甘毒
里芋の悲劇
第1話
こんな気持ちになったのは初めてだった。
「おはよう」と声をかけられる度に心が跳ね上がる。
目線を合わせるだけで熱くなる。
触れ合うだけで溶けてしまう。
見るだけで体が痺れる。
毎日、顔を合わせるのに、いつまでもぎこちなくて。
あゝ、気持ち悪いな……私って。
僕のこんな気持ちなんて伝わらなくていい。こんなに気持ち悪くて男でも女でもないヤツなんて気にしてもないだろうし。
「お、
「えっ、あっ、うん。ありがとう///」
目が合わせられない、今日もかっこい……
「教室まで一緒に行く?」
「え、うん」
隣に並んで歩いていく……
この人の名前は「相馬ルイ」家が隣の幼馴染(男)というやつだ。好きだ。
僕がこの気持ちに気づいたのは、小学3年の時だった。それまではただ「女の子になりたい」「可愛くなりたい」そう思っていた。だけど。段々と。少しづつ。離れたくなくなっていった。でも、それでも僕は男で。この気持ちは間違ってて、僕はみんなが言う通りおかしなやつなんだ。男のなのに男が好きで、でも可愛くなりたくて。でも、みんなにバレたくないからそれを隠して。髪を切って。ズボンをはいて。別にそれが嫌いなわけじゃない、むしろかっこいいのは好きで。そして、一番かっこいいのはルイで……
「あ、今日って提出日とかじゃないよね」
「え?数学の課題って今日じゃなかったっけ?」
「え?……まじかよ。それホントに言ってる?冗談じゃないよね?」
「そうだったはずだよ、ほらここに」
スケジュール帳を見せる
「マジじゃん」
膝から崩れ落ちる。そして泣きそうな目でこっちを見てくる
「僕は何にもできないよ、しかも朝イチで提出なんだよね」
「え?ほんとにおわってるじゃん。もう無理じゃん。え?……」
「もうどうしようもないじゃん。ほら、教室いこ」
「うん」と力なく返事をされる。
すると教室に着く。ドアを開け、黒板を見る。そこには「数学吉田休みのため課題提出1週間延期」と書かれていた。
「おお、おお! 助かったぁ~!!」
と肩を組まれる。近すぎ!
「よ、よかったね///」
と、扉が開く。
「どしたん?」
「おお!柊! 見ろよこれ!」
「んあ?……ああ! まじかよ! 今の今まで忘れてた!」
一瞬、鋭い悪寒が走る
「私、昨日忘れんなって連絡まで入れたよね?」
と柊の後ろから、赤いネイルのついた手が伸びてくる
「あはは。それがねぇ、その……ねぇ」
ゆっくりと柊の頭が振り返る
「わざわざ私がさ、お前がまたガミガミ言われないように言ってあげたのに……ねぇ?」
鬼、いや悪魔のような笑顔で柊へ圧をかけるのがレナちゃん。僕の一番の友達だ。
「それと、ルイもやってなかったんだぁ~」
「あ、うん」
「持っていくときにいっつもガミガミ言われんの私なんですけど?」
レイは土下座をしている
「でも来週になったんだし、いいんじゃ……」
「あのね要、こいつらに何回私が行ってると思ってるの?マジ吉田の小言うっさいんだから」
「ああ、それはお気の毒に……」
柊の余計な一言が炸裂し、レナちゃんのクリップラー・クロスフェイスが極まる
「いだい!いだい!」
「ちょ!レナちゃんやりすぎ!」
忙しない1日が始まる。
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