降りしきる雪をすべて玻璃に-2

「もともとはあやかしの存在を認めてもらって幽世の安定に貢献したいという気持ちから物語を綴ってきましたが、今回、物語を書くことで自分が幸せになれることを知ってしまったので、この幸せを読んで下さる方に還元したいのです」


そうも言う雪月の作品は、きっとこれから大団円の話が多くなるだろう。悲恋も美しいけど、人々に夢を持たせる大団円は、やはり未来がある。華乃子も、良いですね、と微笑んで同意した。


「私がまたお手伝いできればいいのですけど……」


「僕からもう一度編集長にお願いしてみます。九頭宮さんのこともどうにかしなければなりませんし……」


華乃子は桜島での寛人のことを思い出した。あの時華乃子に妖しい目で迫った彼は、果たして華乃子を諦めてくれるだろうか。現世に戻ったら彼の許で働くことになるわけなので、そこは不安が残る。その不安を解消するために、一度は華乃子の為に人間になろうとした雪月は、雪女で居ることを選んだ。妖力を持っていた方が、寛人から何かしらの攻撃があった時に対応しやすい、というのが雪月の判断だった。


「寛人さんは私の十五年という長い時間をかけて、あの一瞬に賭けていたのだと思います。そう考えると、龍は蛇が長く生きた姿という説もありますが、今思うと確かに蛇のように周到でしつこい性質だった気がします……」


ふむ、と雪月は頷いて、現世でも出来るだけ早く結婚式を上げましょう、と提案してくれた。


「既婚、ということになれば、まず今まで通りには華乃子さんを誘えなくなります。僕も出来るだけ一緒に居るようにしますので、何とかお守りします。力のことで不足があれば、今は光雪さまを頼るのも一手かと。僕も跡目としての力は備えておりますし、そうなれば彼もそうそうなことでは手を出してこないでしょう」


雪月と同じく現世と幽世両方に身を置く寛人だからこそ、二重の用心が必要だ。それを光雪と雪月が請け負ってくれるということで、華乃子はやっと安心出来た。

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