意外と男っぽい!?

 誠司と愛実は二人で暮らす物件も決まり、3月の初めに引っ越しをすることにした。

 10年も暮らしているといろいろ物がたまっていたが引っ越しを機にいろいろ捨てたが、段ボールに詰めてみると意外といっぱいになることに驚く。

引っ越し当日、お互いの家の荷物を業者に搬入してもらい荷解きを始めた。


 愛実はキッチン周りを片付けるために、鍋など調理器具が入った段ボールを運ぼうとしていた。

「それ、重そうだから持とうか?」

「これぐらい大丈夫だよ。」

「意外と力持ちなんだね。」

「一応、元男ですから。それに女性ホルモンの影響で太りやすくなっているから、筋トレとか運動とかしてるし。」

 ちょっとむくれて、頬をふくらませた表情もかわいく思える。

「運動ってジムとか行ってるの?」

「体のことがあるから、ジムには行けないから、家で筋トレしたり、公園を走ったりしてるよ。誠司さんも一緒にしよう。」

 誠司は自分のおなか周りをみて、30を過ぎてから体のたるみが気になっていたのもあるし、愛実と一緒にジョギングも楽しそうだなと思って一緒にすることにした。


「ドライバーってどこにある?」

「多分、あそこの段ボールだと思う。」

 キッチン周りでドライバーを何に使うのか疑問に思ったので、愛実の様子を見てみると電子レンジのアース線を接続していた。

「アース線ってやっぱり必要?そもそもアース線って何?」

 アース線の必要性がわからない誠司は、面倒なのでいままでアース線をつなげていなかったが、

「万が一のとき、危ないからね。劣化などで漏電したときにアース線から電気を逃がすために必要なの。」

 アース線から電気が逃げる意味が文系の誠司には詳しい理由はわからなかったが、とりあえず安全のためということだけは分かった。


 そのあと、愛実がテレビの配線も難なくつないでいく姿をみて、

「配線とかよくわかるね。」

「えっ、説明書に書いてあるでしょ。その通りにしているだけだよ。」

「説明書ってわかりにくくない?」

「そう?わかりやすいと思うけど。」

 誠司の前の彼女がDVDプレーヤーを買った時に、説明書を読んでも配線がわからず二人で苦戦したことがあるが、愛実はあっさりとつなぎ終え、チャンネル設定まで終わらせた。


 引っ越しの片付けもひと段落して、生活していけるぐらいにはなった。まだ衣類や本など段ボールに入ったままだが、それは少しずつ出していけばいい。

「夕ご飯できたよ。遅くなっちゃったね。お腹減ったし、さぁ食べよう。」

 夕ご飯を外に食べにいこうと誠司は言ったが、「外に食べに行くのも疲れるから、簡単で悪いけど作るね。」と愛実がいい、冷蔵庫に残っていた材料でカルボナーラと卵スープを作ってくれた。

「卵がかぶっててごめんね。」

 彼女は謝ったが、誠司は美味しいので気にしていない。

「美味しいよ。テレビつけてもいい?この映画みたいんだ。」

 スパイアクションのシリーズもの最新作が、今日テレビ初放映なことを誠司は思い出した。このシリーズが好きで、1作目から全部見ている。

「私も好きだよ。一緒に見よう。」

 女性でこのシリーズが好きなのは珍しい。このシリーズの2作目を昔の彼女と映画館に観に行こうと言ったら断られて、代わりに彼女の好きな俳優が主演の恋愛映画を観に行ったことを思い出した。


 夕ご飯も食べ終わり、愛実に淹れてくれたコーヒーを飲みながら映画を見ている。いつもなら帰る時間を気になるところだが、もう心配しないでいい。

 映画を見終わったところで、

「引っ越しで疲れたから、もう寝ようか?」

 明日も荷解きの続きをしたり、家具を見に行ったりとやることが多いので、早めに寝ることにした。


 先に誠司がお風呂から上がって寝室に入り、ベッドで横になっていると、お風呂上りの愛実も寝室に入ってきた。

 一緒にベッドに入るなり愛実は、誠司の下半身を触り始めた。

「ねぇ、今日はもう疲れちゃった?」

 誠司は返事の代わりに愛実の体を抱きしめ、口づけを交わした。


 愛し合ったあと、まどろんでいる愛実の頭をなでながら、

「愛実って、意外と男な部分もあるんだね。」

 誠司は今日の出来事を振り返って聞いてみた。

「女の部分が9割、男な部分が1割だと思う。でも、割合の問題でみんな男と女の心、両方持っていると思う。」

 誠司の会社にも、スカートを履かない女性社員や中性的な男性社員はいる。確かに性転換までいかなくても、異性の心はみんなの中にあるのかもしれない。

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