第11話 りんご
赤い皮をするすると剥いていく。途切れることなく赤いリボンが皿の上にくるくると重なる。露出した白い果肉が瑞々しく光った。
「りんごを剥くの上手だね」
まどかは慣れた手つきで包丁を使っていて、なんとも様になっている。舞ならばこうはいかない。きっと、皮はぼろきれのごとくちぎれ、指を包丁で切ってしまうだろう。
なぜか家庭科準備室には明日香がいなかったため、舞とまどかの二人で食事をとっている。
「まどかちゃんは料理得意なの?」
「どうかな~。妹におやつ作ってあげることもあるから、ちょっとは手馴れてるかもね〜」
リンゴを包丁で六等分にわけると、フォークを突き刺した。
硬めの食感ながら、おいしいりんごだ。
「舞さんはりんご好き〜?」
「うーん、普通かなぁ? 家にあったから持ってきたんだ」
真っ赤でツヤツヤで美味しそうだったので明日香に剥いてもらおう、と持ってきたのだ。
明日香がいないので代わりにまどかにしてもらったけれど。
「へ〜。りんご丸ごとを学校に持ってくる人はなかなかいないよ〜」
あはは、と苦笑する。シャクシャクと二人で食べながら雑談を交わす。
少しずつまどかへの苦手意識も薄れ始めた。今まであまりまどかを直視できなかったが、なんとか視線を合わせることもできるようになった。
まどかのスカートは短い。とてつもなく短い。先程まで気づかなかったが、気づくとそこに目がいってしまう。
「ねぇ、舞さんはいつも明日香さんのこと好きなの〜?」
気がそぞろだったから、おもわず、りんごを床に落としてしまった。
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