二重計画

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

「貴様、何者だ」

 白いバスローブを羽織った老人は腹を押さえつつ、壁際までヨロヨロと後退しながら俺に向かってそう言った。

 その腹には俺が突き刺した包丁が刺さったままになっていた。そして白いバスローブには包丁の刺さったところから赤い染みが広がりつつあった。

財部たからべ社長、いや宮崎社長。金庫はどこだ。通帳も出してもらおう」

 俺の背後にいる男が言った。

国分こくぶか……。貴様、出てきたのか」

 国分は俺の脇から前に出て老人の前に出た。そして老人の顔をぶん殴った。

「ああ、おかげさまでね。長かったよ。お前のおかげで十五年もおつとめさせられたよ」

 そう言って、国分は床に倒れた老人にツバをはきかけた。

「さあ、どこだ! 通帳を出せ!」

 国分はそう言いながら老人の腹を蹴った。

 刺さったままの包丁には当たらなかったが、老人は苦痛で声を上げた。


(続く)

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