03

 暗く静かな瞳の中が、白く明るい音のある世界になっていく。少しずつ霞がかっていく。その白さに意識が引っ張られて、極めつけに喉の渇きで目が覚めた。そのままゆっくりと瞼を開く。

 少し重たい瞼を何度かパチパチと瞬きすれば、障子戸からこの部屋に溶け出す陽光がきらきら輝いていて、埃がそれに反射しふわふわと舞っているのが見える。見える世界が横になっているという事は、横向きでどうやら寝ていたらしい。

 眠りからの目覚めはいつもぽおっとした熱のような物が、身体に張り付く。

 むくりと上半身を起こした。その際に、がんがんと頭が痛む気がして、思わず手を額に添える。なんだこの頭の痛み……怪我なんてしてないはずなんだけど。

 頭痛によって表情を歪ませつつ周囲を見渡せば、どうも見慣れない和室に自分は横になっていた。それも、布団まで敷いてもらって寝かせてもらっている、という状況になっていることに気付いた。

 さぁっ、と血の気が引いた気がする。

 周りを再度慌てて見渡しても、見慣れない空間だ。

 どうしてこんなことに。再度頭が痛むような気分がする中、すらりと障子戸が開かれた。

 静かに開かれて音も小さかったとはいえ、突然の事に思いっ切り体を跳ねらせる。障子戸の方へ視線を向ければ、一人の男性が私を見下ろしていた。

 希龍くんだ。彼の背後から注ぐ光によって、彼の髪の毛はさらに輝きを増しているような気分がして、まるでこの世のものとは思えない気がする。

「狐坂さん起きたんだね。良かった。体調はどう?」

 後ろ手で戸を閉めて、希龍くんが少しすり足気味で私の元にやってくる。畳と彼の足の裏が擦れる音が近づいてきて、更に肩が跳ねた。

「あ、え、っと。少し頭が痛む程度で……他は大丈夫」

「そうか、良かった。頭痛は、きっと異界との行き来がなれていない影響だと思うんだけれど……」

「ん? ん?」

 異界? 何を言っているんだろうこの人は。

 けれど、そんな問いかけを口にすることが出来ない程に、希龍くんは真剣に考えているようだ。口に出さないでおこう。少し黙っておこうか。

 きゅ、と口元を固めていれば、障子戸の向こうから、誰かが歩いてくる音がする。

 そちらに目線を向ければ、ああ、と希龍くんもつられて視線を向ける。

「父だよ。こちらにきて気を失った君を心配していた」

「そ、それは大変ご迷惑を……」

 そう口にした途端、すぱん、と少しだけ勢いよく障子戸が開かれた。

 そして、その瞬間、自分が息を勢いよく吸って、そしてすぐに呼吸が止まったのがハッキリと分かった。

 サラサラでふわっとした髪質の、綺麗な銀色。髪の毛は、どうやら襟足が長いらしく、リボンの形にくくられている。器用だ。黒曜石のように綺麗で深みのある瞳。けれど、光を反射してどこか紫色の光を見せる。目尻に青いラインが引かれているけれど、垂れている瞳の影響からか、優しい雰囲気を醸し出している。

 纏っている服は着物だ。銀色を基準とした着物だけれど、下部は薄花色。膝元にかけてグラデーションとなっているようだ。そんな着物の上に、深縹色の羽織を肩にかけている。

 一見、派手……と言われそうな身のこなしなのだけれど、目の前の彼が纏っていると、違和感など持たせない。これが普通なのだと言わんばかりだ。

 これほどまでに美しい人を、私は見たことが無い。勿論、希龍くんも顔つきが整っていて美人だけれど、それ以上だ。まるで、そう、神様……みたいな。

 相手は私を見るとゆるりと笑みを浮かべて、ゆっくりと私の元へやってきた。

「人の子、ごめんね。突然降ってくるものだから俺も驚いてしまって」

「あ、いえ、大丈夫、です……」

 ふ、と彼の背後に目を向けてしまった。

 開かれっぱなしの障子の向こう。そこは、常識とはまるで存在しないような景色が広がっていた。

 背景が、水だ。水、というよりは海の中と表現した方が正しい。空が見えるはずの景色の代わりとばかりに、水中が存在している。

 ちらりと見えた庭は浅く水に沈んでいて、そのとある一線先。そこから先が、水の空間なのだ。何を言っているのだと言われそうだけれど、そうだとしか言えない。例えるのなら……そうだな、水族館の大きな水槽。水の空間が目の前にある。そう思える、あの空間だ。自分の視線と同じ高さで、魚が泳いでいる。そんな光景だ。

 信じられない景色に、声も出ない。呼吸も、どうやってするのだったか一瞬忘れてしまったほどだ。

「俺はアオ。雫玖の父だよ。今回はビックリしたよね」

「あ、挨拶遅れてしまってすみません。狐坂曙美と言います。希龍……雫玖くんとは同じクラスメイトで……」

 待って。自己紹介できているけれど、私は何で生きているんだ。

 崖から落ちて、それで、雫玖くんと一緒に海に落ちて……普通だったもうそこで死んでいるはずなんだけど。水中に存在する不思議な家を見て、そのあと、雫玖くんが迎えが来たと言って、水の柱に飲み込まれて……。

「君はどうしてこうなったのか、ここに来るまでの記憶はあるのかな?」

「……」

 崖からの落下、海中遊泳、空中ダイビングのことかな? それに関しては覚えていますよ、嫌というほど。

 小さく手を握って開いてを繰り返し、何て言っていいか分からずにいると、相手が困ったように笑った。

「あ、りますね……」

「そうか、良かった……と言うべきなのかな。怖かったよね。もっと早く助けに行くべきだった。ごめん」

「い、いえそんな! こちらこそ、助けて頂いて本当にありがとうございます」

 ぺこり、と深く頭を下げる。目の前の彼は命の恩人なのだから。

 そう、私はこうして、死ななかった。

 でもそれは諦めなかったからじゃない。偶然、死なずに済んだだけだ。希龍くんとアオさんがそれぞれ救ってくれたおかげで、今もこうして息をして心臓を動かしている。

 けれどいつかこの諦めが、本当に私を殺すんだろう。今は引いた波が、次に打ち寄せた時に、私はそれに抗えるだろうか。

 再度頭を下げて礼を述べたけれど、その言葉は薄っぺらくなっていないだろうか、不安になってしまう。


 優しい顔で私を見ている自身をアオと述べる彼は、どこか浮世離れしているように思えた。例えるなら親が子を見るような(あまり経験はしていないけれど)というものがあるが、それではない。大人が子供を微笑ましげに見ている、とも違う気がする。

 なんだろう。もっと、大きな、何か。

 そう、彼はどこか慈悲溢れたような表情で私達を見ている。それこそ、宗教画でよく見るような、優しい女神が人々に微笑みを与えている絵画みたいな。

 そんな存在を肌で感じて、思わずさっきまでの彼との会話や、出来事を思い出す。

 そもそも、落下してきた私たちを助けるだとか。自分の上に降ってくるとか、私達のでは口にしないであろう言い回しとか。海に落ちたら、不思議な場所に来る経験をするとか。浮世離れした様な行動や、言葉の選択。それに希龍くん曰く異界だとか。それらを組み合わせて、目の前に居る整った見目の彼を見て、出る答えは一つだ。

「……あの、貴方は、人ではない?」

 ぽつり、ととても小さな声でそう問うた。

 今更だな、と自分でも思ったけれど、目の前の彼もそう思ったらしい。今更だね、と少しだけ笑みを浮かべる。

「言ってなかったかな。俺は人間じゃない。君達人間の間では、神と呼ばれている存在だ」

 にこり、と綺麗な笑みを私に見せた瞬間、彼の背後に大きな存在が現れたかのように見えた。

 その圧倒的な存在に、圧力の様なものを感じて、ヒュッと息が詰まる。

 ばくんばくんとうるさい心臓。やかましい、と文句を言って黙らせたいのだけれど、言う事を聞いてくれない。生意気な心臓め。

 胸元を握りしめてやかましい心臓を抱えながら、相手の顔を見上げる。

 己を神だと言い放った彼は、私の動作に多少驚いていたらしく、ぱちくりと瞬きしてから、口元に手を添えて吹きだした。

「ふっ、はははっ! ごめんごめん! 驚かせてしまったね」

「本当だよ。父さんは急に揶揄うんだから」

「ごめんよ」

「あ、えっと……アオさん? が神様でしたら、雫玖くんは……」

「ん? ああ、この子は神様なんかじゃないよ。人間と神との子で、人間寄りなんだ。人間と同じ様に歳をとるし成長する。まあ、普通の人間よりは力が強かったりするけどね」

 アオさんが希龍くんを差しながら説明する。

 ああ、成程……ハーフ……。

 私の想像する、異国人でのハーフではなく、種族違いでのハーフだったが、その美貌などを合わせて納得してしまった。

 希龍くんは小さく溜息を吐いて、その場から立ち上がる。

「お茶を持ってくる」

「気が利くね、ありがとう」

 小さく手を振りながら、希龍くんは部屋から出ていく。その際に見える外の景色は、どうも見慣れないけれど。


 彼の足音が遠くなり、彼を顔で追っていたアオさんが、くるりとこちらに目を向けて優しい表情を浮かべた。

「君は雫玖の友達かい?」

「え?」

 少しだけ期待を含んだような表情をするアオさん。それは正しく、子供が行ったことに関すことに感動している親の姿だ。神とは言ったものの、人間らしい一面もあるのだな、と感心すると同時に、つきんと胸が痛む。

「君のことはあの子から聞いたことがあるんだ。だから友達なのかなって」

「そ、そうだったんですか……。あ、でも、えっと……クラスメイトですね」

「それは友人ではないのか?」

「うーん、ちょっと距離感が違うというか……」

「じゃあ、友達になりたい?」

「え!? そ、それは勿論! 希龍くんさえ迷惑でなければ!」

 私の返答に、彼は分かりやすく喜んだ。親を目の前にして、友達になりたくないとは言えないでしょう。流石にそこまでの鋼メンタルは持っていないし、良心が無いわけではない。

「じゃあ君は初めて雫玖が連れてきた友達だ。歓迎するよ」

「で、ですから、彼にとっては違うかもしれなくて……!」

 嬉しそうにしている彼に、否定の言葉をかけるのは本当に気が引ける。ていうか、連れてくるにもこの家は難易度が高いでしょう。だって海から落ちなきゃいけないじゃん。友達を呼びたくても呼べなかったんじゃないの?

 はあ、と小さく、ばれない様に溜息を吐く。

 そういえば、私が最後に友人を実家に上げたのは、両親に紹介したのはいつだったか。多分小学生くらいで、仲の良かった子を家に学校帰りに招待した。母は少し驚いていたけれど、その時は笑顔で私達を迎え入れてくれた。けれど、友人を連れて来た日の夕ご飯で、機嫌の悪そうな表情を浮かべている両親を見てから、友人を招くことはいけないことなんだと、自然と察してしまった。それ以降、私は実家に友人を招待したことはない。話題に出したことも無い。

「雫玖はどうも幼いころから友人の事は話題に出さないから、ちょっと心配だったんだ。だけど、良かった。君みたいな良い子が居るんだね」

 にこにこと笑みを浮かべる彼に、私の良心はぐさぐさと刺さり、更に言うと心臓もちくちくと痛んでくる。

 希龍くん、早く帰って来て……。

「あの子は中学まで、人間たちと上手くいっていなかったみたいでね」

「え?」

「ほら、あの綺麗な容姿だろう? それで、少し引っ込み思案なところがあるから。人と関わるのが苦手になってしまったんだ」

「そう、なんですね……」

 今ではもう神がかった整った容姿によって高嶺の花として、誰彼構わず彼をいじることもいじめる事も無いだろう。

 だが、小学や中学まではどうだろうか。子供とは嫉妬する生き物だ。頭が良くて運動神経が良く容姿端麗。女子からは憧れの目で見られて。そうすれば、同学年の男子からはどう見られるだろう。想像するのも容易い。女子だって、下心を持って彼と接していただろう。

 彼は、人を信じる事が、苦手になってしまったんじゃないだろうか。だから、高校ではいつも一人で過ごしていたんじゃないだろうか。

 ぐ、と拳を握れば、アオさんが優しい表情をする。

「やっぱり君は優しいね」

「普通ですよ。きっと、彼の周りの環境が悪かっただけ」

「そうだ。だけど、そんな中助けてくれたのが、君なんだよ」

「え?」

 彼の言葉に、思わず素っ頓狂な声を零してしまった。私、彼を助けたことなんてあったっけ……。

「ほら、学校の授業でペアを組むことってあるだろう?」

「はい」

「その時、雫玖の相手が君だったことがあって。覚えてる?」

「……ああ」

 そういえば、そんなことがあったな。


 それは確か、暫くの時間をかけて席が隣同士の人とレポート課題をこなす授業だったはずだ。その時、私の相手が希龍くんだったんだ。

 少しだけ肩身狭そうに縮こまっていて、大丈夫だろうか不安になっていたのを覚えている。よろしくね、とこえをかけて向き合ってレポートを作成していた。

 レポートの内容の題材を何にするか。どういう風にまとめるか。相談しているうちに、彼は人の話をちゃんと受け止めて、かつ、完全に相手の考えを否定しない人なんだと察した。

「希龍くんって、すごい話題になってるよね」

「……そう、かな」

 私の言葉に、彼は少しだけ居心地が悪そうに目線を逸らした。地雷を踏んでしまったな、と思いつつ、その時の私は自分に正直で、小さく笑みをこぼしてしまった。そんな私を見て、彼は少しだけじとりと見てきたのを覚えている。

 綺麗な顔立ちで、あまり人と接しない人。話かけたら睨まれたとか、少し怖いとか、周りに言われていた。だから、正直な話、最初は不安だったんだけど。

「うん。だから、今まで話せていなかったし、どういう人なのかなって思ってたんだけど。希龍くんって優しい人だね」

「え?」

 彼は驚いたような表情をする。驚かれたことに、逆にこっちが疑問を持ったくらいだ。だって、噂通りだったら他の人だったら、私任せにするとか、勝手にやるかすると思うもん。

「希龍くんは私の話を聞いてくれるし、一緒にやってくれるし。とっても嬉しいよ。私、一緒に課題をやるの、希龍くんで良かった。ありがとう」


「その事を、あの子はずっと覚えているよ。きっと、君には救われたと思っているんだろう」

 ああ、そんな事を言ったなあ。噂なんて、所詮その程度って事かと思ったんだっけ。

「……たった、それだけじゃないですか。たった一回の、些細なきっかけです。きっとあの時、彼が子供で精神的に少し弱ってたから、だから大きく感じただけなんですよ。私は、大したことしてない」

 熱い物が込み上げてくるようで、誤魔化すように唇を噛みしめる。

「……例え君からすれば些細なたった一度の出来事でも、あの子にとっては大事なことだったんだ」

「そうでしょうか」

「そうだよ。そうでなきゃ、嬉しそうに、親にわざわざ報告なんてしないさ」

 それは、確かに。中学生という思春期に、わざわざ親に話していたのだ。そう思うと、彼にとっては、些細な出来事では無かったのだろうか。

「たった一度じゃない。あの日の事が、その後のあの子を何度も救ってくれている。きっと一生、糧になる。だから、簡単に、何もしてないって言わないで」

 彼が私の手を握る。今にも涙が零れそうな私を見て、希龍くんの父であるアオさんは優しい笑みを見せる。

 私は出来損ないだ。周囲から期待もされなくなり、ハズレとして扱われた。

 こんな私など、さっさと消えてしまえばいいのに。そう思っていたのだ。だから、こんな私でも役に立てていたなんて。

 彼は、私に救われたと言う。そんな話を聞いて、こうして、私も救われた。

「そうさ。きっかけとは、些細なものだ」

 そうかな、うん、そうかも。私だって、誰かに褒められたから自信を持てたことだってあった。まだ大丈夫かもしれない、って思える事もあった。いつだって、きっかけは些細で。相手は忘れちゃうものなのかもしれないけれど。実際に、私もそうだったし。

 けれど、もし、あの時に彼の荷を少しでも軽くできていたのなら、それはそれでよかった。

 そして、こうして高校でまた再会することが出来て、本当に良かったと思えたのだ。


「……さて、今日は疲れただろう? ゆっくり休んでいきなよ」

「え?」

 彼は立ち上がって、押し入れの中から色々な物を取り出す。寝具、タオル、その他諸々。その動作を眺めていると、彼は何かに気が付いたらしい。懐に手を入れて、私に向けて何かを見せつけてきた。

「そうそう、これのことも聞きたかったんだ」

 ぴん、とアオさんが人差し指と中指の間に挟んでいたのは、何かの紙きれ。

 彼の手を凝視していると、彼は薄く笑みを見せて、紙の内容をよく見えるように、くるりと手首を捻った。

 そして、その神の中身をハッキリと視界に取り入れた瞬間、私は無心で神の手からその紙を取り上げようとした。

 布団を両手を叩きつけて、彼の方へ手を伸ばす。そんな私の表情は、相手からすれば必死の形相すぎて、彼でなければ怯んでいただろう。だが、彼は神様だ。

 私の反応など想像していたと言わんばかりに、その腕を天に向かって伸ばした。着物がずり下がったアオさんの腕は白く、筋肉の筋がハッキリと見えていた。勝てないと、ハッキリと頭が理解する。

 眉間に皺を寄せて、歯を小さく食いしばりながら、私はゆっくりと正座に戻った。

 さっきまでの優しい神様はどこに行ったんだ。

「一緒に落ちてきたから拾ったんだけれど。人間は相変わらず、数字で物事を測るのが好きだね」

 ふむ、と彼はあいた方の手で顎に指を添えて、その紙きれに目をやる。

 捨てといてよ……! いや、海にゴミを落としてごめんなさいと謝るべきか。それが先か。

 でも、恥ずかしい。彼に対して必死に取り返そうとした自身の行動もだけど、その紙きれの数字を見られることが何よりも……!

「そんなにも、人間は必死になるものなのだね」

「……なるに、決まってるじゃないですか」

 この世の中は結果が全てだ。神様には分からないだろうけれど。

 相手を睨み付けるようね視線を向けていることに気付いたのだろう、彼は小さく吹きだして笑みを浮かべた。

「なに、勿論知っているさ。俺の妻も、君とよく似ていた」

「え?」

「そして、雫玖も君とよく似ている」

 む、と口を尖らせた。彼は学年トップクラスの成績を持っている。なのに、私と似ているとは。ちょっとした嫌味にも聞こえてしまう。

「だから、ちょっとしたお願いを思いついたんだ。君、休みの間この家に遊びに来ないかい?」

「は?」

「雫玖と一緒に居てほしんだ」

 名案だ、と両手のひらを合わせながら、アオさんはにこにこと笑みを浮かべた。

 何を言っているのだこの神様は。ひく、と口角が引き攣ったような気分がする。

「準備が出来たら遊びにおいで。俺は、君達みたいな、人間らしい子が好きなんだ」

 善処します。そう叫んでしまいそうになるのを、必死にこらえた私は本当に偉いと思う。

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