異世界転生したヤギ、暴食のスキルで国を覆う草花を食べ尽くす

三桐いくこ

短編

 俺はヤギベエ。動物のヤギだ。オスである。


 普通のヤギだが、ある日、毒草をうっかり食べて死んでしまった。


 何故か死んだはずなのに、キラキラした空間にいる。


「フォッフォッフォ。わしは神じゃ。

 ヤギよ、お前に新しい人生を授けよう」

「メェ〜(毒草を食べて死んだから、何でも食べれるようになりたい)」

「よし、お前にピッタリのスキル“暴飲暴食デッドオアグラス”を与えよう。

 ただし植物限定じゃ。ヤギじゃからな」


「メェ〜(ありがとう、神様)」


「達者でな〜」




 気づくと神様はいなくなっていた。


 鬱蒼と生い茂る草、草、草。


 食べ放題だ。


 早速俺は食べ始めた。


 ポリポリポリ……


 う、うめぇ〜!


 こんな草、食べたこと無い!


 俺は夢中になって食べ始めた。


 暴飲暴食デッドオアグラスのおかげが、全然お腹いっぱいにならない。


 ポリポリ……

 ポリポリ……


 ムシャムシャムシャ……




 たまに反芻を挟みつつ食べる。

 一週間経っただろうか?


 気づいたら鬱蒼と茂る草は無くなり、畑や家が出てきた。

 なるほど、草花が覆い尽くしていたのか。


「メェ〜(面白くなってきたぞ!)」


 ポリポリ……

 ポリポリ……


 ムシャムシャムシャ……


 なんと!草の下から川が出てきた!

 どれだけ旺盛な草なんだ!


 ずずず、と水を啜っていてびっくり。

 水に映った俺の体は、とても大きくなっていた。

 犬くらいの大きさだったはずが、3メートル程の大きさになっている。

 スキルのおかげだな。また草を食べ始めた。


 ポリポリ……

 ポリポリ……


 ムシャムシャムシャ……


 体が大きくなったせいか、草を食べるスピードも速くなった。


 ポリポリ……

 ポリポリ……


 ムシャムシャムシャ……


 集落や城壁が出てきた。


 ポリポリ……

 ポリポリ……


 ムシャムシャムシャ……



 マンホールのような扉が出てきた。

 俺の体では何も出来ないので無視だ。


 ポリポリ……

 ポリポリ……


「ヤギだ!」

「ヤギ!? 大き過ぎる!」


 何だか周りがザワザワとしている。


 ポリポリ……

 ポリポリ……


 ムシャムシャムシャ……


「貴方様がヤギの神か!」


 おーい、と俺を揺する何かがいる。

 振り返ると人間がたくさんいた。

 何だか小さいな。


「あなた様のおかげで外に出られました!!

 ありがとうございます!!」


 みんなが俺に礼をしている。


「メェ〜(どういうこと?)」

「魔術の失敗で、草が恐ろしい勢いで栄え続け、我々は地下へと逃げたのです」

「メェ~(なるほど!全部食べていいんだな?)」

「どうぞどうぞ!」


 反芻を終えてまた食べる事にした。


 ポリポリ……

 ポリポリ……


 ムシャムシャムシャ……


 国がまるまる出てくる頃には、全長15メートルの超巨大ヤギになっていた。

 そして俺は国の守り神として、崇め敬われているらしい。

 食べ尽くして草が足りなくなってからは、人間が魔法で草を生やしてくれるようになった。


 そうして俺は幸せに暮らしたのだった




 完


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 後書き

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