魔王討伐失敗のやり直し~クラス転移に遅刻し、能力が貰えず最底辺に落ちて、地獄を見た。魔王討伐に失敗して、俺は死んだが、遅刻した日に巻き戻った。前回のてつは、踏まない。ざまぁしてやる~

喰寝丸太

第1話 俺が死んだ日

 俺は波久礼はぐれ史郎しろう

 高校2年生だった。

 俺達クラスは召喚され異世界転移した。

 召喚の目的は魔王討伐だ。

 良くないが、それはまだ良い。


 問題は俺が遅刻して職業を貰えなかった事にある。

 原因が遅刻のせい100%だったら、俺の怒りも収まった。

 俺が職業を貰えなかったのは2つ職業を奪った奴がいたからだ。


 奴の名前は野神のがみ勇清ゆうせい

 俺の宿敵だ。

 だが、職業がない俺はスキルも芽生えない。

 特殊な能力は何にもなしだ。


 一方、職業が二つある野神のがみの特殊能力は2倍。

 能力なしでは敵わなかった。

 食って掛かった俺を野神のがみはボコボコにした。


 そして、野神のがみはクラスメイトにFランクからSランクの階級を付けた。

 とうぜん野神のがみはSランクだ。

 取り巻きはAランク。

 攻撃能力のある者はBCランクに。

 生産職はDEに。


 俺は最下級のFランクとされ、馬鹿にされ虐げられた。

 暴力を振るわれるのなんて日常茶飯事。

 ご飯さえまともに与えてもらえず待遇は奴隷以下だった。

 それも今日で終わりだ。

 今日は魔王討伐の日。


 この扉を開けて魔王を倒せば、日本に帰れる。


「おい、Fランク。ぐずくずせずに扉を開けろ」

「トラップを確認してからでないと」

「お前なんか死んだって構わないんだよ。殴られたいか」


 俺は渋々扉を開けた。

 玉座があり魔王が腰を掛けて待っていた。


「待ってたぞ」


 部屋に入った俺達に対して、魔王から威圧が放たれる。

 クラスメイトの半分は跪いていた。

 俺も例外ではない。

 野神のがみ達はまずは遠距離攻撃をするらしい。


「みんな、撃ちまくれ」


 野神のがみの腰ぎんちゃくの寄居よりいが命令すると、後衛職が次々に攻撃を放つ。

 雨あられと降り注ぐ攻撃を魔王は大剣を一振り、攻撃を全て打ち消した


「まずい。立て直そう」


 そう言うと寄居よりいは水晶玉を投げた。

 魔王が停止して次の瞬間パリンと音がすると魔王が再び動き始めていた。


「嘘だ。十万人分の魔力を込めて作ったのに。前衛職、攻撃だ。野神のがみさんもやっちゃって下さい」


 前衛職の攻撃は全て一蹴されている。


 魔王が大剣から黒いオーラを出し大振りする。

 前衛職も後衛職も倒された。

 一人残った野神のがみが攻撃を仕掛ける。


「シャイニングスラッシュ。ホーリーバッシュ」

「ぬるいわ」


 魔王の大剣でなぎ払われ野神のがみはずたぼろになった。


「くっくっくっ、弱いな。弱すぎる。こんな奴ら、わしが相手をするまでもない。どうだ、生贄として一人差し出せば、元の世界に戻してやろう」

波久礼はぐれ、お前が生贄だ」


 野神のがみが俺を指差した。

 くっ、こんな事って。


「契約は成立だ。トランスファー」


 クラスメイト達が消えていく。

 どうなったんだ

 野神のがみ達は日本に帰ったのか。

 俺だけを残してか。


「では邪神様の生贄にしてやろう」



 俺は魔王に心臓をえぐり出された。

 そして、時が止まった。

 俺は死ぬのか。

 こんな所で。

 どこで間違った。

 いいや俺は間違ってない。

 ずるして職業を二つ取った野神のがみが悪いんだ。


 魔王を討伐出来なかったのも奴のせいだ。

 ランク付けして、クラスメイトにやる気をなくさせた。

 女生徒を性奴隷にして、戦力外にした。


 クラスの八割がたが戦力にならないんだったら、魔王討伐など叶うはずがない。

 日本を一目見てから死にたかった。


『こんな結末は許さん』


 怒りに満ちた声が聞こえてきた。

 誰だ。

 俺だって許さない。

 腸は煮えくり返っている。


『そうか、イレギュラーがあったのだな。なら修正するか』


 暗転した。


『イレギュラーはお前だ。お前が遅刻しなければ、野神のがみは強力な力を得る事ができなかった。さすればクラスメイトは一致協力して魔王を倒す事が叶ったのだ』


「全て俺のせいだって言うのか。野神のがみに罪はないのか?」

『もちろんある』

「じゃあ俺にどうしろと」

『復讐させてやる。その代わりに魔王討伐は成し遂げろ』


「ああ、いいぜ。復讐できるのなら、魔王にだって喧嘩を売ろう」

『お前の遅刻の原因を取り除こうとしたが無理なようだ。済まぬ。神にも限界はあるのだ』


「どういう事だ!」


 そう怒鳴った時、俺は炎天下でガス欠のスクーターを押していた。

 生き返ったのか。

 スマホを見ると召喚された日に戻っている。

 時間は?

 遅刻だ。

 いや、まだ間に合うかも知れない。

 野神のがみが職業を得る前に転移できれば、2つ職業を取らないようになんとかできる。

 弱体化してれば野神のがみを殺す事も可能だ。


 俺はスクーターを道端に寄せて駆け出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る