ウソツキウサギのなきむしまほう
海藤史郎
7日目
ボクは走る。
呼吸なんてしたことがなかったのに、息が出来なくて苦しいと感じるなんて不思議だ。いや、違う。呼吸なんてしたことがなかったから、息が出来ない苦しさなんて知らなかったんだ。
苦しくて足がもつれて転びそうになる。
もう遅い。だから走るのを止めよう――もう一人のボクが、そうささやく。
でもボクは走らなきゃ。
「っねえ、カミサマ! おねがいだから――」
――まだボクに、もう少しだけ、時間をください。
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