太陽戦争

食連星

第1話

「分かった.

分かった.」

「本当だな?」

「あぁ.」

尻尾切りに遭うんだろ.

何で,こんなに,こいつ嬉しそうなの?


「酸素濃度を故意に下げる.」

「ちょっおいっ.」

「何?」

焦るって事は,一応こいつも悪い事やるって自覚なのか.

…か?

上層部の事は分からないけど.


我ら月裏に辿り着き77年余り.


経緯を直接知るのは12%程.

そうそう人口は多くないけどね.

残り88%は直接知らずに月で暮らしてる.

野菜や果物は人工的に作られるから,

まぁそりゃヘルシーな生活.

肉って,それはそれはあれこれとコストのかかる食べ物で,

婆ちゃんから貰った缶詰で知った.

美味しいんだよー.

甘辛くて,あぁこれは味付けか.

ぶりんとしてるの.

鶏肉だってさ.

これが,空を飛んでるらしい.

あぁ,これじゃないって言ってたっけ.

鳥ってジャンルも,画面の中でしか見た事が無いよ.

似たようなものはある.

代替食.

だけど,やっぱり本物は違う.

何だって,本物は強い.

インパクトも印象も.


「なぁ.」

「…あぁ,何?」

「一攫千金かな.」

「な訳ないって.

今,大使来てんでしょ?」

「そうそう,交渉に.」

「こっちも今更税金なんて払いたくないって,

突っぱねるつもりでしょ.」

「えっ!?

命を助けて恩を売るって戦法なんじゃないの?」

「あぁ平和ってる,それ.」

「何でっ!?」

逆に何で,そんな回りくどい事するのだ.

脅しに掛かると思うんだよなぁ.

「お前ら太陽光に税金かけやがって,

酸素絶たれんのとおんなじぞって.」

「何それ物騒.」

「今,物騒な事されてるじゃん.」

だから,ずっと月の裏で生活してる.

一緒に同じ速度で回り

使用しない生活.

重力もかかんないから,

背は無駄に高くて,骨は脆く,色白.

婆ちゃんの話では,

深海に到達した種もいるって話だった.

そいつらと結託して,

仕掛ける方が…

いいような気がする.

一市民の声は無力か.


「覚悟はいい?」

「何の?」

「話聞いてた?」

「聞いてたけど分かんね.」

「あっそう.」

「諦めんな.」

「お前が言うな.

めでたい話では無いって事.」

「というと?」

「指示どうなってんの?

時間とか,タイミングとか聞いて無いの?

ここで,のん気にくっちゃべってて大丈夫なの?」

こいつに持ち掛けた時点で駄目だ.

「あぁ,なんか言ってたけど,

忘れてる.」

「…そうか.」

もう知らね.

こいつ守る義理も無いし.

たまたま現場が一緒だった人だ.

そして,話を聞く限り,こっちも巻き添えをくいそう.

知らぬ存ぜぬで行こう.

「今日,このまま帰るわー.」

「えっ!?

話聞いただろっ!?」

「んー何も聞いてねー.」

「ここは,どうすんのっ!?」

「普通,持ち場1人でしょ.

後,頼む.今日の日当受け取らないや.

良ければやるよ.」

防犯カメラ旨く映んないように消えよう.

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