だけ上限値がケタ違いだ。これからも伸びしろがかなりある、ということなのだろうか?
詳細は分からない。だがそれより、イエラの呪いが発動した時点で、月を見ることのできる全ての人間の石化が始まる。せめて、祟りがアルバレス家のみに向くようにはできないだろうか?
《ヴェルデ……聞こえるか? ヴェルデ?》
「その声は……レギアさん?」
《そうだ。久しぶりだな》
壮年の剣士の霊が姿を現した。赤を基調としたローブを身に纏い、腰には豪奢な装飾の剣を佩いている。この人こそが、五大勇者筆頭にして【聖剣の勇者】レギアさんだ。
「イエラが怒りを抑えられなくなったみたいだ。俺たちの声も通じない。どうにかして止めてくれないか?」
無茶なことを言ってくるな。
「月にまで作用するほどの呪いとなると、解呪は難しそうです。というか、その前に職に就けないので餓死しそうです」
俺が正直なところを話すと、レギアさんは可笑しそうに顔を歪めた。
「お前ほどの力を持つ者が食いっぱぐれるとはな。随分と世の中は変わってしまったようだ」
レギアさんは聖剣を抜き、俺に向かって構えた。
「剣技【グローム】」
レギアさんはそのまま剣を振り抜く。対する俺は何もせず、刃を受け入れた。
「今のを避けないとは、さすがの肝の据わり方だな」
「霊体の剣なんて、怖くありませんから」
実際、霊体の剣は俺の身体を素通りしただけだった。
「果たしてどうかな?」
「ッ!」
次の瞬間、電流のような衝撃が全身を貫く。そして、技の知識が流れ込んでくる。今の剣技についてだ。もう使いこなせるように感じる。
「こんな芸当が可能なら、もっと早く教えてほしかったものですね」
俺はすぐに体勢を立て直し、皮肉を言う。
「それはできなかった。アルバレス家は我らの仇。みすみす手の内を明かすわけにはいかなかったんでね」
「アルバレスの名を捨てた私になら、教えても構わないと? 何が狙いです?」
俺が問うとレギアさんは剣を納め、地面に胡坐をかいた。
「仇を討ってほしい。アルバレスの血を根絶やしにしてほしいのだ。そうすればイエラの怒りも収まる」
伝説の剣聖といえど、誇りには拘るようだ。まぁ無理もない。アルバレス家のおかげで五大勇者は、邪神に魅入られ道を外れた、大罪人扱いされているのだからな。
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