腹ぺこスコルと黒魔女ハティのお散歩ライフ~焼くしか出来ない私でよければ~

遥 かずら

第1話 プロローグ

 テレビや映画で何度も見たことがあるファンタジー世界。


 それこそ可愛い制服を着た女の子たちが簡単に魔法を放つシーンなんかは、憧れたし自分もそんな世界で生きられたらな――なんてことを、一度以上は思い描いたことがある。

 

 あくまでそれは映画の中の世界であって、現実ではせいぜい体験アトラクションとかで楽しめる程度。


 夢を見るのは自由だし簡単なことだけど、それはそれとして自分の中ではきちんと片付けてた。

 それなのに、今わたしが体験している状況は夢のようで夢じゃないらしく、結構ピンチな時間。


 様子で判断するに、間違ってわたしが召喚されちゃった的な。


 彼女たちは全身黒いブレザーコートを着ていて、どっちかというと可愛い制服を着ている。もしかしてどこかの魔術学園なのかも。


 異世界召喚した反動なのか目を回している子がいるし、教師っぽい人も驚いている。

 

「ア、アハハハ~」


 冷や汗をかきながら苦しまぎれに笑うしか出来ない。それくらい今まで生きて来た中で一番注目を浴びている。どうしてこんなにたくさんの人に見つめられているのか、そもそもここはどこで何を求められてる感じなのかさっぱり分からない。


 よく分からないけど、どうやらわたしは『異世界』の『魔法学園』に召喚されちゃった。


「あ、あああ、あなたは魔女ハティ! どうしてあなたが!?」


 もくもくと上がった白い煙が晴れる――と同時に、赤いリボンのセーラー服を着た女の子が目の前に現れた。赤いリボンよりも真っ赤な顔をさせて、物凄く怒っている。


 何だかすごく驚いてるし、こんなはすじゃないといった表情をしてる相手に出来ることといえば――

 これしかない。


「あれぇ? お肉はどこ? わたしは誰?」  

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