第10話 さようなら

雨が降る


晴れ間の空から雨が降る


時折

暗くなった雨雲からも雨が降る


やんでは忍び寄る

季節の雨の音が聞こえる


雨はやがて

冷たい風を運んでくるのであろう


暖かいとは言えなかった

暑い日差しの中で

思う人は一人だけだったと言うのに


雨は

慰めではなく

深い谷間へと誘いにくる


胸に未だ残る思いを

暖炉に焚べる薪のように

積み重ねては溜め息をつく


いつの間にかやって来る雪の女王は

あの暑き日々を氷の世界に閉じ込めるのであろう


その思いを暖炉の火で溶かそうとは思わない


どうか

雪の世界を支配するあなたへ


その氷で包んだまま

どんなに強い炎にも耐えて

今ままで通りに

やり過ごさせてほしい

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