第10話
決行の日、僕たちは江ノ島に来ていた。
ずっと前から理香と来てみたかった場所だ。
「海はいいねぇ」
そう言って理香は海を眺めている。
今日の理香の服装は、青いワンピースに翡翠色のイヤリングと、彼女自身が海の様だった。
今夜僕たちはざっと数えても三十人近くの人を殺す。
僕はそんなこと間違い無く悪いことだと考えていた。
ただ、そうでもないのかもと、思い始めていた。
僕が小学校のクラスメイトを全員殺して、僕がいじめの復讐だと証言すれば、それは間接的な死ではなく、直接的な死、を、ニュースや報道を通して伝えられるのかもしれない。
「ねえ、理香、もし僕が捕まったとしたら、理香は誰か別の人と幸せになってね」
由奈は僕に海水をかけてきて言った。
「大丈夫、そんなことにはならない」
理香はびしょびしょになった僕をみて笑った。
そのあと、僕たちは水族館に行き、江ノ島の神社に行った。
こんな時間が永遠に続けばいいと思った。
今は25時36分、計画を実行する時がきた。
僕と理香は最初の一人目に向かった。
理香の考えた侵入経路は難なく住居へ進入を許した。
一人目は、もう名前すら覚えてない女子生徒だった。
僕が躊躇っている様子をみて、理香はなんでもない様に彼女の胸に包丁を突き立てた。
「次行こう」
僕と理香は次々に人を殺していった。
面白いくらいに上手く進んでいく殺人に、僕は困惑したけど、それと同時に理香の計画の周到さに驚いた、理香は全員の就寝時間や消灯時間まで記録していて、各地の防犯カメラの位置も含め、最善の行動を選んでいた。
気づけば最後の一人まで来ていた。
「秋君、最後の一人だよ、最後は秋君がやったら?」
そんな最後の一口どーぞ、みたいに言われても困る。
でも確かに最後の一人は僕が殺さなくては行けない気がした。
目の前にはあの日、僕をいじめていた荒木涼介が眠っていた。
久しぶりにみた荒木の顔は当時から何も変わっていない様に見えた。
「秋君?早く殺さないと」
「うん」
僕は荒木の胸に包丁を落とした。
「お疲れ様、秋君、全部終わったね」
「うん」
「さて、ずいぶん早く終わったから、ちょっとお散歩でもしようか」
僕は酷い疲労でフラフラとしていた。
だから、目的地に着くまでどこに向かっているのかわからなかった。
たどり着いた先はあの裏山だった。
「じゃあ、仕上げをしよっか」
理香が小さな声で何かを言った気がしたがよく聞き取れなかった。
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