秘密の計画
金曜日、誠司がビールを飲みながら夕ご飯を食べていると、
「誠司さん、明日の夜何か予定ある?」
「特に何もないけど。」
「美穂が明日の夜、3人で食事しませんかと言ってるから、OKで返事してもいい?」
「いいけど。」
かわいい美穂さんと一緒に食事とは、こちらからお願いしたいぐらいだったが、あまり喜ぶと愛実に悪いので、誘われて渋々といった感じで答えた。
土曜日、休日の誠司は朝起きると、今日も仕事がある愛実はすでに支度を終え、家を出るところだった。
「朝ごはん、テーブルの上に置いているから、パンだけ焼いて食べてね。」
「ありがとう。いってらっしゃい。」
「よかったら、今晩美穂の家に行くときに持っていく手土産買ってもらっていい?」
「いいけど、何がいい?甘いもの?お酒?」
「美穂はどっちも好きだから、何でもいいよ。」
なんでもいいのが一番困ると思いながら、愛実を送り出した。
誠司は朝ごはんを食べ終わった後、手土産を何するか悩みながら、駅前の商店街に行った。
かわいい美穂さんにケチとは思われたくないが、あんまり高いと恐縮されるので兼ね合いが難しく、店をいくつか見て回った後、スパークリングワインを一本とケーキを買った。
夕方仕事から戻ってきた愛実と一緒に、隣の部屋のチャイムを鳴らした。
「急に呼んでしまってすみません。せっかく隣に住んでるから、ご一緒に夕ご飯いかがなと思って、急に思いついたもので呼んじゃいました。」
「お招きいただきありがとうございます。これつまらないものですが、お近づきのしるしにどうぞ。」
誠司はワインとケーキを渡した。
「お気づきいただきまして、ありがとうございます。あとでみんなで食べましょう。」
リビングに通されると、テーブルにはすでに料理が並んでおり、ローストビーフのサラダやバーニャカウダなどが並んであった。
美穂さんが鍋ごとテーブルに料理を運んできて、
「アクアパッツァです。料理もそろったところで始めましょうか?」
誠司の持ってきたスパークリングワインを開け、グラスに注いだところで、
「乾杯!」
美穂さんの控えめな声で乾杯の音頭があり食事会が始まった。
食事が始まると、美穂さんと愛実が仲良く仕事の話や、近所のスーパーの話など仲良く話し始めた。会話を聞いていると、たしかに上司と部下というよりは女友達という感じだ。
「ところで、誠司さんの会社は医療機器メーカー何ですって?」
「そうですけど、美穂さんたちの薬局の前にある病院にもたまに行きますよ。」
「あそこの院長、気難しいでしょ。」
「そうよくご存じで、営業で会いに行くときは手土産がないと会ってくれないし、購入する時も限界まで値切られるしで、正直あまり行きたくないところです。」
そんな話をしながら、美味しい食事とお酒をいただき楽しい感じで時が過ぎていった。
料理も食べ終わった頃、愛実が真剣な顔をして話し始めた。
「誠司さん、前も話したけど子供のことだけど、」
「愛実、美穂さんもいるところで、そんなプライベートな話。」
「美穂にも関係のある話だから大丈夫。最初にいままで秘密にしておいて申し訳なかったけど、美穂と私は付き合っていたの。」
「私は同性愛者で女性しか愛せないけど、愛実は戸籍上男だから結婚まで考えていたけど、愛実は普通の女性として男性と結婚したいって、私とは別れたの。」
誠司はかわいくて料理上手な美穂さんが、独身な理由を知った。
「それで、子供の話とどうつながるの?」
まだ話のつながりがみえない誠司は疑問を口にした。
「誠司さん、私たちと美穂に共通の悩みって何だと思う。」
「いや、わからない。」
「働いている間はいいけど、働けなくなった老後を支えてくれる人が、どちらもいない。」
「そこで、誠司さんと私が結婚して、子供を産んで、3人の子供として育てていこうって、私が愛実にお願いしたの。」
「それで愛実もいいの?」
愛実は軽く頷いた。
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