昼想夜夢
yuerin
第1話 澄んだ空、悪魔は笑う
7月6日 6時限の終わり。
ミンミンと蝉が鳴き、期末テストが返されている中で
白波 空は遠い彼方を見ていた。
紙が捲れる音、悲喜交交な教室でただ彼だけは静かにそれを見つめている。
「おい、白波!」
担任の呼ぶ声に慌てて、机と机の間の通路を走る。
その様は何か抜けていて、少し笑ってしまうような出来事だった。
数学74点、中途半端な点だなと思いながら、自分の席へと帰る。
午後の授業の終わりを告げるチャイムは鳴り響き、
夏休みの期待感に当てられたものが騒がしく、過ごしている。
簡潔に的確に担任は
それが済むと騒がしさは元へ戻り、段々と生徒は帰っていく。
いつもの日々、そう思いつつも空はリュックを背負って、校舎から出て行く。
高校一年の夏、甘酸っぱい青春もない彼は常に空のことを考えている。
様々な面を見せる空、いつしかそれに惹かれていた。
そのため彼は学校が終わると決まってそこへ行く。
森の中にある天文台。誰が作ったのか、何のためにあるのかは分からないが、
空はそこを秘密基地として空を観ている。
潮風が吹き、穏やかで自然豊かな空凪町。
田舎故に夜に灯る光は少なく、月と星は克明に見える。
海と空が両方見えるこの天文台はこの町で一番いい景色が見える場所だろう。
家にはいい思い出がない。父親は働かないニートで、
母親はそんな父親に愛想尽かして出ていった。俺を置いて…
今ではお婆ちゃんが親のようなものだった。
でも父親がいる家はなにか窮屈で居心地が悪い。だから俺はここにいた。
夏休みなぞ窮屈で仕方ない場所に幽閉される地獄のような時間だ。
だから楽しみも見いだせない。友達はいるが特別親しいわけでもない。
俺はこの天文台で、俺は日が暮れるまで多く残されている研究書を読んでいる。
日が落ちたら大きな望遠鏡で星を観測する。
それに特に意味はない。ただ暇だから星は綺麗だからという理由でしかない。
早く時間が過ぎて欲しかった。ただこの窮屈な場所から逃げ出したかった。
それはおばあちゃんに悪いと思っても俺はいたくなかった。
それだけの話だった。でもなにか親孝行みたいなことをしたかったと思った。
これは彼女との夏の思い出。
長く短い永遠の物語、星に彩られた夢の話。
未来を想い、進み続けるため軌跡。
夏に住む悪魔は不敵に笑うだろう。
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