第22話
夕食はやはり王様の横から王妃様、側妃様、第一王子様と第二王子様、王女様と宰相や騎士団長様達との会食となったわ。
気が重いけれど、頑張るしかないわね。
因みに私は王子様達と兄弟ではあるけれど会った事もない。確か第一王子は私の2つ下だったはずよね。みんなは事情を知っているのかは知らないけれど、王妃様達は知っているはずだわ。
ルイと共に挨拶をし、私は重い足取りを気取られないようにそっと着席する。粗相をしないかとか、マナーは大丈夫か心配で表情は固いけれど、サーブされてくる料理はさすがと言って良いほど美味しかった。
そんな中で鋭利なナイフのような言葉が私に刺さる。
「ソフィだっけ?何で今頃になって王族に擦り寄ってきたの?君は今、平民なんだよね?一緒に食事なんてしたくないんだけど」
第二王子のその言葉に一同が手を止める。やはりそう思われていたのね。
「擦り寄ったわけでは無かったのですが、気分を害したのなら申し訳ありません。身分違いは自覚しております」
私は食事の手を止め、礼をしてから席を立とうとした所、陛下に座るように促される。
「ザナンよ。ソフィを呼んだのはこのワシだ。ワシに何か不服があると申すのか?」
「父上、納得がいきません!何故、妾の子。平民を呼ぶのですか!同じ王族として恥ずかしいです!」
「ザナン。黙りなさい」
見兼ねた王妃様が声を発します。表情に出さないけれど、王妃様も側妃様もどこか強張っている雰囲気。
「母上からも仰って下さい!」
「王妃の黙れと言うのが聞こえんのか」
……あぁ。
和やかな晩餐会とは程遠いピリピリと肌を突き刺すような雰囲気。
どうすれば良いのか分からない。もう食欲も吹き飛んでしまったわ。
第一王子も王女も声を発せず、じっと第二王子を睨んでいた。
「何故、ソフィを呼んだのか答えてやろう。ザナンよ。ソフィは王位継承権第一位なのだ。つまり、ワシの跡を継ぐのはソフィだ」
「父上!どういう事です!?」
矢継早にザナン王子は興奮した様子で声を出す。
「一部の者しか知らぬが、この国の王妃はフィラなのだ。全てはフィラを守る為。フィラの娘であるソフィが婚約したいと望んだため、一旦国に呼び戻したのだ」
どういう事なのか。
母と呼ぶ人は妾ではなく、王妃なの?
「ソフィ、意味が分からないという顔をしていますね。私から話をしましょう。フィラ様はこの国の正式な王妃なのです。私は王妃ではなく、第一側妃なのです」
「皆も知っているとは思いますが、国は魔物が王都や街に入らないように王宮を中心として術者が結界を張って民の生活を守っていますね。
フィラ様は特殊結界を扱うのに長けていた術者なのです。陛下と婚姻後、ソフィ様を出産されました。運悪く、産後間もなくスタンピードが発生し、フィラ様は結界を強化しようと魔法陣のある場所へ向かいました。
けれど、運悪く向かった先には結界を壊そうとしていた魔人が居たのです。
フィラ様は魔人と対峙し、魔人を結界内に取り込む事に成功したのですが、それと同時にフィラ様は魔人に掴まれ、引き摺られるように結界に引き込まれてしまい、魔法陣から離れられなくなったのです。
魔人は完全に結界に取り込まれたなら問題は無かったのですが、フィラ様を引き摺り込んだせいで中途半端になったのです。
魔人の影響が残ってしまい、一部は結界を通して広がるようで人間同士でいがみ合うようになりました。貴族同士の争いが起こり、その矛先は陛下やソフィ様へと向けられるようになりました。
陛下はまだ赤ん坊のソフィ様を守る為に王都でも結界から距離のあった伯爵家へ避難させる事を決断したのです。
フィラ様は魔人を結界に取り込ませる為に結界内で1人戦い続けていたのです。5年前にようやく魔人は結界に取り込まれ、魔人の影響は無くなりましたが、フィラ様もまた魔力を使い果たし、魔法陣から出れないまま眠りについてしまわれたのです。フィラ様は現在も魔法陣の中央部で眠っておられます。
フィラ様は全ての国民の犠牲になっているのよ。ザナン、貴方にはフィラ様もソフィ様の事も罵る権利は無いのです」
王妃様の言葉にその場にいた者全てが沈痛な面持ちとなっていて、ザナン王子もこれには黙るしか無かったようだ。私は初めて聞かされた母の事。母に会ってみたいと思った。
「陛下、私は母に会う事が出来ますか?」
「本来ならワシだけしか行く事が出来ぬが良い。明日、母に会いに行こう」
晩餐会はその後、何とか解散となり、ルイと共に部屋へと帰る。ルイも突然の話に驚きを隠せずにいたわ。仕方がないわよね。
母が王妃で私が女王になるかも知れないとか、降って沸いた話に驚くしかないわよね。
「ルイ。巻き込んでしまってごめんなさい」
「ソフィ。俺はソフィの事ならいつでも巻き込まれていたい。ソフィの事しっかり支えるよ」
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