秘密を持つ妻

葉っぱふみフミ

プロローグ 新婚生活

「ただいま。」

 仕事を終えた長野誠司が玄関のドアを開けると、

「おかえり。」

 一緒に暮らしている香川愛実の返事が返ってきた。同棲生活を初めて3か月たつが、この声を聴くだけで仕事の疲れも癒える。一人暮らし生活の長かった誠司にとって、家に戻って迎え入れてくれる誰かがいるというだけで嬉しかった。


 誠司がスーツから部屋着に着替えリビングに戻ってくると、テーブルには夕ご飯が並んでいた。今日は、生姜焼きにキャベツの千切りが添えれており、いんげんの胡麻和えとレンコンのきんぴらと豆腐とわかめの味噌汁が並んでいる。栄養のバランスとおいしさを兼ね揃えた理想的な一汁三菜だ。

「誠司さん、今日はビール飲む?」

 エプロン姿の愛実が聞いてきた。振り向いてこちらをみている姿にうっとりしつつ、

「明日は休みだし、お願いしようかな?」

 誠司はビールをお願いした。缶ビールなので、そのまま飲んでもよいのだが、愛実はいつもグラスに移してから誠司に渡してくれる。グラスで飲んだ方が美味しいらしい。正直、誠司には味の違いはわからないが、グラスを冷蔵庫で冷やしてくれていることも含めてその気遣いが嬉しい。


「今日もお疲れさま。いただきます。」

 誠司はまずはビールを一口飲んだ。ひんやりとしたグラスに唇があたり、ビールがのどから胃へと流れ落ちていく感触が、心地いい。一週間の仕事の疲れも癒される。

「私も明日休みだから、飲もうかな。一口頂戴。」

 そう言って誠司のグラスをとり、一口ビールを飲んだ。そして美味しそうな表情をみせた。付き合い始めてもうすぐ1年、一緒に暮らし始めて3か月たつが、いまも愛実のその表情がたまらなく愛おしい。


「明日休みなんだ。」

 土日が休みの誠司と違い、薬局で薬剤師として働いている愛実はシフト制での勤務であり、土曜日も働くことがある。

「そう、言ってなかった?」

 今週の初めに聞いたような気もするが、覚えてはいなかった。

「じゃ、明日出かけようか?どこがいい?」

「う~ん、そうしたら海の方にドライブに行って、海に沈む夕日がみたいな。」

「いいね。そうしよう。」

 和気あいあいと会話しながら、美味しい夕食とビールを頂く。誠司の前には晴美が座っている。きれいなセミロングの黒髪、きりっとした顔立ち、すらりとした体型、すべてが誠司の好みだった。

 一緒に暮らすようになって最初は緊張していたが3か月が経ち、緊張も解け純粋にきれいな妻をいつでも見られる幸せに浸っている。

「私の顔に何かついてる?」

 ずっと愛実を見ていたのに気づかれたみたいだ。

「いや、あんまりきれいだから見とれていた。」

 誠司が答えると、愛実は照れた笑顔を見せた。その笑顔もたまらなくかわいい。


 夕食を終え、お風呂に入り、誠司が寝室に入ると、先にお風呂から上がった愛実はセクシーなベビードールを身にまとっていた。

 誠司が部屋に入ってきたのに気付くと、愛実は誠司の方に近づいてきた。誠司も愛実の体を抱きしめ、唇を重ね、そのまま一緒にベッドに倒れこんだ。

 誠司は愛実のささやかな胸のふくらみをさわり、ふくよかなお尻をゆっくりとなでる。愛実の下半身の硬いものが誠司の体に触れる。愛実も興奮しているようだ。その硬くなっているところを触ってあげると、愛実は嬉しい声をもらす。そして、愛実も誠司の下半身を触ってくる。


 そう愛実の下半身には、誠司と同じものがついている。愛実の本名は、孝弘というみたいだが、本名なんてどうでもいい。戸籍上性別が男であることもどうでもいい。

 たた愛実は美人で、気立てが良くて、誠司のことを愛してくれている。誠司も愛実のことが好きだ。それで十分だと思っている。

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