第16話  困惑する伯爵令嬢

「起きなさい!カミーユ!!こらっ!」


 あたくしは、肩を揺らされて起こされましたの。

 エドワゥが帰ってきましたのね?


 あたくしは、思い切り身体を伸ばして欠伸をしました。


「エドワゥ……あたくし、待ちくたびれましたわ」


「ジェーン!!水を持ってこい!!このボケた娘にかけてやる!!」


 エドワゥが怒ってますわ。

 眠りこけてたのがいけなかったのかしら?

 ……??ジェーンですって!?

 あたくしは恐る恐る、目を開けましたの。


「お父様?」


 何という事でしょう!!目の前には、顔が真っ赤になったお父様の顔がドアップで迫って来ましたわ。


「どうして、ここにお父様にいるんですの?」


「のんびり説明をしている時間はない!!エドワゥは何処だ?」


「あたくしを国外に出す手続きに行ってますけど……」


「では、ミレーユは何処だ?」


 あたくしは(「えっ?」)ッと思いましたわ。


「お父様、ミレーユがどうかしましたか?」


「ミレーユが昨日の昼過ぎに、神殿に行くと言ってまだ帰宅をしておらん」


「まぁ……」


 あのミレーユが……?

 お母様に似て、ロイルの神を敬謙に信じているミレーユが、外泊ですって?

 アランとの結婚が決まっている、ミレーユがお泊りです……って!?


「カミーユ!!エドワゥとこの家に来たのだな?馬車はどちらに走り去った?」


「お父様、何を焦ってらっしゃるのです?エドワゥは直ぐに返ってきますわ。

 ミレーユは友人の館にでも寄っているだけかもしれませんわ」


「それはな~い!!これを見よ!」


 お父様は手紙をあたくしに突き付けてきましたわ。


「エドワゥが私に宛てた置手紙だ!!外国で絵師としてやっていく準備が出来た。つきましては、二の姫のミレーユ様を頂いて行きます!!とある。」


「はあ!?」


 あたくしはその手紙を取り上げて、すみずみまで、目を通しましたわ。

 そして最後に、こうありましたわ。

 あたくしがここにいる。早く迎えに行ってやってくれ……と……


 そういえば……あたくしがここへ来る前、この家には人のいた気配がありましたわね……


「カミーユ……?エドワゥは何処に向かうつもりだったのだ……?」


 お父様の声は、あたくしには入って来ませんでしたわ。

 そう……ミレーユとの駆け落ちのための時間稼ぎだったという訳ですわね。




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