第5夜 アムベナスク地区の宗教弾圧

白亜の神殿の内曲輪。

立ち昇る火焔。飛び交う悲鳴と機械音。

伏し重なった男女の死骸。


その中に手を負った一人の老人。

老人は石垣の上に懸けた電光式の聖母像を仰ぎ、


「ハレルヤ」と一言。


忽ち又一発の銃弾。

目の前の機械兵はプログラム通りに老人を撃ち殺す。


老人はのけざまに仆れたぎり、

二度と起き上る気色は見えない。

白亜が赤に染まる。

白衣の聖母は石垣の上から、

黙黙とその姿を見下してゐる。


おごそかに、悠悠と。


白衣の聖母?

いや、わたしは知つてゐる。

それは白衣の聖母ではない。


明らかに唯の女人である。


怠惰を愛するプラチナの髪の唯の女人。

その女人の下には電子的な金色の横文字さへある。


進化を信じよ、運命を受け入れよ。

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