第2話 虎人族タチアナと訓練とご褒美
名称:タチアナ・トムソン
体格:175cm、筋肉質、巨乳、短髪、栗色の癖毛、虎耳と尻尾
種族:虎人型獣人族
年齢:18歳
備考:元傭兵
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「いいぞ坊、型も様になってきたな! 少し休んだら私と組手だ!」
「はっ、ッ、はい、タチアナさん!」
ヘンリー坊は素直で可愛いなあ。
稽古を始めた頃に比べて剣筋も綺麗になってきた。
ガキにとっては詰まらない型稽古を真面目にやってる証拠だ。
普人族の男の訓練と聞いたときはどうなるもんかと思っていたが、仕事を受けて良かったわ。
あたしの勘も捨てたもんじゃねえな。
それなりに時間をかけた型稽古で坊は息も絶え絶えで地面に寝っ転がっている。
あたしは音を立てないようにさり気なさを装いつつ近づくと、じっくりと坊を見下ろした。
息の度に上下する胸とおなか。
首筋に流れる汗。
そして膝上からむき出しになった足。
いやあ無理言って鍛錬服を半ズボンにして正解だったわ!値千金だぞ当時のあたし!
坊の為に設けられた鍛錬スペースにいるのはあたしと坊だけだから気兼ねなく凝視できる。
まあ体を壊さないように弟子を注視するのは師匠の義務なんだが建前は大事だよな。
うーん最近は気温も上がってきたから汗の量が少し多いな。
息が整ったら果実水でも飲まよう。
しかし健康的な男児の汗の匂いってマジで最高だよな。これだけで金取れるってマジで。
金と住処と飯を用意してもらってする仕事がこれとか天国じゃん。
あたしは不審に思われない程度に息を吸い込み坊の匂いで胸を満たす。
天使くせえ《ref》獣人族は最も嗅覚に優れた種族である《/ref》。
いや本当にくせえわ。念入りにマーキングしすぎじゃねえかあの女。
ヘンリー坊はまだ12歳だぞ発情すんじゃねえよ。
確かに坊は性格良くて将来が有望だが、ものには限度ってもんがあるだろ。
これがただのパン屋の女ならすぐにでも分からせてやるところだが、あの小娘はマックガバン家だ。
麦を一手に扱う商業組合のトップを敵に回すのは得策じゃない。
金と地位がある癖に品がねえよ。
こりゃあ坊には訓練後は念入りに風呂で洗わせねえとダメだな。
ひでえことしやがる。
「よし、果実水を飲んだら組手だ。使用するのはそのまま剣。あたしが止めというまで組手は続ける。準備は良いな?」
「はいっタチアナさん!」
ヘンリー坊は本当に可愛いなあ!
それはそれとして剣の筋も良い。
臆することなく相手の間合いに入るのは勇気がいるもんだが、坊にはそれがある。
2度、3度と振られる剣を弾き、隙を見て返しの剣を振るう。
よしよし、型に沿った防御ができてるな。呑み込みのいい子だ、…おっと、
「よく見ていたな! 筋が良いぞ!」
良く出来たらちゃんと褒めてやらねえとな。
おっ、口元が緩んだな、やっぱ素直で可愛いなあ。
何度か続けてみるが問題はなさそうだな。
じゃあ次は対応力を見るか。
息を吸って、吐いて、はい今。
坊が呼吸を整えようと一歩引いたのに合わせて間合いを潰す。
構えはそのままのぶちかましだ。
「ッ! ぐうっ!」
で、それを剣で受け止めて鍔迫り合いか。
それはいかんぞ。
あたしは少し力を込めて坊を崩すと、坊の首元に剣先を当てたまま引きずり倒した。
「はい止め。体格で負けてるのに組み付くのは悪手だ。受けるかどうか一瞬迷っただろ? 実戦なら迷うと死ぬぞ」
「はい…」
「ああいうときは地面に転がってでも避けろ。
種族的な能力差はそうそう埋められるものじゃないからな。相手の土俵で戦うものじゃない。ああ、全体としての動きは悪くなかったぞ」
ちょっと凹んでる坊も可愛いなあ。
あたしは坊を押し倒した状態で、至近距離で坊の顔を見て悦に浸っていた。
相手を屈服させた態勢で講釈を垂れるのってすげえな。
なんか満たされるものを感じる。
坊って意外とまつ毛も長いんだよなあ。
いかんいかん、もうちょっと密着していたいんだが、変に思われたくないしそろそろ離れるか。
誇り高き虎人族のタチアナ様が成人前の男児に欲情してるなんて噂でもされたら生きていけなくなる。
というかヘンリー坊に嫌われたくない。
しゃーねえ次だ。
仕事の出来る女であるあたしは倒れていた坊を抱え上げると指導を続けることにした。
組手と反省会を何度か繰り返して、頃合いを見て訓練を切り上げる。
根を詰めすぎても良くはない。休憩と水分補給を挟んで最後の訓練だ。
ッしゃあッ!待ちに待ったマッサージと柔軟の時間だぁ!
合法的かつ大胆にスキンシップ出来る時間だからなあ!ボーナスタイムだぜ!
「ほら、ちゃんと足を延ばせ。抑えといてやるから」
「痛たたた痛い痛いってばこれ以上無理ですってぇ!」
「よーしこのまま10秒ホールドだぞー。いーちぃー、にーぃ…」
「長い!一秒が長いよタチアナさん!」
「我慢しろ」
坊の伸ばした膝を手で抑えて、抱え込むようにあたしの胸で坊の背中を押してやるが、坊は拒否するそぶりも見せない。
嫌がるのは痛みの方であって、あたしとのスキンシップじゃないんだなこれが。
坊のこういう無防備なところ可愛くて仕方ねえんだけど、ちょっと心配になってくる。
普通の男ならこんなにベタベタされて逃げ出してるんじゃないだろうか、まあ坊以外の男とか知らんから酒の席で伝え聞いた話だけども。
鼻が利く獣人は密着状態なら臭いで相手の精神状態が多少は分かるからなあ。
まあ内心嫌がってるか分かる程度だが。
その点坊は全然嫌がってないからなあ!
あー可愛いなーでもなー成人前の依頼人の息子だからなぁ!
「よし、いい子だ。次は逆な」
「あいったたたた痛い痛いぃ」
「痛くないぞー、いぃー…ちぃー…、にーぃ…」
「長い長いって!さっきよりも長いって!」
しかしこうも密着してると天使くせえのが鼻につく。
こっちはこんなに我慢してるっていうのによ、なんか腹立ってきたな。
落ち着け、あたしは誇り高き虎のタチアナ。
できる女だ。
「次は股を広げて倒すぞー、息をゆっくり吐けよー」
「いたいぃ…」
ヘンリー坊の耳って良い形してるよな。
他の奴のなんて態々見たりしねえけど、うん、アレだわ。エロいわ。
パン屋の小娘がこんなに好き勝手してるならちょっとくらい良いんじゃなかろうか。
あたしの中で性欲が首をもたげているのを感じる。
いかん坊の耳から目が離せない。
頭では分かっているのに体と口が言うことをきかん。
「…よーし、よく頑張ったな」
「めっちゃ痛かった」
「頑張ったヘンリー坊にはご褒美をやろう、耳を貸せ」
「んー…、うん…?」
何が耳を貸せだよお前。
しれっと耳にキスしてんじゃねえよお前バレたらどうすんだよマジで。
母祖に恥ずかしいと思わないのか、年下の男のそれも未成年相手だぞ。
一族に知られたら袋叩きの上で放逐されても仕方ねえ所業だぞ。
やわらけえじゃねえか。
未だかつてないほど興奮してきた。
「これがご褒美…?」
「お、なんだ不満か? あたしのこれは安くはないんだぞ?」
「不満じゃないけどさあ」
「おーし、なら満足するまでしてやろうじゃねえか」
何なんだよタチアナお前。
過去イチで口が回りすぎだろ。
うわーやわらけえ、ヘンリー坊の耳すっげえ。
おいおいおい舐めるのはやべえだろちょっと汗の味がするな最高かよ。
いかん性欲と罪悪感が留まるところを知らない。
「くくくっ、随分とくすぐったそうだな、耳にされるのは初めてか?」
「そりゃそうでしょうよ…うわあ!」
そうかそうか、耳のキスはあたしが初めてかそうかよっしゃあ。
もはや理性の鎖から解き放たれた浅ましい獣のようだった。
まああたし虎人だしな。本能強めなんだよ。
理性に反して勝手に動くあたしの体は、恥ずかしがるように身じろぎするヘンリー坊を後ろから抱え上げると何度も坊の耳にキスを落としていく。
調子に乗って舌先で舐めても、坊の体臭からは嫌悪の匂いがこれっぽっちも感じなかった。
やべえよ坊。
いや、やべえのはこんなことしてるあたしなんだが。
でも唾つけ
「んははは、くすぐったいってば」
「おう満足したか? するまで続けるからな?」
「した、満足したよ…満足したって言ってるでしょ!」
「今のはサービスだ。皆には内緒だぞ?」
追加でさらにキスした上に、さりげなく口止めまでしてんじゃねえよ。
これで初犯とはとても思えねえな。
手口がこなれ過ぎてんだよ。
恥を知れ。
めっちゃ興奮したわ。
「今日はここまでだ。片づけはこっちでしとくから、坊は風呂入ってきな。結構汗かいただろ?」
「はい、タチアナさん今日もありがとうございました」
「午後も頑張れよ、また明日な」
ヘンリー坊は人懐っこい笑顔で礼儀正しくお辞儀をした。
頭を下げた相手は恥ずかしくも性欲に飲まれた女だというのに。
背徳の味とはこういうことを言うのだろうか。
また一つ賢くなってしまったなあ。
坊の背中を見送ると、散らばった木剣を回収する。
ちょっと芝が荒れちまったかな、後で手入れしとかねえと坊が怪我するかもしれん。
素振り用の巻き藁も交換しとくかね。
坊は物覚えが良いから、木剣がある程度済んだら長物を教えてみるか。
うん。
あたしは現実逃避を試みたが無理があった。
まだ口元に余韻が残ってるわ。
やっちまったなあ。
坊の耳に唾つけしちまったなあ。
一回ならセーフかもしれんが、さっきので何回したんだっけか。
というか坊は全然嫌がらねえのな。
はー、やっべえ。
あの小娘のこと悪く言えねえな。
他の男なんてもう目に入らねえわ。
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≪TIPS≫ 獣人族
獣人族のキスはマーキング
マーキングの上書きは宣戦布告を意味する
公正決闘委員会への届け出と決闘見届け人の立会いのない決闘は法的に認められない違法行為である
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