第10話:変わらぬ家族




 姉イザベラの学年の卒業式。

 妹アモローサは1年生なのに異例の送辞を任され、姉は当然のように答辞の役に選ばれていた。


 本来送辞を任される筈の2年生の成績トップ者は、侯爵家の嫡男だった。

 なぜ学園へ抗議しないのかと不思議に思っていたが、あの姉と少しでも接点を持ちたくないと辞退したそうだ。

 これはアイリス様情報。

 送辞って辞退できるものなんだ。


 そして卒業式の日に知ったのだけど、イザベラの居る学年には、公爵も侯爵も居ないそうだ。

 だからイザベラごときが大きな顔が出来たのかと納得した。



 無事に卒業式が終わり、卒業生は家族と共に家に帰る。

 家族が伯爵家の馬車へと向かう。

 私も特に用事が無いので、家に帰ろうと馬車停めへと向かった。


 別に一緒に帰ろうなどと、微塵も思っていなかった。



「なぜ付いて来るの?」

 少し離れて歩いていた私に気付いたアモローサが、態とらしく大声で言う。

「また私の事を虐めるつもりなのね!」

 はぁ!?


「まぁ!私の可愛いローサちゃんを虐めるなんて、何て酷い姉なのでしょう!」

 はあぁ!?アンタ、母親として最低な人間だな。

 一度でも私がアモローサを虐めてるところを見た事有るの?


「頭が悪く可愛く無いだけでなく、性格も悪いなんて我が家の汚点だな」

 汚点はお前だ。父親のくせに、他人の目がある所で娘を貶めるってどうなの?


「あぁ、出来の悪い妹で恥ずかしいわ」

 恥ずかしいのはお前の頭の中だ。

 上位貴族は、アンタの嘘には騙されていないわよ。

 社交界にデビューしてからの、イザベラの立場が楽しみだわ。



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