過去に戻った私

@Cure01230

第1話

一瞬何が起きたか分からなかった。

腹部に熱いものが突き抜ける様な感覚だった。

口からもあたたかい液がこぼれ落ちる。

そしてすぐに激痛が走った。

どうすることも出来ない。

目に映るのは霞んで見える黒い影


私刺されたんだ

『ゴブッ』

地面が血に染る

黒い影に視点を集中させると、黒いフードを被った男だった。意識が朦朧とする中、その男の足を掴んだ。すると男はしゃがみ

『……また』


それ以降の言葉は聞き取れなかった。

鋭く光るナイフが近づくことだけが分かった

――――――……

―――次は目だ


ここで私は息を途絶えた

――――――

―――――――――

―――ピピピッ

……音が聞こえる

もう私には音も聞こえないはず

―――ピピピッ

『………さい』

誰かの声も微かに聞こえる

あの世に来てしまったのだろうか。

『起きなさい』

その声で私はまぶたをゆっくりと開けた

あるはずのない目に見覚えのある姿が映っている。もう目は見えないのに。

『ぼうっとしてないで早く支度しちゃいなさい』

聞き覚えがある声……お母さんだ

助かったの? 私

腹部をそっと見てみると、傷がひとつもなかった。きっと目もなんともないのだろう。

とりあえず顔を洗って落ち着こうとした。

………………

――私は鏡を見てすぐさま異変に気づいた。

『え…』

目に映るのは少し幼い自分だった。背も小さい。

頬をつねっても、じんとした痛みがするだけだった。夢じゃない。

部屋に戻ると、机に置いてあった名札に手をつけた。見るとそこには五年生と書いてあった。間違いなく自分の名札だ。

今の私は小学五年生だと少しずつ理解した。

戻ったんだ、この時に………

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