私をそんな二つ名で呼ばないで下さい!
宮前葵
イブリア王国のじゃじゃ馬姫
プロローグ 皇帝クローヴェル
皇帝クローヴェルは後世こう評される。
「彼には勇気が無く、知略も、武力も、頑健な肉体も、健康さえも持ち合わせてはいなかった。
その彼が、帝国の皇帝に上り詰める事が出来たのはなぜか。
それはただ一つ。妻を選ぶ目だけは持っていたからである」
アルハイン公国のしがない四男坊だった彼が、イブリア王国の姫君イリューテシアを娶った瞬間から、歴史は彼を皇帝に押し上げるべく動き始めたのだ。あらゆるものを持ち合わせていなかった彼を導き、守り、時には先頭に立って敵を撃ち破った彼の妃イリューテシアの働きが無かったら、クローヴェルはけして皇帝にはなれなかっただろうし、彼が後世に名君として讃えられる事も無かったであろう。
これは、皇帝クローヴェルの妃として彼の元で辣腕を振るい、敵からも味方からも「恐怖」の二つ名で畏れられた女傑、イリューテシアの知られざる物語である。
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