(四)

 国分の腹の傷は、肝臓や膵臓を外して腸のみを切り裂いていた。逆に言えば、急所を外していたために、死なずに済んでいた。

 俺の話を素直に聞いていた国分は、俺に欺かれたことに怒りもしなかった。

 逆に俺は、話しているうちに昔の記憶が蘇ってきて、目の前の男に怒りを、憎しみを募らせていった。

 両親を殺した男が目の前にいる……。そう思うと、もう限界だった。

「俺はあんたを許さない!」

「俺を殺そうっていうのか。無理すんな。お前にはできねえよ」


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る