エンカウント
伊吹 累
遭遇
中学二年の夏休み、僕は宇宙人と出会った。
今時珍しいが、僕の学校には裏山がある。僕は帰宅部な上、学校でも一人でいるようなさみしい奴なので、放課後や、あるいは授業もサボって裏山で一人で過ごすことが多い。開放感と高所から景色を独り占めしている優越感に浸りながら、昼寝や宿題や—— とにかくそこで自由な時間を過ごすのが日課だった。
夏休みも2週間と少し経ったある日、いつもの如く僕は山へ入った。いくつかある気に入っている場所の一つへ向かうと、何やらウィーンだのカンカンだのといった機械音が聞こえてきた。予告などを聞いた覚えは無いがまさか、開発工事が始まったのだろうか。慌てて草をかき分け、木を跨ぎ、開けた場所まで出てみると、
ギュイーン。ウィン、ウィン…
地面にめり込んだ大きな円盤と、工具を両手に持って作業している、僕と同い年くらいの女の子がいた。だが全く知っている顔ではない。僕の学校に金髪のサラサラロングヘアの女子はいないからだ。彼女は作業音のせいか僕には気づいていない。そっと近づいてみた。もう少し近くでこの機械を見たい…
「わっ、何!?」
突然の高い素っ頓狂な声にびっくりして、尻もちをついてしまった。金髪の少女は手を止めてこちらを振り返っていた。近づいて上から覗き込まれた目は綺麗な青色だった。
「うわあ、見られちゃった…。」
独り言のように呟くと、少女は思い直したように頭を振り、笑顔になった。
「大丈夫?立てる?」
差し出された細くて白い手を掴むと、グイッとなかなかの力で引っ張られ、僕は今度は前につんのめるように起き上がった。少女は僕と同じくらいの背丈だった。ありがとう、とモゴモゴと礼を言った。
「ここらで見ないけれど、君は誰?この大きな機械は一体…?」
彼女はまたさっきのように迷いのある微妙に困った顔をしたが、何か小さな決意をしたような様子で、これはね、と円盤をトントン叩いた。
「私が乗ってきた、君たちの言葉で言うUFOだよ」
「…え?なんだって?」
僕が状況を理解できずに大きな物体と少女とを交互に見つめていると、彼女は首を傾げた。
「伝わってない?翻訳機は壊れていないはずだけど…」
「いや、言葉は分かるけれど、これがUFOだって?そんな馬鹿な話があるわけ——」
あるよ、と彼女は言い切った。
「だって私、君たちの言葉で言うところの、宇宙人だもの」
そんな突拍子もないことを言われても、はいそうですかと信じられるわけがない。ただ、地面に半分斜めに顔を出して煙を上げているこの物体は、どう考えても現代の技術では作れなさそうだし、自分と同じくらいの子供が自分の物だと言い張るのもまた不可解だ…。
思考が固まっている僕に、フランス人形のような女の子はこう言った。
「信じられないなら証明してあげる。そのかわり——」
私と、オトモダチになって。
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