国王

鳥海 摩耶

国王


 あるところに、とある国があった。


 その国には、いろいろな人が住んでいた。


 ある日、その国の王が死んだ。


 人々は、彼について語りあった。


 とある国民A

「彼は、偉大な王でした。我々の代表として、このややこしい国を見事に治めてくれました。これからこの国がどうなってしまうのか、不安でたまりません」


 とある国民B

「彼が亡くなってどう思うか? うーん、これは言って良いのかな? 良い? わかった。なら話そう。正直に言って、私は彼が亡くなってほっとしている。なぜなら、我々にとって、彼の政治は非常につらいものだったんだ。我々の意見は聞かれず、常に多数決で決められてしまう。生きづらい世の中だったんだ。これからこの国がどうなるのか、楽しみだね」


 とある国民C

「国王が亡くなった? ふーん、そうなんだ。私には関係のないことだね。私は、この国がどうとか、国王がどうとか興味ないんだ。悪いね」


 とある国民D

「国王は、信心深さが足りなかったのです。我々の教えを聞き、祈れば、死ぬことはなかったでしょう。我々の祈りは必ず成就するのですから」


 とある国民E

「やることは一つである。この機会に、政権を奪取するのだ。もう国王が国を治める時代は終わった。これからは我々の時代である」


 とある国民F

「これは面白いことを聞いた。要は、今この国は不安定なんだ。これは儲けるチャンスだぞ。さあ仕事の時間だ」


 とある国民G

「……私の出番のようですね。あの方は嫌いでしたが、王としては私の理想の方でした。父の遺志を継ぐことにします」







 その後、戦争が起こった。


 国民Aは祈り、国民Bは逃げた。


 国民Cは恨み、国民Dは追放された。


 国民Eは死に、国民Fは捕まった。


 国民Gは、王になった。

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国王 鳥海 摩耶 @tyoukaimaya

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