「我々を知ってほしい」

 昨今、ウェブ配信サイトの個人チャンネルでラジオ配信が増えている。特に宇宙人の解説をする放送が人気を博していた。


「♪~(しっとり雰囲気のフリーの音楽)」


「こんばんは。本日も生放送で、我々クリスタリア星人の情報を開示するクリスタリアらじおをお送りする」


「復習から。太陽系外より来訪したクリスタリアは水晶状の身体をもつ知的生命体で、宇宙では傭兵業を生業としている。電気を食べる食性で地球上の外気は毒となるため人類種型スーツで体表を保護しつつカモフラージュして生活に潜伏している。音楽を愛する文化を持ち、繁殖は単為生殖と呼ばれるものに近しく個体に性別はない。以上がこれまで発表したクリスタリアの生態だ」


「今日はいよいよ、クリスタリアが地球に居る目的を話していこうと思う」


「さて、本題に行く前に乾杯をしよう、リスナーたち。――乾杯。乾杯は本当に素晴らしい」


「では、早速クリスタリアが地球に来た目的を話そう」



「♪~(デデンッ)」



「地球で人類種と共存するため、だ。我々の母星は寿命を迎えて既に爆散した。我々には新たな故郷が必要であった。地球は人類種が電気を生産して生活をしている下地があり、移住先として最適だった」


「我々は人類種と共存したい。その為には相互理解が必要だと思い、我々は人類種を学習し続け、情報発信も続けてきた。視聴者数も増え、理解度の高まりを感じるとも。そろそろ本格的な行動を開始するタイミングだと思う」


「人類種は相互に争ったり飢餓を放置したり、己を酷使する事で無暗に寿命を減らしたりして種としての総数を管理している」



「♪~(デデ、デンッ)」



「その一部を我々が負担する事を提案する。宇宙のトップ傭兵として宇宙で活躍してきた実績が我々にはある。殲滅し、処理していく仕事なら優秀な労働力となる事を保証しよう」


「我々と人類種で専属契約を結び、我々の軍事力で人類種が抱える食糧問題に協力したい。手始めに人類種の二割を我々が殲滅しよう。また、インターネットに溢れる他者を処分する依頼、あれが執行されてないのは人手不足だからだろう。キミたちなら、もっと効率よく処分できる筈だもの。なので、処分依頼は我々が負担しよう」


「我々の持つ技術力も提供する。我々の兵器技術は人類種のそれを上回っている。有益なものとなるだろう。手を取り合う、本当に素晴らしい」


「見返りに我々が求める条件は必要な電力と地球上での我々の生活圏だ。エリアを指定してもらうだけでいい、そのエリアを侵略し、我々の定住地とする」


「我々にとって、人類種はまさに最高のパートナーとなる逸材だ。争いを好み、技術力を高める向上心を持ち、利益のためなら同種さえ犠牲とする。攻撃性が高く、種の個体数も多く生殖速度も速い。見事な戦闘種族となる素質を備えている。人類種は本当に素晴らしい」


「デモンストレーションを用意した。我々の戦艦隊が号令一つで一斉に人類種へ攻撃を開始する。一先ず、キミら人類種の国からランダムに総人口の一割ほどを抹殺しよう」


「インターネットを通じて沢山の情報を開示してきた。インターネットは本当に素晴らしい。デモンストレーションとこれまでの情報開示で、キミらに我々の戦闘有用性を理解してもらえるはずだ」


「では、作戦が成功し、人類種と我々クリスタリアが専属契約を結んだ後に、もう一度乾杯しよう」



「ピコン♪(リアルタイムでコメントが届く)」



「……『いや極論すぎ。宇宙人の攻撃とかマジ勘弁』『まるで映画じゃん。トムとかウィルのアレ』何? そうなのか?」


「『新兵器よりもテレポートで職場に行く方がいい』だと?」


「何と、人類種がそんな事を望んでいたなんて。テレポート技術なんて簡単なものでいいのか。……そっちの方が、こちらの労力も戦力も削減できてお得だ。ふむ、計画を練り直すべきだな」


「すまない。人類種への攻撃作戦を取りやめる事になった。今日のクリスタリアらじおはここまでにしよう。次回は猿星人でもわかるテレポート技術を話そうと思う」



「~♪(エンディングテーマが流れる)」



 空を埋め尽くしていた宇宙人の戦艦群はテレポートを使ってどこかに消えた。

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