第13話『使用する修法』

「顔の話はやめようよ。十人十色でいいじゃない。——何の話ししてたんだっけ?」

「トラディショナルオークツリーの平均年齢のこと?」

「その前」

 ナタルがみんなに聞いて、オリーブが答えていく。

「えっと、仕事でどんな修法を使うのかって話だっけ?」

「それそれ。後学のためにも聞いておきたいなぁ。アロンが言った二つの修法は、俺習得してないんだ。どういうことが可能なんだい?」

 これにはアロンが答えた。

「ああ、タイムフリーズダークムーンの方は、文字通り時間凍結の修法だ。闇の精霊界の加護を得て、因果界の地下世界、月の洞の光源である紫月の力を召喚する。紫月は沈むことのない、半永久的に中天に懸かる古代魔法として存在する。本来なら現代の人間がどうこうできる代物じゃないんだが。闇の精霊界を媒介すれば一部使用することができる。それがタイムフリーズダークムーンの極意と言っていい」

「フムフム……」

 例によってナタルがメモを取る。

「何が可能になるかというと、有り体に言えば状態保存なんだが。今度の仕事の場合は、民芸品の劣化が激しいからテクスチャとして保存したい。それには民芸品の劣化を食い止めるのが前提になる。劣化を止める=状態保存な。劣化は時間とともに進行するから、時間を凍結することが即ち物質の情報を保存するということになる。これらは再現することが難しいからこそ発生する手間なんだ」

「ギ、ギブアップ」

 ナタルがあっさり音を上げる。だがそれは彼ばかりではなかった。

 アロンはがっかりしたが、端的にまとめた。

「つーまーりー、①闇の精霊界の加護を得る②紫月の力を召喚する③民芸品の時間が凍結する④それ以上劣化させずにテクスチャを再現することができる。というわけ」

「あー!」

 やっと全員の表情が明るくなった。額に手をやるアロン。

「だって専門的すぎるんだもんよ、アロンの説明は――」

 ポールがぼやく。

「一つひとつかみ砕いたのが敗因よね」

 リサも悪気もなく言いのけた。

「俺のレベルに合わせてくれると助かるんだけど……」

 ナタルが情けなく言って、アロンを一層落ち込ませる。



















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