召喚系アプリケーション(仮)

亜未田久志

第1話 美少女魔女とヘタレ


 ご当選おめでとうございます! 貴方は百五十三番目の参加者に選ばれました。

 貴方には貪欲の魔女を差し上げます。

「なんだこれ?」

 突如、インストールされた謎のアプリと届いたメール。

 獅子野蓮ししのれんはスマホを片手に見やりながら。

 不可思議そうに首を傾げる。

 彼は歩行者天国の真ん中に居た。

 そのメッセージを受けると同時に。

 

「よお、お前が対戦者か?」

「……へ?」

 金髪の柄の悪そうな男が、黒髪ロングに白いドレスの女性を連れている。

 獅子野はメッセージを最後まで読んでいなかった。

 そこにはこう書かれていた。

『魔女を使い、戦いに生き残ってください! そうすると「報酬」が与えられます!』

 目の前の男は「報酬」目当てでこちらを見ている。

 すると獅子野の脳内に声が響く。

『私を使いなさい!』

 無意識に従って、アプリを起動する。

 現出する赤い髪に黄金の瞳の黒いゴシックドレスの少女。

 それはこの世の者とは思えなくて。

「貪欲の魔女ローレッタ。貴方の魔女よ、敬いなさい」

「あの、なにがなんだか」

「あとは私が戦うからあんたはアプリで戦況を見て、『課金』してアイテムを寄越しなさい」

「か、課金? 俺、あんまり金ないんですけど!?」

「このデスゲームに勝ち残れば、大金が手に入る、失ったお金を補填して余りあるほどのね」

 黒髪ロングの女性――魔女が動く。

 剣をいつの間にか手にしている。

「早速、課金して来たか! シシノ! こっちも武器を!」

「え、えと」

 アプリを操作するとアイテム購入画面が出てきた。

 その値段は決して安いものではなかったが。

 仕方ないので適当に選んだ「大鎌」を選んで購入した。

「あはっ! 私にピッタリ! ナイスチョイス!」

「は、はぁ」

 大鎌と剣がぶつかり合う。連続する金属音、斬り合いが続く。

 そこでローレッタの地面に魔法陣が浮かぶ。

「太祖より出でり貪欲の御身、喰らうは怨敵、いざ大口を開けたまえ」

 すると

 紙一重でかわす敵の魔女、すると敵の魔女の下にも魔法陣が浮かび上がる。

「太祖より出でり空虚の御身、弾き出すは怨敵、いざ剛腕を振るいたまえ」

 するとローレッタが弾き飛ばされビルに叩きつけられる。

 するとスマホの画面のゲージが減る。

「やるじゃない……じゃあこれはどう?」

 再びローレッタの下に輝く魔法陣。

「詠唱棄却、対価『大鎌』使用。『削り取る大顎ロスト・デスサイズ』発動」

 横薙ぎに振るわれるローレッタの右腕、するとどうだ、空間が歪み、真空が生まれ、そこに全てが引き込まれていく。

 敵の魔女はそれに足を取られ、飲み込まれる。

「トドメを刺すわ! アプリの表示に従って!」

「は、はい!」

 するとそこには『魂の変換』の文字がボタンとなって浮かんでいた。

 それを獅子野は躊躇い気味に押す。

 すると貪欲の魔女の本性が明らかになる。

 それは獅子の大顎を備えた獣であった。

 頭から敵の魔女を喰らい尽くす。

 金髪の柄の悪い男が膝から崩れ落ちる。

 その身は両手両足の先から黒くほつれていた。

「い、いやだ、消えたくない!」

「だったら私達に喧嘩を売らなければよかったのよ」

 そして男は消えた。

 正確にはローレッタに取り込まれた。

「ん~♪やっぱり人間の魂の味は格別ね!」

「あの、説明を」

「それなら家に帰ってからゆっくりしてあげるから今日は帰りましょう。アプリを閉じて?」

 言われた通りにするとローレッタの姿が消える。

 そしてスマホの中にその姿があるのだった。

 まるで3Dアバターのように画面内を動き回るローレッタを見ながら。

 獅子野は途方に暮れるのだった。

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