センタランド戦記・SEI(せい)

ばちあて

第1話 傭兵達

センタランド大陸……

北は広大な草原に砂漠、南は大河に堅牢な山脈

歴代皇帝が治めるこの大陸は帝都センタリオを中心に長く栄えた。


しかし長きに渡る歴代皇帝の治世は次第に政治の腐敗をまねき、帝都から離れた辺境で大規模な反乱が起きたのを皮切りに、中央政権は求心力を失い大陸は10の地域に分かれ戦乱の世をむかえる。


「かかれ!!」

「皆殺しだ!!」


ナンケー地方北西部を治めるリョーブと北東部を治めるサナーガは、長年刃を交え国境での戦いは激化し今日も果てる事の無い戦いが繰り広げられていた。


「ん?お前!?この間のいくさで仲間だったろう!?」

「そう言うお前こそ何やってんだよ!?」


戦乱の世で戦いを生業なりわいに生きる傭兵、彼らは戦場から戦場 国から国へと渡り歩き戦人いくさびとと呼ばれ昨日の友は今日の敵 明日の友になる事も珍しくは無かった。


華烈団かれつだん!!かかれ!!」


剣を構え仲間達に号令をかけたのは、踊り子風の衣装をまとう美女で傭兵団を率いる華桃かとう 頼れるお姉さんと言う感じだ。


「て…敵襲だ!!」

「迎撃しろ!!」


予想もしない攻撃に敵兵は狼狽うろたえ 大慌てでむかえ撃った。


「うりゃうりゃ〜!!アタイの道をはばむな〜!!」


巨大な大斧おおおのを片手で軽々と振り回し敵兵をぎ倒すのは、金髪色黒の美女(大人しくしてれば)で姉御肌あねごはだ紀礼女きれいじょ 本人は無自覚だがすさまじい怪力の持ち主……


「ば…化け物だ!!」

「誰が化け物よ!?こんなか弱い乙女をつかまえて!!」

「うわ〜っ!逃げろ!!」


「ガハハハハ!!今度は俺様が相手だ!!!!」

「ひ〜っ!!か…か…怪物!?」

「怪物だと!!??こんな色男をつかまえて!!!!」


茂みから身長2メートル以上はある大男の超風ちょうふうが現れ、巨大な大槌おおづちを振り回したので兵達は更に混乱した。彼は声が大きく頭の毛がうす……いや…無い…


「ぐはっ!!」

「静に戦え…デカブツ…ハゲ……」


寡黙かもくに背後から敵ののどき斬るのは、全身黒ずくめの衣装で猫耳フードをかぶった元暗殺者の燕姫えんき……


「落ち着け!!みなの者…ぐふっ!!」

「た…隊長がられた!?…ごふっ!!」

「フフフ、今日も絶好調だね〜俺ちゃん」


目が見えているのか疑問になるほど長い前髪をしている男は呉鋭ごえい 彼の放つ矢は敵兵のひたいを正確にち抜いた。


「て…撤退だ!!退退け!!」


「ガハハハハ!!俺達の勝利だぜ!!!!」

「黙れ…声…大きすぎ……」

燕姫えんきちゃん、今日もえてない?俺ちゃん」

「知るか……」


世は戦乱の真っ只中ただなか 傭兵として戦いを生業なりわいとして生きる彼らも戦場から戦場 国から国へと渡り歩いていた。


「あれ?華桃姐かとうねえさん?どうかしました?」


戦いが終わり団長の華桃かとうは周囲をキョロキョロと見回し狼狽うろたえた。


「た…た…大変!!紀礼女きれいじょ!!せいがいないのよ!?どうしよう!!??」

「え?せいが!!??」


この物語は超人的な強さを持つ者達に囲まれながら、凡庸だが健気けなげに生きる傭兵少女のちょっと頼りない冒険譚……

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