プロローグ コルネリア、断罪される
ガタガタと
明るく
ふと、ガラスの向こうの自分と目が合う。見慣れたはずの顔は、思わず笑ってしまうほどやつれたものだった。
固い背もたれに深く座り直し目を閉じる。もう忘れようと思っていたのに、人生が転落し始めたあの日の事が思い出された。
その告発は、月に一度行われる教皇の説法が終わった直後になされた。
「この場を
典礼用の
「こいつが聖女候補などと笑わせる。
今、この大聖堂には首都に住まう
この国における聖女とは、神の
その
さらに、今回の聖女は何世代かに一度の特別な役割を持っていた。久々に聖女を王家に
そしてジルが
なのに、その婚約者からこうして一方的に婚約破棄をされている。それだけでも驚くというのに、まさかのジル殺しの犯人だという告発。
「そうだろう? ヒナコ」
おずおずと進み出てきた美しい少女に、聖堂内にはほぅっと
あれは
「
「
話を振られた
「ジーク、やっぱり
「何を言う、あの女はジルを……前世のお前を裏切って死に追いやったのだぞ!
高らかに
反論しようとするが
「でも、でもっ、ジルだった時の私が
ここでわっと顔を
「ぜんぶ私が悪いんです! 国外追放なんてひどすぎます! お願いです、どうかコルネリアちゃんを『許してあげて』下さい!」
そこまであっけに取られて見ていたコルネリアは口もきけなかった。許されるも何も心当たりがなさすぎる。そもそも、彼女はいったい誰なのだろう? ジルの生まれ変わりにしては
だが、大げさに胸に手をあてた王子はここぞとばかりにヒナコの後押しをした。
「おお、なんと情け深い。皆に問う! こんなにも清らかで美しい心を持ったヒナコと、前世の彼女を死に追い込んだ
誰かが小さく手を
コルネリアはそこでようやく察した。これは最初から仕組まれたシナリオだったのだ。教会はパッとしない『残り物』を、さっさと処分し、
どうしてこんなことに。脳が
「お、お
そうだ、「何としてもコルネリアを聖女に」と息巻いていた義父ならきっと助けてくれるはずだ。聖女の出身家となれば成り上がりのエーベルヴァイン家の存在感も増す。その野望を叶える
ところが、一度小さくひっと息を
「知らん! ワシは知らんぞ!! 全部コルネリアが一人でやったことだ!! ウチとは何も関係が無いっ!」
しん……と、聖堂内が静まる。卿はでっぷりとした
「
「ひっ……」
手を振り上げられ反射的に縮こまる。勢いよく手を振り下ろした養父はコルネリアのケープを
「貧しい出のお前を誰が引き取ってやったと思っているんだ! 恩を
「ち、違う……誤解です……おねがいはなしを」
「まだ言うか!」
すがる養女の
「エーベルヴァイン卿、神聖な場での暴力
「へ、へへ、すみません。どうしても
ヘコヘコと腰低く
(この場に居る全員が、わたしの有罪を望んでいる……)
そう、この聖堂でコルネリアは独りだった。言葉を失う彼女に向けて、教皇の無感情な声が
「さてコルネリア、申し立てることはありますか?」
あるはずもなかった。
じっと
「心苦しくはあったが、公明正大を信条とする教会においてそなたの悪行を見過ごすわけにはいかなかった。だが
「コルネリアちゃん、私、信じてるですよ! 罪を
きゃぴきゃぴと
「では、コルネリアから聖女候補の資格を
上段
「うむ、そのように
「……」
王の言葉を、コルネリアは無言で聞いていた。
(もう、好きにすればいい)
聖女候補らしからぬ悪態が心のどこかで
最後に
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