第7夜 電子配列の図書館

図書館の中はひっそりしていた。と云うよりも


むしろそれだけの人間がいて、


始めて感じられるような一種の沈黙が支配していた。


書物の頁を翻す音、ペンを紙に走らせる音、それから稀に咳をする音


――それらの音さえこの沈黙に圧迫されて、


空気の波動がまだ天井まで伝わらない内に、


そのまま途中で消えてしまうような心もちがした。


この沈黙の世界は、世界で最も好きな所だ。


受動的な絶望も、後を付いてくる焦燥感も落ち着つくのだ。


頭のおかしなジャンキーも差別主義者もいない。


排他的な喧騒を追い出したこの場所は言わば桃源郷だ。


今日も古いデータのページを捲る。

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