第4話
蝉がうるさい。暑い。汗が出る。めんどくさい。夏は好きじゃない。
冬も嫌いだ。寒い。その二つがこれからやってくると思うと力が出ない。
そんなことを思いながら通学路をゆらゆらと登校する。そこに僕のオアシスが現れる。まるで木の密に吸い寄せられる虫のようにそこに誘われていく。
「おはよ、ルイ」
「おお、要。おはよ」
今日もかっこいいな。よかった、こんな暑い日でも溶けたりしてない。僕は溶け始めてるかもだけど。
それにしても今日は学校が遠いな、それになんか体が重い。頭がくらくらしてきた……あれ、やばい?
「要。大丈夫か?」
「え? あ、うん」
「おいちょっと!」
体が、思うように動かない。あれ? 目の前が……
要が俺にもたれかかって倒れた。
「なぁ! おい! 要!」
これはやばい。汗がすごい出てる! えっと、とりあえず救急車!
周りの大人を集め、救急車を待つ。
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熱中症だった。まぁ無事でよかった。今思えば声をかけてきた時から顔色が悪かったかもしれない。学校には連絡して、俺も休むことにした。要の両親に連絡もしたし、もう少しで来るはずだ。
しかし、さっきとは打って変わって静かに眠っている要をぼうっと眺めている。先生が言うには点滴を打っているし、今日一日安静にしていれば大丈夫なんだそうだ。
「だいじょーぶか?」
寝ている要に声をかける。当然眠っている要に反応はない。まぁ言わないより気持ちが楽になる。
「ここですか?」
声が聞こえる、要のお母さんがやってきた。
「あら、ルイ君。まだいてくれたの?」
「はい、まぁ目の前で倒れちゃったんで」
「あら一緒にいた時なの?」
「まぁ、一緒に登校してたんで」
「ふ~ん。そうなんだ」
まぁ家も近いし。そんな不思議じゃないだろ
「そっか、ルイ君もいるんだ。じゃあ安心ね」
そういって立ち上がる。
「え? どっか行くんですか?」
「うん、おばちゃんは仕事に戻る」
「もうちょっといても……」
「いや、私がいるとこの子遠慮しちゃうから」
「あ~そうなんですか。わかりました」
「そんじゃ、またね」
そういって帰っていく。
また一人の時間が流れる
目が覚める。あれ、僕何してたんだっけ。えっと登校してたらルイを見つけて、それで……
「あれ?ルイ?」
「ん? ああ! 起きた! 大丈夫か? 気持ち悪いとかないか?」
「え? うん大丈夫だけど」
ルイが焦った顔で畳みかけてくる。ああ、ここ病院か。そっか、倒れたんだっけ。
「ルイ、ここ病院、静かに」
「え? あ、ああ、ごめん」
手で口を押えるルイ。
「それで、何でルイが?」
「いや、心配だし」
「ごめん、迷惑かけたね」
「いや、大丈夫、俺も学校休めたし」
そうやって笑うルイ。そんな姿が可愛くて。
「それで、もう帰っていいってさ。起きたら帰っていいって」
「そっか。じゃあ帰るね」
「うん、帰るか」
そういって二人で帰る。時刻は午後4時半。まだまだ暑い。だけど、今だけは……こんな夏ならちょっと好きかな。
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