第12話『引き受けた仕事』

 リーダーたちは円卓を囲んで座談会をしている。

「いやぁ、みんな。今回のことは本当に感謝してる、ありがとう」

 フィリップが言えば、NWSは「いやいや……」と手を横に動かす。

「助かったのはこっちだよ。最近起こったことは、全部リーダーの間だけであったことだからさ。NWS全体の案件にするには、ややこしいのばっかりだし、正直身動き取れなくなるところだったんだ」

 マルクが言うと、みんな「うんうん」と相槌を打った。

「世界中に知れ渡っちゃったからね」

「どっかの偉人のおかげでな」

 ポールの言葉をタイラーが混ぜっ返す。

「フィリップさん、シンプルハートディグニティはなんの仕事を引き受けたんですか?」

 ランスが聞くと、フィリップが答えた。

「ああ、空想の里の悪霊退治ですよ」

「——あの一番厄介そうな」

 ランスが言葉を濁すと、フィリップは苦笑した。

「いいんですよ、ウチのは血の気の多いのがやたらいるので。顔面蒼白になった方がちょうどいいくらいで」

「はまり役というわけですね」

 ルイスがしたり顔で頷く。

「悪霊っていうと……十字架と聖句と聖水の3点セットが必要だよね」

 ポールが諳んじると、アロンが訂正した。

「それは一般的な方法だろ。因果界の場合は、おどろしい空想に負のエネルギーが力を与えてしまったのも悪霊と分類するんだ。元が空想なだけに、精神への悪影響は絶大だ。クイリナリスの空想の里が最も神経を尖らす問題だから、任せてもらえるのはその一部だと思うが。普通の負のこごりを除去するのと違って、素早いし変幻自在だし、ランスさんの言う通り厄介なことこの上ない」

「さすが詳しいなぁ」

 フィリップが感心すると、タイラーが言った。

「ふーん。すると、修法者の修法陣なしには浄霊もままならないな」

 頷いたフィリップが内情を明かした。

「そうだな、俺たちの代表のヤガミさんがその辺りは知恵を貸してくれると思う」

 ヤガミ・エターナリスト。

 シンプルハートディグニティの代表で修法者。30代前半の眼鏡の似合うインテリだ。

「噂で聞いたんだけどさ――ヤガミさんって、怨霊退治のエキスパートなんだって? 昔、クイリナリスで名を馳せたって」

 ナタルの言葉に、フィリップが驚いた顔をした。

「知ってたか? そうなんだよ。怨霊の一体や二体、一睨みで浄化するって話だから半端じゃねぇよ」

「すげ。じゃあヤガミさんに出張ってもらえば――」

 ポールが言いかけたが、フィリップが遮った。

「それがヤガミさん、クイリナリスでトラウマになるような目に遭って、パラティヌスに移住を決めたらしいんだよな……」

「じゃあ今回の件どうすんのよ」

 畳掛けるポール。腕を組むフィリップ。

「いや……それで逃げるようなヤガミさんじゃないってことは、俺たちが重々——できないならできないで現地の修法者に頼むくらいはしてもらえると思う。インテリにはインテリのやり方があるさ」

 そうは言っても、フィリップも考えているようだった。



















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