第5話『氷解』
午後5時、1日目の作業が終了した。
全体でマーカー班26400本/1.128㎢、ツリー班7432本/0.372㎢、マーカー班37㎢の作業量だった。
マーカー班99%、ツリー班98%、アース班115%の達成率で、初日としてはまずまずと言えた。
ガーネットラヴィーンの東外れの丘に集まったNWSメンバーたち。
辺りはすっかり暗くなっている。
リーダーらによる光の精霊の創り出す光球で明るく照らし出され、みんな今日の達成感に心躍らせている。
挨拶はやはりマルクから。
「皆さん、お疲れ様です」
「お疲れ様でーす」
「初日の今日は、各班とも90%以上を達成し、順当な滑り出しになった。仕事する前で現場の気温状況がわからず、防寒対策に外出した件を除き、さしたる混乱もなく、まずは胸を撫で下ろしている。明日からの仕事のために、改善点があればすぐに対処してもらいたい。このまま現地解散にするが、疑問点があればこの場でリーダーに確認してくれ。それでは解散! お疲れさまでした」
「お疲れ様でしたー!」
すぐに帰途につく者。カエリウスの宿泊施設に泊まる者。防寒着を買いにカエリウスのホームセンターへ行く者。リーダーらに疑問点を話す者……それぞれ思い思いに散らばっていく。
「ミルラー! マーチのカフェでお茶しない?」
メグに声をかけられたが、ミルラは言った。
「ちょ、ちょっと待ってもらっていいですか?」
「うん、いいよ」
メグの他にパティ、メリッサ、コノミ、ユチカが集まっていた。
ミルラはポールのところへ行って声をかけた。
「ポールさん……!」
ポールはキーツと何事か相談中だった。
「ああ、ミルラちゃん。聞きたいことがあったんだよ」
「私もです。あの、サバラスさんのことなんですけど……」
「うん」
「民話の里の人に私の防寒着を頼んだ時——何も打合せしないで、サバラスさんが独断で決めたみたいで、係りの人が戸惑ってたみたいでした。お金をお支払いしますって言ったんですけど、気にしないでください、と言われてしまって。どうしたらいいでしょう?」
「なるほど、よくわかった。民話の里にはこれから往ってみるから、明日にでも取り決めたことを教えるよ。サバラスさんにも話すつもりだから、安心して今日のところは帰んなさい」
「はい、よろしくお願いします!」
「あ、ちょっと待って!」
「はい?」
「サバラスさんの小屋に入ったんだよね? こう言っちゃなんだけど、サバラスさんが好きそうなものわかんないかな。できれば嗜好品がいいんだけど」
「あ、えーと、タバコがお好きみたいでした。それと、清酒の酒瓶が結構転がってました」
「ありがとう、それは有力な情報だよ」
「あの、私がお代を……」
「いいんだ、気にしないで。これはリーダーの領分だから、ミルラちゃんはタッチしなくていいんだよ」
「はい、すみません。それでは失礼します」
「お疲れさん」
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