2話~君を見つけた夏の月夜の日~

「ふ~!やっぱり茶々の作るご飯は美味しいな!」

「お褒めの言葉ありがとうございます。」

「お前は相変わらず硬ぇなぁ~、茶々」

「いや!王子の前ではこうするのが普通でしょうがー!」

「あはははは!」

飛雅様は私に昔から二人きりのときは敬語を使うなと言ってくる。敬語を使うとそれなりの罰があるからほどほどに敬語を使っている。

今まで受けてきた罰は飛雅様の城に一週間滞在しろだの、膝枕しろだの罰という罰ではなかった。いずれ飛雅様に恋人ができたらその女の人は大変だなぁと想像し私はクスッと笑った。

「茶々なに笑ってるんだ?」

「飛雅様に将来恋人ができたらその女性はきっと大変な思いをするだろうなと思いまして」

「なんだとー!」

「飛雅様のばーか!今日だって仕事さぼって三大武士たちに仕事おしつけたくせに!」

「こら!まて!」

しばらく家でおいかけっこをしていた。







「で、今回鬼の国とはなんのご用件で三大武士を行かせたのですか?」

「実は最近鬼の王国で農作がうまくいかず現地の視察を任されたのだが……」

「鬼が嫌いだから行きたくないと?」

「うっ……そうだ。」

「秋の国は鬼の国と古い時代からお互い助け合ってきたではないですか。」

「鬼は野蛮だ。本能で動き目的を達成するためには手段を選ばないと言われている!俺は関わりたくない!」

「……」

「鬼には気をつけろよ。」

飛雅様は席を外し私は飛雅様の言ったことを考えながらお皿を回収し、お皿を洗った。









「飛雅様ー、今回のお祭りの鬼神の舞の担当でこれから神社で練習があるのですが……」

「俺も行く!」

私の言葉をさえぎって飛雅様はそう言った。

正直いうとお祭りで王の前で舞を披露するから祭りの日まで楽しみにとって、見ないでほしいと言おうとしたのに……

飛雅様は一度決めたことは貫き通すタイプだからなにを言っても通じない。

飛雅様は私がどこかへ出かける際必ずといっていいほどついてきた。

私はため息をつき仕方なく飛雅様を家から連れ出した。




ジーン、ジーン

コオロギと蛍が鳴いていてあたりは真っ暗だ。

神社に行く道に蛍の自然の光で輝き、月の光で照らされているこの道はとても綺麗だ。

あともう少しで神社に着くところで飛雅様足を止め、私の手を握り、こう言った。

「茶々。俺は今年の夏まつりの日で十八になる。そのときにお前を……」

飛雅様がなにか言ってる際ある音が鳴り私はあたりを見まわした。

チリリン、チリリン。と近くで鳴った。

「茶々?」

「飛雅様、鈴の音が聞こえませんか?」

「え?俺には聞こえないぞ?」

チリリン、チリリン

鈴の音はどんどん近づいている。















「茶々」









「誰なの……!」







その声はどこからかわからない。





誰の声かもわからない。















だけど優しくてどこか懐かしい……















気づいたら私の目から涙がとめどなくあふれていた。











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