仮面魔術師と顔無しの姫

加藤ゆたか

お話の始まり

 あるところに、魔族に呪われてしまったみやこがありました。

 呪いを受けた都の人々はき込み熱でうなされて、呼吸も困難な状態になり、苦しみ、意識を失った者は二度と目を覚まさずそのまま亡くなってしまいました。

 北の国に住まわれる聖女様の力も、この都までは届きません。

 呪われた都は魔物を引き寄せるようになり、魔族の呪いに対抗するすべを持つはずの竜族や妖精族を遠ざけました。

 魔法を持たない人族には呪いをはらう力はありません。

 絶望する人々に手を差し伸べたのは、一人の旅の冒険者でした。冒険者は都の人々に顔を隠すように教えます。この都をおおう呪いは顔から体内に入るのだと。

 確かにその冒険者は仮面で顔を隠していたのです。

 布、紙、兜。どのような手段でもよいから顔を隠すように冒険者は言いました。最初は半信半疑で顔を隠していた都の人々も、呪いからのがれる効果を実感すると、皆、顔を隠すようになります。

 特に都の救世主となった冒険者がつけていたという仮面はまたたく間に広まりました。

 それから数十年。いまだ都の呪いは解けていません。

 かくして都の人々は呪いから身を守るため、仮面をつけるようになったのです。

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